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出兵 その8 デブリーフィング

 とりあえず生き残った俺は、安堵感を反芻はんすうしていた。


 魔女の前で全感覚を失った時から今の今まで、何かを考えようとすると、「だからやらなければ良かったんだ」という後悔の念だけが浮かぶ状態だった。しかし、「なんとかなった」と噛み締める事で、ようやくその状態から解放された。


 俺が大の字になって寝転んでいると、クーがプニプニした物体を手に持って、俺の顔にムニムニ押し付けてきた。


「テオ、落ち着きましたか」

「なんとか……」


 今の俺はクーの奇行に反応する余力が無い。考えるのも面倒くさい。それに、顔に当たるプニプニムニムニの感触はそんなに悪くない。動き回って熱くなっているので、すこしヒンヤリしたもので顔を冷やされるのは、むしろいい気持ちだ。


「テオがあそこまで女性の胸に免疫が無いとは、知りませんでしたよ」

「あ?え?」


 やっぱだめだ。今は話しかけられても、まともに返せない。


「私が胸を出し渋ったのが悪いんでしょうかね……」

「えー?……あ、さっきのは乳に見とれて失敗した訳じゃないぞ?」


 なにかすごく誤解されている。それに気付いてガバっと起き上がった。変な誤解に抗議するつもりだったが、クーが涙目だったので勢いをそがれた。あれ?クーってこんな目したっけ。


「私からは、テオが目の前に突然胸が現れて、固まったようにしか見えませんでした」

「えっと、ちょっと誤解を解きたい。まずその手を下ろしてくれ」


 起き上がってからも、手に持たれたプニプニの追撃は続いていた。オッパイは、その様に手に持って人に押し付けるものではないぞと。


「説明が難しいんだけど……魔女が現れたと思った瞬間、頭をバシッと何かに貫かれたんだ。それで目が開けられなくなって、それなのに目の前にはすごい力を持った何かを感じて……」

「テオ、それではよく分かりません」


「俺にもよく分からん」


 クーは跪座(きざ)のまま、両手でオッパイ玉を持ち、太ももの上でプニプニいじっている。なんかつい、そこに目が行ってしまう。


「でも、逃げるときに後ろの方で、どんどんその力の塊が大きくなっていくのも感じたんだ。あれは魔力そのものだったんじゃ無いかと思う」

「テオは魔力を感じる事が出来るようになった。そういう事ですか」


「たぶん……今も、自分の中に薄っすら漂うなにかがあるって分かる気がする。んで──あぁ、クーの石や豆水晶に吸い込まれてるのも感じる」

「テオ、それが本当でしたら、魔女の魔力に当てられて開眼したのかもしれませんね。今まで分からなかったのは、魔力を持った人に出会わなかったからかも知れません」


「でも、あのラザルスとかいう奴を見たときには、そんな風にならなかったんだよ。あいつを見た時になってれば、暗殺は成功したかも知れないのに」

「テオ、ラザルスの魔力は多くありません。テオがダニなら、ラザルスは少し大きめのハエくらいです」


「なぜハエに例えたし。しかもまた俺はダニだし」

「あの男を例えるのに、ハエでも勿体無いくらいですよ!」


 オッパイ玉が強く握られて潰された。痛そうなのが気になったので、クーの手から取り上げて、俺が優しくプニプニする。


「テオ、こともあろうにあの男は、自分の伴侶に精神支配のサークレットを付けていました。女の敵、いや、人類の敵です!」


 なんか、たまにクーの喋りに感情が乗るようになってるな。そういえば、さっき名前を呼ばれたときにも叫んでたし。


「伴侶じゃないんだろ。普通に考えると、精神支配してから指輪をはめたんだと思う」

「テオ、そのどちらでも、あの男が人類の敵である事に変わりがありません。二人でいつか倒しましょう」


「へいへい。……そういえばだけど、なんでラザルスに気付かれちゃったんだ?クーは幻影見せてたんだろ?」

「テオ、そこには二つ原因があったと思います。一つ目は、タイムラグの問題です。私は転移してきたラザルスにすぐ幻影を見せました。しかし、発動までの一瞬に現実の視界が見えてしまった様です」


「転移直後はバレやすいのか……」

「それから二つ目です。テオは魔女を殺しませんでした。なので、私は魔女の幻影を作りませんでした。魔女に見られると気付かれると思ったのです。その為、不自然な位置に立っている魔女に、違和感を持ったのではないかと推測します」


 原因は二人のせいです。これ以上の責任追求は止めましょう。そういう事か。事なかれ主義歴の長い俺は、その意図が分かった。


「倒そうにもタネがバレちゃって、暗殺すら難しくなった気がするな。やっぱ出来ればもう会いたくないや……」

「やれやれ、すっかりいつものテオですね」


 オッパイ玉を揉む俺の手が止まった所で、クーに取り上げられた。


「うん。やっぱらしくない事はするもんじゃないと思った」


 俺は苦笑しながら立ち上がり、体中についた土払った。とりあえず、歩いて帰らねばなるまい。話していたら、その気力がすこし戻ってきた。やはり二人で居るっていい。


「そういえば、あの魔女にあって思った事がある」

「テオ、他にも何か気付いたのですか?」

「魔力の多さは胸の大きさが関係していて、俺の魔力が少ないも、そのヘプッ」


 オッパイ玉が俺の顔に投げつけられた。

 オッパイは、その様に人の顔に投げつけるモノではないぞと。


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