第一章 第11話 試しに一戦交えてみた結果・・・ その5
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逃亡を希望する俺にポヨンはプンスカとファンシーな怒り顔。
「逃げるなんてダメポヨ! 敵前逃亡は士道不覚悟で切腹ポヨ!」、小さい腕をフリフリ言う。
「ハッ。残念ながら、士道もねぇし、切腹する誇りもねぇの!
なぜなら俺は武士じゃないから―――っ!」
微妙に武士っぽい剣道頭の俺が言うのもアレですけど。
「つーか、俺は守護騎士なんだろ? 騎士は切腹せんだろ。
あっ! てめぇの部屋になんか投げるもんあるんじゃねぇの?
なんか持ってこいよ! 今すぐ!
できれば野球ボール!」
「・・・。」
ん? なんで無言?
ちらっとポヨンの顔を見るとすごく考え込むような顔をしている。
「あ・・・ある・・・ポヨ。けど・・・」
なんかいいのがあるな、こりゃ。
「ほほう。おまえが今思ってるアイテム。それ持ってこい」
事務的かつ威圧的に言う。
「いや・・・でも、D級のポッポーなんかにアレは・・・」
「いいから持ってこい。 死にたくないだろ?( 俺 が な ! )」
「た・・・高いポヨ! すごく高いポヨ!
もし、単独でB級以上に遭遇したら・・・と思って。
緊急の時、念のため、お守り代わりに買ったポヨ!」
「おまえ、俺に20万借金あるじゃねぇか。
チャラにしてやるから持ってこい」
架空の押し貸しで借金させて取り立てる灰谷金融。
「20万ドルテどころじゃないポヨ!
アナザーディメンションボールは、キルシュ銀貨で80枚。
べリュリュー帝銀貨でも30枚は必要ポヨ。
ヘタするとカラン・レコンキスタ金貨1枚分するかもポヨ。
そもそも硬貨は鋳造された時代や地域に寄って金属の配合が違っていて、価値がバラバラポヨ。
今の相場だとキルシュが少し下がって。金貨は軒並み暴騰してて・・・」
「あー、そういう、オオ◯ミと香辛料的な話はいい。
覚えられんし、その気もない。趣旨が違う。作品が違う。
そうだな、栗あんたい焼き(160円)、10個でどうだ・・・」
「かっしこまりぃっポヨ!」
小さい手でビシッと敬礼し、キュルッとポーチの中に消えるポヨン。態度変わり過ぎ。
とりあえずカラン・レコンキスタ金貨は1600円くらいと判明。
ま、アナザーディメンションボールとやらの効果は知らんが、単語から察するに、敵を問答無用で異次元に吹っ飛ばすとか、こっちが異次元にワープして逃げるとか、そんな感じかな?
むしろどっかでそんな技見た気がする。聖闘士的ななにかで。
ヤバイ敵に出会った時用みたいな感じだったし、倒すというよりは緊急避難的に使えるのだろう。
でも、ゴールドと経験値は入らない的な?バシルーラ的な?
ゴールドは残念だけど、とりあえず目の前のコイツからどうにか逃げないことにはな。
と、その時、ポーチの中から
「 ン ギ ェ ェ エ エ エ ェ エ エ エ ッ ! 」と絶叫。
その後、静かに・・・。
え? な、何があった?
俺は敵の動きに気を配りながらポーチのフタを開ける。
目に見えない何かが立ち昇った。
く っ さ ―――――― っ !
おげえええぇえぇぇぇえぇえええっ!
・・・いや、うん。
毎日嗅ぐ臭いだよ。
主にトイレで。
今日のはちょっとキツメだけど。ニラ食ってたから。
さらに、産んだのが昼だから、ちょっと、熟成期間がね。
おかげで、相当な破壊力に・・・。
ポヨンは、おそらくディメンションボールが入っていたであろう引き出しを開けたまま、白目で泡吹いて気絶してた。
コイツ、俺のウン・・・の入ったパンドラの箱を開けやがったか。
むしろあのチェストはアイテムボックスだったのね。
なんかやたら良い感じの作りだとは思ったんだよな。
「う、おえ」
俺はその臭気に耐えられず、ポーチのフタをパタンと閉じた。プハー。
自室のトラップに掛かるとは愚かな奴め。
まったく、ポヨンは警戒心が足りねぇよ。
いつ何時、自分の引き出しの中にウンコが入ってても大丈夫なように敏感な危険感知能力を磨いておけってんだ。
つまりポヨンが悪い。俺、悪くな~い。
その6につづく~ん。




