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街での活動 その84 対峙イベント

 思いつきで始めた冒険者ギルドは、総合賤業ギルドとして順調に回り始めた。仕事は頼みたいけれど賤業の人とは関わりたくない、そういった人はそこそこ居て、窓口としての冒険者ギルドの存在はありがたられた。


 忌み嫌われる仕事を生業としている人にとっても、面倒な交渉事をしなくて済み、仕事も増えるためメリットがあった。


 また、コローナが軍票払いの依頼をいくつも出してくれたのも大きい。コローナは軍票にてお酒と食事の配給、そして医療を受けられるようにしていた。それはコローナが軍票の価値を保つためと、職人達の生活のためにと始めた事だったが、それが賤業と嫌われる人もギルドで依頼をこなせば利用できるようになったのだ。


 そして何より冒険者ギルドの酒場が効いた。誰にも文句も言われず安心して使える酒場。彼らにはそれすらも無かったため、ギルドの酒場が彼らの憩いの場になった。


 街の外からの入団者も少しだが出始めていた。入団者はやはり元傭兵で、護衛や代闘士の依頼をなんの疑問もなく受けていた。傭兵という仕事はどこかの傭兵団に所属して行う仕事だ。そして契約を履行して報酬を貰う。もともと近しい活動形態だったこともあり、冒険者ギルドに所属する事には全く抵抗がなかったようだ。


 まったくもって万事順調。一つの事を除いては。


 マルコ兄に帰ってきてもらう事がかないそうにないのだ。俺達の部隊は本格的に冬になる前に地元に帰らなくてはならない。そう考えると、少なくとも俺と一緒に帰るのは既に絶望的だ。


 間に合わない事には途中で気付いていた。しかしそれ以上の案も浮かばず、将来に希望を残す今の計画を続けるしかなかった。意味が無いわけではない。でも成功か失敗かで言うなら失敗だ。やはり悔しい。


「うーん、どうすれば良かったんだろう……」


「テオ、ケッツヘンアイの活動はまだ終わってませんよ。いくつかイベントが残っています」


「あぁうん、そういえば盗ったものを返し終えていないんだよね。そうだな、ちょっと暴れたい気分だしパーっとやるか」


「それが終わったら一ついい事をお教えしましょう。楽しみにしていて下さい」


「なんだよそれ」


 少し気になったが、もし追求してロクでもない事だったら色々挫けそうなので、それ以上は聞くのも考えるのも止めた。


***


 そんな訳で久しぶりに広場でヒーローショーである。戦争も収穫祭も終わって一段落、そろそろ騒いでもいい頃合い。俺達は空気の読める怪盗だ。


 とは言っても、街を救った英雄であり、慈悲の女神やら聖者などとも呼ばれ、影の支配者とも繋がりがありそうな俺達を取り押さえようとする者は居ない。一人を除いては。


「邪悪なカラクリを粉砕する男、テオドリクス!英雄だの言われているが、全てはお前達の企みだろう!捕まえて全て吐かせてくれる!」


 まぁ取り押さえようとしているのも俺なんだが。それも含めて悪のカラクリ。


「ハッハッハ!待っていましたよ!力を示すためには引き立て役が必要ですからね!いでよ火星大王!」


 クーがそう叫ぶと雷が落ち、落雷地点が赤く煮立ってソコからカクカクした金属っぽい人型が生えた。


 ジジジジ、バチバチバチ、ガーガーガー


 火星大王は5メートル程の巨大な金属ゴーレムで、口から雷と火花を発しているが、攻撃方法は単純に腕を振り回して叩いてくるだけ。当たれば致命傷になるのは確実ではあるが、ノロく単調で、さらに俺の視界には危険を表す予兆表示までされている。これではまるで避けろと言わんばかりだ。ちくしょうナメやがって。ムカついたので避けてやらん。


