第一章 第11話 試しに一戦交えてみた結果・・・ その10
◇ ◆ ◇
てな訳で、策はこうだ。
手持ちのコンクリ玉は6個で敵は4体。
ハト頭を潰しても死なないみたいだけどしばらくは行動不能になるっぽい。
相手はここに登ってこれないのでバカの一つ覚えでミサイルを撃つだろう。
そして、連射はできないっぽい。
なので、相手が撃った直後のタイミングで塔屋・・・もとい灰谷城の城壁ギリギリまで出て狙い撃ち! クイックモーションでな。
二発しか外せないけどガードしてなきゃ当てる自信はある。
そしてヤツらの頭を潰して、しばらく行動不能にしたら、もう勝ち確定だ。
そう。
そ の 隙 に 、 逃 げ る か ら !
はい?
もちろん逃げますよ?
いや、だって、潰してもなんか新しく頭生えて復活するし。
無理だわ。
勝利条件わかんねぇし。
難易度高いし。
もう、経験値とかゴールドとかいらねぇわ。
さあ、作戦実行だ!
ミッション、スタート!
まずは状況確認!
俺は、地べたにべったりうつ伏せになり、匍匐前進。
ズリズリと壁ギリギリまで進んで、頭を少しあげて相手の位置を確認する。
ひぃふうみぃよ・・・うん。
あんまり位置は変わっていない。
そして程よくバラけている。
どうした?ハトミサイルは撃たないのか?
こっちは撃った後のスキ狙いなんだよ。
よく観察してみると、手の先の方にハトを撃った跡がある。コポコポと青い血が出てる。その血の中からグチュグチとハトの上半身が這い出てきた。
ハトミサイルを装填したってことなんだな。
あいつらの構造よくわからん。
中にハト詰まってんの? キモーい。
そもそも手の先のハトしか飛ばせないっぽい。
他の二匹は手の先に鳩がいない。個体差あるんだな。
で、あのハト頭が背中から生えて四足歩行になった最初のポッポーは・・・ん?
なんか伏せて縮こまってやがる。潰れたヒキガエルみたいに。死んだか?
ドンッ!
ギュッと縮こまった手足を一気に開放する四足歩行ポッポー。
俺の視線は下から・・・俺の頭の上方へ・・・あ、やばい。
「ヌァッアアアッッ?」
ゴロンゴロンと横へ転がる。転がる。転がる。
そして、今居た場所に、上から四足歩行ポッポーが、ドーン!と殴りかかりながら落ちてきた。
着地点に放射状の亀裂が走る。
うーん。当たってたら死んでたね。
つーか強くなってない!?
四足歩行ポッポーは、ハト首だけをこちらに向けると、つぶらな瞳で俺を見つめ、低く「ボッポォ」と啼いた。
表情はないけど、ニタリと笑った。
そんな気がした。
まあつまり。
籠 城 作 戦 い き な り 失 敗 !
うおぉぉぉい!
あっさり侵入してくんな!
天才軍師の策略をいきなり破んじゃねぇよっ!
俺バカみたいじゃん!
あんなに長々講釈たれてさーっ!
無能な軍師じゃの三顧の礼は、やはりなしですか?
多分、三人の中じゃ関羽が綺麗で好みだと思う。
劉備は真面目かわいい系で、張飛はボインの金髪バカグラマーだろな。
そんな美少女英傑たち、もう迎えにこないですか?
エッチなお礼はなしですか!
いや、もうっていうか最初から無いけど。
つーかさぁ!
ナニソレっ!
ジャンプ力すごっ!
鈍重そうなくせに!
俺よりぜんぜんすごいじゃん!
何なの人類最強の意味の無さ!
つーかやべぇ!
灰谷城が陥落!
このままじゃ、また詰む!
四足ッポー(略しました)がこちらを向き、先ほどのように縮こまって溜めを作る。
腰が上がってなんというか前傾姿勢だ。
これ、もしかして、陸上のクラウチングスタート?
ダッシュで突撃っぽい?・・・ってキタッ!
息つくまもなく、ドンッとまっすぐ突っ込んで来た。
まるでF1カーがフルスロットルでスタート切ったかのようだ。
当たれば死ぬ。絶対。
俺は、瞬時の判断で真横に跳んだ。
ほぼ同時に俺の居た場所を四足ッポーが高速で通り過ぎ、そのまま貯水タンクに激突する。
タンクはボルトで固定してある鉄製の架台ごと、ひしゃげて吹っ飛んだ。
タンクへつながる注水管から、行き場をなくした水が勢い良く吹き出す。
威力半端ないね!
かすっただけで骨折しそう。
なんてことを横っ飛びしながら考えていたのだが、なんか滞空時間が長いなと思った時には、塔屋から落下してた。
飛ぶ方向間違えたよ。
したたかに打った腰が痛い。
「ボ? ボッポーボ・・・」
「ボヴォヴォ?」
「ボヴォボ」
なんか、自分から落ちてきたぞ? バカか? バカだな・・・みたいな会話してますか?
くっそ、おまえらトリアタマのくせにバカにしやがって!
くっそ、どうなるか分かってんのか!
くっそ、三人で俺を取り囲みやがって!
くっそ、四足ッポーは塔屋の縁から身を乗り出して俺を見下ろしやがって!
つ ま り 、 完 全 に 囲 ま れ て る ぅ !
くっそぉぉおお!
その11につづくっそぉぉおお!