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天才詐欺師と魔術探偵  作者: カツ丼王
第二章 怪盗VS名探偵
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07. 警視庁潜入

 エミリアとの世間話を終えた飛鳥は、霞が関にある警視庁へとやって来ていた。


 元々警視庁は日比谷に存在していたが、関東大震災によって被災し、昭和初期に現代と同じ霞が関へと移転したという経緯がある。このあたりは官公庁として機能し、首相官邸や各国大使館も分布している。国際交流と政治の行き交う、天下の往来なのだ。


 警視庁から離れた位置に愛車のフォードを駐車し、飛鳥はまず街頭の自動電話へと入った。交換手を呼び出した後、何者かと短い会話を行い、手早く電話を切った。


 フォードに戻った彼は、しばらくすると普段とは異なる出で立ちで、警視庁へと徒歩で向かい始めた。


 その姿は岡持ちを抱えた店員だった。七分丈の料理用白衣を纏い、髭を付けて顔の色も濃く塗り上げ、歩き方も蟹股で『てやんでい!!』と威勢の良さそうな風貌である。誰が見ても、出前のお兄さんにしか見えないだろう。


 彼は特に警戒されることなく、庁舎へ入れると踏んでいた。守衛に用件を伝え、笑顔で敷地内へと入っていく。出前ぐらい珍しいものではないため、難なく、そして迷うことなく目的の場所まで向かう。


 建物を歩き回り、『刑事部』と表札のある居室の前にやって来た。


「失礼しやーす!! 中村さんに出前を持って参りました!!」


 物怖じすることなく扉を開き、用件を伝える。


 すると刑事か事務員かは分からないが、男性が一人近寄って来た。


「中村警部は丁度出てった所だよ。そっち置いといて。金は俺が建て替えとくから」

「すいやせーん!! こちらですね!!」


 案内された机を確認し、飛鳥は岡持ちを運ぶ。


「いやーそれにしても今日は暑いですね!! ちょっと窓開けてもいいすか?」

「? ああ、でも今日暑いか? むしろ寒いぐらいだと思うが」


 笑顔でわざとらしく汗を手拭いで拭きながら、窓を少しばかり開く。そしてそのまま居室中を観察した。


 昼時ということで出払っている者が多く、デスクに着いている者はまばらだ。中村警部のデスク後方の壁に、資料室や証拠品保管室の鍵束が見える。下見は済ませていたが、変わらず目的の品があることを確認する。


 一息ついた飛鳥はデスクに定食を並べ始めた。彼はあと30分は姿を現さない。たぶんこの定食は冷たくなって廃棄される運命にあるだろう。


 並べ終わり、飛鳥は先ほど開けた窓へ視線を移す。


 すると、何かが窓から室内へと飛び込んできた。


「う、うわあ!? 何だ一体!?」

「鳩だ!! 鳩が窓から飛び込んできやがった!!」


 くつろいでいた職員達は、突如出現した白い鳩に驚嘆した。鳩は狂っているかのように部屋中を飛び回り、書類や備品を荒らし回る。極め付けに糞尿も飛び散らかし、一帯は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。


(ナイスだP君。最高にイカしてるぜ!! 今の内に――)


 周囲の目がP君に集中する隙をつき、飛鳥は背後の鍵束を盗んだ。そして岡持ちを回収し、そそくさと部屋を後にする。


 彼は一直線にトイレへと向かい、大便所へと駆けこんだ。目的の鍵は手に入ったが、このままうろつけば否が応でも目立つ。次の変装に移らなければならない。


 飛鳥は岡持ちから警察の制服を取り出し、いそいそと着替え始めた。


 ここまでは計画通り。やはり明智昴が相手でなければ、歯ごたえが無い。

 二十人殻はそんな感想を抱いた。

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