白兵甲冑ヴァイサクリブス金剛身シュタインハウツ!」


 ズーン!ギギギ……


 俺は身体強化と身体硬化の技を使い、金属ゴーレムの腕を正面から受け止める。そのまま受け止めた腕を押し返して跳ね除けると、金属ゴーレムはバランスを失ってバタリと倒れた。どうやら足も腰も曲がらないようだ。どこまでナメくさっているのか。


 俺は右手をわき腹の横で握り、左手をかぶせて力を溜める。


「はああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 すると拳が光りだすと共に、俺の体の全体からメラメラと光り揺れるオーラがあふれ出す。


 そして十分タメを作ったところで前方に跳び、ゴーレムの股間めがけてストレートを放った。


最終天国フィナーレ・ヴァルハラ!」


 ピィィゥゥィ……ドォォォォォン!


 ゴーレムを飲み込むほど太い光の柱が立ち昇り、轟音と爆風があたりを襲った。光の柱は天に登るように下から徐々に消えていき、柱がなくなって見ると金属ゴーレムは跡形もなく消え去っていた。


 俺はクーを指差してパフォーマンスを始める。


「人には心がある!根性がある!魂の篭っていない機械では人間様には勝てないぞ!こんな物に頼ってないで直接勝負しろ!」


 するとクーは少しムッとして答える。


「良いでしょう。魂などなくても機械は素晴らしいものだと証明してみせましょう」


 クーはケープの下に手を入れると、両手に液体の入った小瓶を取り出して天に掲げた。するとそれぞれの小瓶から水銀のようなものがニョロニョロと出てきて、クーの左右の宙空に扉サイズの機械の板を成形した。


「少女!機械!ベストマッチビルド!変身!」


 クーがそう叫ぶと、機械の扉はガシャリとクーを挟み込んだ。自爆か!?と思ったが、扉がカシャカシャと変形しながら消えると、そこには半分機械になったクーが居た。


 右手は生身だが左手は鋼鉄製。ワンピースも部分的に鋼鉄製になっていて、スカートも防御力が上がっている。そして顔の半分も機械で覆われ、右目にはコローナのごついゴーグルのようなものが付いていて、鈍い光を放っている。どう見ても悪役。


「鉄の響きにロマンを乗せて、灯せまだ見ぬ技術の火!機装少女クーデリンデ、ご期待通りにただいま見参!」


 クーは高いところで名乗り口上を終えると地上に降り立った。しめしめ、計画通りだ。


 実は今回俺には奥の手がある。ザフロールの子分をしている時に身につけた、自分の体を魔術で騙して動かす技だ。俺が普通に体を動かしても、クーには絶対に攻撃が届く事はない。クーは精神と肉体の間に介入して幻影を見せているので、俺が体を動かそうとした段階で全ての動きが見透かされるからだ。でも俺が独自に魔術で体を動かす分には別だ。ハエ男の夜目の術に気付かなかったように、クーはこういったクーをバイパスする魔術を感知できない。俺はそこにちょっぴり奇襲できる可能性を見出した。


 とはいえ恐らくチャンスは一度きり。失敗すれば近寄ってこなくなるだろう。ここぞというタイミングでやるしかない。そしてとっ捕まえて、いつまでもお前の思い通りにはならないと、思い知らせてやるのだ。


 そんな思いを隠せずに俺が手をワキャワキャさせながらジリジリ近付くと、クーは手を上げて叫ぶ。


「来い!ステップドリルクラッシャー!」


 すると、どこからともなくタケノコのような剣(?)が飛んできてクーの手に収まる。そして刀身が音を立てて回り始めた。なにその謎武器。


「そ、そんなの使うなんて汚いぞお前」


「私は機械の素晴らしさを証明すると言ったつもりですが……?それを否定するのなら受けてみなさい!スパイラルドライバー!」


「グッ!」


 ギィーン!


 俺は咄嗟に短剣を出して受け流した。しかしこの武器やばい。恐らく体の一部、いや装備が触れただけでも致命傷になるだろう。一応予兆は見えているので短剣で逸らす事は出来る。それでも触れた瞬間に強く弾かれてこちらの体勢が崩れる。チクショウ、これでは間合いがつめられない。


 ギーン!ギーン!ギーン!


