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転生を希望します!  作者: 黛ちまた
皇都編
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039.媚薬

かなり嫌な展開です…。

はやく次の話書き終えたい…。


ミチルが抵抗する部分を追記しました。


リュドミラの書いた小説は、刺激の少ない貴族社会に、受けた。

恋愛物語としても、もう一つの意味でも。

みんながうっすら知ってるけれど、口にはしないエルギン侯爵家の不正が赤裸々に書かれているのだ。

ただ、これをエルギン侯爵が、自分の事ではないかと文句をつける事は出来ない。

きつめの美少女も、淡い色合いのドレスを好む令嬢も、ゴロゴロ転がっているのだ。

それなのに文句を付ければ、作中の不正が己の所業であると認める事になる。

ツォードはツォードで、いちゃもんをつければ、やはり不能なのかと認める事になってしまう。

表向き、ツォードは廃嫡になり領地に帰っているだけなのだから。

エルギン侯爵家も、オドレイ侯爵家も、自分の家がモデルになっていると分かっても、一切苦情を申し立てる事が出来ず、歯がゆい思いをさせられている事だろう。


ルシアンから正式に命令を受け、小説を書き始めたリュドミラは、片手間に私の侍女の仕事をして、執筆活動に勤しんでいる。

さすがに目の下に大きなクマが出来た時、セラに再びデコピンをくらい、きちんとした生活が出来ないなら執筆そのものを禁止するとキツく言われた為、そこは守っているようなので、安心した。

結局クロエから受け取ったのが何だったのかは聞き出せず仕舞いだ…怪しい…。

レッ●ブルのような、アイキャンフライなものじゃない事を祈るのみだ。


侍女の人数が純減している訳だけれど、特に困っていない。エマがいるし、リュドミラの代わりにクロエが髪を結ってくれるし。これがまた器用で、そして奇天烈すぎてセラに怒られてた。

さすがに重力に逆らう奴はあかんと思う。さながらミリオンバンブーみたいになった己の頭を見た時は絶句した。どうしてこれにしようと思った?!

そしてセラからデコピンを連続2発食らって、クロエは轟沈した。成仏してくれたまえ。


リュドミラが今書いてる話は、暴れん坊皇女なんだよね。

どんな風に悪者をぶった切っていくんだろうー。ちょっと楽しみ。

そして誰か推理小説書いてくれ。




*****




皇室主催の夜会に、出席中。

姫への挨拶も終わって、ダンスをルシアンと踊って、殿下からもちょっかい出されず、ルシアンはお酒、私はフレッシュジュースを飲んで談笑していた。


いやー、平和!

かつてない程に平和ですよ!!


殿下の周りには引き続き令嬢達が群がっててルシアンの元には来ないし、リリー嬢もいないし!

嫌がらせもない!

あぁ!幸せ!!


「ルシアン殿」


源之丞様だった。盛装してる。

そう言えば、源之丞様はいつもきちんとした洋装なんだけど、燕国には着物とかないのかなー。

源之丞様は切れ長の一重で、怖そうな美形だ。でも、ルシアンと話してる時の笑顔は、穏やかな感じ。


「源之丞殿、貴兄も参加されていたのですね」


「えぇ、ちょっとお話したい事があるのですが、よろしいですか?」


ルシアンは私の方を向くと、頰をそっと撫でた。


「ちょっと離れます。良い子でいて下さいね」


「いってらっしゃいませ」


二人は人気の少ないバルコニーの方に向かった。


私は手に持っているフレッシュジュースをひと口飲んだ。


「こんなに平和な夜会は、皇都に来てから初めてです。ルシアンとも踊れましたし」


うふふ、ダンス、楽しかったー。

下手だけど好きなんだよね。


「何言ってるのよ、これが普通なの。これまでが嫌がらせされすぎなの」


呆れた様子のセラ。


えぇー、いい気分を台無しにする事言わないでよー。

それにルシアンという超絶イケメンの隣にいたら嫌がらせも受けるというものですよ…。


そこは微妙に諦めてます。


「今日も殿下は令嬢に囲まれてますわね」


本当、良い仕事してますわー、偽ルシアン殿下ー、グッジョブですわー。


「今日はリリー様もいないし、平和です」


「来れる訳ないでしょ」


即答するセラ。


なして?


「ユーリーのモデルじゃないかと噂されてるもの」


あぁ!

