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悪夢と真実の在り処

これにて終了となります。

真実は分かりましたでしょうか。


 家には入れない、玄関も窓も開いておらず、母親の車も無かった。

 太陽は沈み町は沈黙している、町の様子から深夜である事が窺える、だというのに家に誰もいない様だ。


 外灯の灯りが頼り無く点滅している。タクトは少しでも明るい方向へ行きたかった。

 外灯の灯りが明るく照らす方へタクトは歩いていく、タクトが歩くと、ふいにタクトの背後が暗くなる、来た道の外灯が消え、帰り道が暗く閉ざされた。


 後ろへ戻ったら闇の中に飲まれてしまいそうで、タクトは怯えながらも前へ進む。

 そしてその足はいつしか早足になり、気が付くと走っていた。

 闇の中から何かが追い掛けてくる様な気がして不安で堪らなかった。

 それはもちろんタクトの不安感がそうさせたものであり、実際に何かが居た訳では無い。

 それでも時折聞こえる物音はタクトを怯えさせるに十分な想像力を駆り立てる。



 誘導されている、そう気付いた時にはタクトは既にその場所に辿り着いてしまっていた。

 そう、そこはタクトが夢の中だと認識し、何度もあの女と喋った場所、通学路の途中にある小さな交差点、そして…タクトは気付いてしまった、夢の在り処に。


 黒いブレーキ跡、道の端に転がった自転車の部品、アスファルトが吸い込んだ赤黒い…。


 タクトは探していた、たぶんあるはずだ、今必要なのはソレだと、理解していた。


 そしてソレは見つかる、道端の草むらの中にあった、自分の物なのだからすぐに分かった、ソレが自分の物だと、小銭が入った自分の財布だと。




「ねぇ、ねぇねぇ、死体…いらないの?」


 突然聞こえてきた声に驚き、タクトの肩がビクッと跳ねる。


 声のする方へ恐る恐る振り返ると、そこに居たのは……タクトの体だった。

 表情は無く、無機質な自分の死体がそこに立っていた。


 

 タクトはもうそれを理解していた。理解してしまっていた。

 目に涙をいっぱいに溜め、自分に向かってこう答える。


「…欲しいよ。小銭で…良かったよね…」


 財布から小銭を出すとタクトの死体はその場に崩れ落ちる。

 …分かっていた。体を支える為の足は、足の骨はもう砕けているのだから。


「返して…こんなんでも…俺の体だから…」



 そう言うと、小銭を持っていたタクトの手は赤みを失い、夏だと言うのに白く、発育が悪いのか、とても小さな手になっていた。

 タクトはその様子を見上げていた。そう、タクトは、タクトの体は元々…力無く横たわっているソレなのだから。


 小銭を掴んで満足そうにしている女の子を見上げていた。



「小銭…キラキラした…小銭…、えっと…まいどあり?」


 もうちょっと言い様もあるだろう、いや、この女にそれを求めるのならこんな遠回りする事も無かったのだろうと思う。

 悪夢を見ていたのは…タクトでは無かったのだから。

 いや、それも違う。この女は悪夢だとも思っていないのだろう。


「次…行くから…、えっと…、ばいばい?」




 願わくば…。


 タクトは、シンイチにはすぐに気付いて欲しいと祈っていた。


 気付くまで悪夢を繰り返すのは…辛いから。




解説は無しで終わりとさせていただきます。

解説入れたら薄っぺらくなりそうでしたので(笑)

真実は見えましたでしょうか?

読んでいただき感謝でございました。

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