 俺は剣を交える度に短剣を弾き飛ばされそうになり、近付くどころか後退するはめになった。


「口ほどにもありませんね。人が機械に勝ることなど無いのですよ。機械はそのためにつくられて居るのですから」


「く、そんな事はない!人は未来を想う事が出来る!その想いはいつか絶対にかなう!機械になど負けない!」


 ギーン!


「分かっていませんね!その想いの結果として人に生み出されたのが私達機械なのです。勝とうとする事が間違いなのですよ!」


 ギーン!


 クーも半分機械になりながら、迫真の演技で攻撃をしてくる。興行的には正解なのだろうが、俺の計画は台無しである。


 今回のストーリーは、力をぶつけた後にライバルとして認め合い、「(対決的な意味で)俺達の戦いはこれからだ」と握手して終わる予定だ。でも実際の展開は全てクーに握られている。その中で一瞬だけクーを出し抜ければ、俺は満足だった。でもそれはやはり難しいようだ。


 ギーン!


 大きく弾かれて俺はズザザっと後退。少し距離をとって構えなおす。するとクーが話を始めた。


「以前から思っていたのですが、人と機械、そんなに拘る必要はないでしょうに。機械も人の様になれますし、逆に人も機械の様に使う事が出来ます。その事を受け入れたとき、貴方はもっと多くの事を理解できるようになります」


「やめろ!そんな事は理解したくない!人は人だ!機械とは違う!特別な存在だ!」


 くそう、どこまで演技か分からない。クーの性格で俺の気に入らないところがバリバリ出ているので、俺もつい感情的に否定してしまう。


「では一つ例を出しましょう。これは貴方が先日行った事です」


「な、なんだ!何を言い出す!」


 いや、本当になんの話だ?


「先日貴方は、とある転換装置を作りあげましたね。ある物を別な性質の物に作り変える装置です」


 ん?転換装置?意味から想像すると、黒猫団を更生させるための冒険者ギルドの事か?


「そこで貴方は、装置の核として一人の人間を固定しましたよね。収まり続けるように加工して、動力源として、また触媒として利用するために」


 !!トラウさんの事か!


「そんな言い方はするな!俺は彼の事も想ってやったんだ!」


「勘違いしないでください。私は別に非難している訳ではありません。むしろ褒めているのですよ。ようやく人も道具も同じく扱えるようになったと」


「やめろ!そんな事を俺に分からせようとするな!」


 クーにハメられた!こいつまた俺を教育しようとしてる!俺がトラウさんを生贄にしたみたいに言うな!


 俺は色々な事が頭に浮かんで混乱した。こんな時にメンタルとタイムの指輪をつけていれば冷静になる時間もとれたが、今はクーに注意されて外されている。


 そして混乱の中、すぐ近く、頭の後ろから声がした。


「人である事はそんなに大事ですか?」


 ハッとして振り返ると、そこにはちょっぴり成長したクーの顔があった。そして俺が見て認識したのとほぼ同時に、その顔は目を閉じて俺に迫りキスをした。


 唇に柔らかなプニっとした物が当たり、口元を何かにハムっとされてナメっとされる。


 突然口の周りを自分の意思によらない生々しい感覚が襲い、すでに混乱していた俺の思考は目を回して吹き飛んだ。


 俺は何も考えられないまま反射的に二人目のクーを突き飛ばし、口の感覚を取り戻すように自分の腕で拭って叫ぶ。


「何をしやがんだこの野郎!」


 突き飛ばされた黒衣の少女は驚いた顔のまま地べたに尻餅をついて固まっていた。


 俺が状況を認識しようとそれを見つめていると、少女の目から涙が落ち、ゆっくりと悲しそうな顔になっていったかと思った瞬間、周囲から光と幻影が失われて視界が闇に包まれた。


予定していた展開だから逆に書きにくい

そういう事もあるのだなぁと思い知る

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