そう言えばそんなものが!


「来たら刺激に飢えた貴族の暇つぶしと、蹴落としに合うだけよ、来れる筈ないわ」


「セラ…もしかして…私を守る為に…?」


「気づくのが遅いわよっ」


さすが私の執事!凄い!

多少牽制になるのかなと思ったけど、こういう効果もあるんだね!

いやいや、そうかそうか、考えてみればそうだよねぇ。


えぇー、それにしてもセラー!

ミチル感動です!


「ありがとう、セラッ!さすが私のセラですわっ」


「次期オドレイ侯爵には悪い事したけど、あれぐらい捌けないようでは侯爵位なんか務まらないから、お勉強よね」


セラの視線の先を見ると、人集りの中にビジュレイ様が見えた。

やっと落ち着いた、兄不能疑惑が小説の所為で再燃しちゃったのかな。申し訳ない。


…とは言え、ですよ。

平和…ステキ…。素晴らしいよ、本当に。


「あらぁ、失礼?」


顔と首に冷たいものがかかった。


声のした方を見ると、華美なドレスをまとった令嬢が空になったグラスを手に持って私を、睥睨していた。


顔、首に勢いよくかかったお酒が流れて、ドレスに吸収されていく。

ルシアンに作ってもらったドレスは、またしてもワインで、しかも今回はかなり豪快に汚されている。


さよなら、平和?!

短い平和でした!!


それなのに、何故この令嬢は、口は私をあざ笑うような形をしているのに、目に涙をいっぱいためているんだろう?よく見ると、グラスを持つ手も震えている。


…何で?


そしていつものように現れたオリヴィエ様と、イーギスに連れられて令嬢は広間から消えた。


「まったくもう!」


大変お怒りなセラとアメリアに守られるようにして広間を出る。


「さっきオリヴィエから、皇族専用の休憩室を使って良いと言われたから、そこに行きましょう。そこなら誰も入って来れないわ」


皇族専用休憩室に入ると、カウチに座らされた。


ハンカチで顔や首元を拭いていく。


「さすがにこれじゃ帰れないわ。アメリア、屋敷に行って替えのドレスを見繕って来てちょうだい」


「わかりました!」


部屋からアメリアが飛び出す。


セラは眉間に皺を寄せ、たっぷりためてから、それはそれは深いため息を吐いた。


「なんなの?!何でこんなにミチルちゃんばかりがこんな目に遭う訳?頭に来る」


それ、どっちかって言うと、私が言うセリフー?


「膿は、徹底的に出した方が良さそうよね?!」


大変ご立腹!

まぁ、是非もなし。


「ねぇ、セラ」


「なに?」


「さっき私にワインをかけた令嬢、様子がおかしかったと思いませんでした?」


「え?」


「目が怯えていたのです。グラスを持つ手も震えていて。私を貶めたくてやったようには見えなかったのです」


「それは、変ね」


私は頷いた。


ドアをノックする音がして、セラが立ち上がってドアを開けた。


なにやら言い争っているような?

首を振ったり、頷いたりしている。


「ミチルちゃん、ちょっと出て来るから、絶対にここから出ちゃ駄目よ?」


…何かのっぴきならない事が起きたっぽい。


「分かりました」


セラも出て行き、私だけになった。


ホッと息を吐く。

皇族専用休憩室だから、誰も入って来ないだろう。


ルシアン、源之丞様との話が終わって戻ったら私がいなくて、大丈夫だったかな。探してたりしないかな。


あの令嬢も、何であんな事したんだろ。

やりたくないのにやってる、そんな感じだった。

私に直接危害を加えたいけど、出来なくなったから別の人間にやらせてる?

そこまでして?!


ドアが開いた。

視線を向けた先には、信じられない人がいた。


「…リリー様…?」


いつもと違って、濃い紫色のドレスをまとったリリー様は、私を見ると微笑んだ。


「…探しましたわ」


探す?私を?リリー様が?何故?!


皇族専用休憩室だと言うのに、いや、私も本来ここにいちゃいけないんだけど、リリー様は気にせず部屋に入って来ると、私の隣に座ると、私のドレスの状態を見て言った。


「まぁ…また嫌がらせを受けたのね?」


「え、えぇ…」


なんか良い人っぽくなってて怖い?!


「怖かったでしょう?」


イエッ、むしろ今の貴女様の方が怖いデス?!


「あぁ、そうだわ、自分が飲む為に持って来たのだけど、良かったらどうぞ」


そう言ってスパークリングワインらしきものが入ったグラスを差し出される。


キレイなシャンパンゴールドです、美味しそうですが!

あからさまに怪しいです、ありがとうございます!


「私、お酒は飲めないのです、申し訳ありません。お気持ちだけ頂戴しますわ」


「あら、そうなの」


リリー様は気にせずグラスを口に付けた。


…おや?もしかして、本当に何もなかった?

ただのスパークリングワインだった?


「じゃあ、これならいかが?」


紙に包まれたファッジを差し出す。


ファッジと言えばフィオニアですよ!それを思い出した私は、首を横に振った。


「申し訳ありませ…」


いきなり顎を掴まれ、口の中にファッジを入れられた。


「!!」


強引に口を閉じさせられ、上にのられ、体重をかけられる。


何とかその手をどかそうとするものの、信じられない程の力がかかって、びくともしない。


普通の令嬢が、こんな怪力出せるもの?!


「んーーーーっ!!!」


それでも必死に抵抗し、なんとか腕を振りほどき、リリーの身体を突き飛ばした。


口の中に残っていたものを床に吐き出したものの、いくらか飲み込んでしまった。

ファッジだと思ったものは、それよりももっと柔らかく、口の中で溶けた。


私に突き飛ばされて床に座り込んだリリーは、立ち上がって、満足そうに私を見る。

その目は、怪しく光っていて、恐怖でぞくりとした。

正気じゃない。


「ふふ…」


俯いたかと思うと、肩を震わせて笑う。


「フフフ…今、貴女が口にしたのは、即効性のあるとても強い媚薬よ…ほんの僅か口にしただけでも、効果が出るの」


「?!」


リリーは私を睥睨して言った。


「貴女、気付いてないでしょうけど、貴女に秋波を送ってる紳士は結構いるのよ…そんな報われない紳士をここに連れて来て差し上げるわ…」


「リリー様は…何をおっしゃってるのか分かってるのですか?」


胃の辺りが熱い。効き始めたのだろうか?


ルシアンが、媚薬によるけど、身体が熱くなるって言ってた気がする。


「別に構わないでしょう?貴女、もう乙女ではないのだから…

アァ、ルシアン様の腕に抱かれた事があるだなんて…本当に許せないわ…」


そう言うと、リリーは手に持っていた扇子を振り上げた。


叩かれる!


咄嗟に手で庇った為、顔は叩かれなかったものの、庇った左手に痛みが走る。


「辺境の伯爵令嬢如きが!私からルシアン様を奪うなんて…!!」


2、3度叩かれたが、再び振り下ろされた扇子を掴んで奪い取った。


「…こんな事をして、タダで済むと思ってらっしゃるのですか…?」


リリーは歪んだ笑みを浮かべた。


「問題ないわ。貴女は直ぐに破滅するのだから」


左手と左手首は痛みでジンジンと熱を持っていた。

胃の辺りから全身に広がる熱で、額に汗が浮かんでいるのが分かる。


「身の程を知らずに、ルシアン様の妻になどなるからいけないのよ」


フン、と鼻で笑うと、リリーは部屋を出て行った。


私は痛む左手を使わないようにして、カウチから降りた。


隠れる場所が欲しかった。


ちょうど良い場所はない。


身体はどんどん熱を帯びて、呼吸が浅くなってきた。

顔が熱い。涙で視界がにじむ。


身体の奥が、熱い。

どうしようもなく熱い。

媚薬は初めてだけれど、自分がそういった気持ちになってる事だけは分かる。


こんな状態で部屋の外に出て、誰かに会ったら?


とても強い媚薬だと言った。


ルシアンが言ってた。

とても強い奴だと、本人の意思を無視して、嫌いな相手とでもしたくなるような媚薬があると。


いやだ…!


震える身体で、カーテンの中に隠れた。

これしか、今の私には思い付かない。


媚薬って、時間が経てば切れるの?

もし切れるとして、どのぐらい経てば切れるの?


ルシアン…セラ…イーギス…アメリア…!!

誰か助けて…!


ドアの開いた音と、聞き覚えのない声が同時に耳に入った。


「アルト伯爵夫人…?」


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