第一章 第1話 かなみがエロい結果・・・ その3
◇ ◆ ◇
かなみは、俺の一つ上の階に住んでいる。
うちのマンションは日当たりの問題なのか設計者の自己満足デザインなのか知らないが、上層階が階段状に設計されており、さらにバルコニーがやたら広くとっているので、下の階のバルコニーは上の階から覗きこめば結構見えてしまう。
そんな問題ある構造。
あの時間に、かなみも外に出てたのか?
どこまで見た?
アレの投球シーンをはっきり見たのか?
そういえばアイツ、「ぽよ―――っ」とか、声上げながら飛んでったしな。
あれ?言い訳思いつかない。
と言うか状況の説明のしようがない。
言葉が出てこなかった。
「ん。 ・・・ま、いいや」
無言の俺にそう言うと、かなみはもう昨夜のことには触れず、今日提出の古文の課題に話題は移っていった。
心臓が・・・恋とか、愛とか、エロとかでなく、ドクドクした。
なお、古文の課題とやらは存在を忘れてた。
昨夜の出来事。
起きた事実だけを傍から見れば、ぬいぐるみかなにかをベランダから下の公園に向かってぶん投げただけに見える。
高校生男子の深夜の行動にしては異常だが。
でも、別に後ろめたいことをしたわけでもないのに・・・妹に対しても、かなみに対しても、それを話すのを憚られるのは、なぜだろう。
やはり、アレが言った「 死 ぬ ポ ヨ 」を心のどこかで信じているんだろうか、俺は。
・・・いや、違うな。
あんな馬鹿げたことを話すと、うわキモイ、意味分かんない、妄想乙って思われるからだ。
妹やかなみにそんな風に思われて、冷たい視線で蔑まれるなんて、なんてご褒美・・・いや、耐えられない。
◇ ◆ ◇
マンション前の坂を下っていくと商店街のアーケード。
そこを抜けると中森駅北口はある。
一度も曲がることはない、一本道の下り坂。
俺とかなみの青春ロード。
駅のホームで二人並んで電車を待つ。
中森駅のホームにはブロンズ製の縄文土器のオブジェが飾ってあり、その台座には「日本考古学発祥の地」と書いてある。
なんでも、明治時代にアメリカの考古学者がこの辺りで縄文時代の遺跡を見つけたらしい。
中森貝塚と言い、教科書にも載っていた。
正確には、うちのマンションの隣がまさにその遺跡の発掘現場で、今は中森貝塚遺跡公園とかいうそのまんまな名前の公園だ。
夕べ、ピンクのあれを投げたとこね。
そんなわけで中森の町は結構色んなとこに縄文系のオブジェがあったりする。
町ぐるみで推しているはずだが観光客などは特に来ない。
住民も気にしていない。
きっと区役所の人ももう忘れている。
そんなホームの縄文土器オブジェを、かなみは子供の時からなぜかお気に入りで、いつもその近くで電車を待っている。
そして時々、手を伸ばして、サワサワと触っている。
きっと子供の頃触りたくても手が届かなかった影響だと思うね。
今日も、我が校の運動部はかなみ自身が所属する剣道部を含めて総じて弱いという話をしながら、無意識に縄文土器を撫でていた。
土器の溝をつつーっとなぞったりしていた。
柔らかそうな手と、白魚のような指で・・・。
う ん 、 エ ロ い !
エロいんだよ、全てが!
縄文土器をナデナデとか!
エロくないようでいてエロいんだよ! 地味に!
うちの制服はいわゆるフツーのブレザーに大きめチェックのスカートであり、リボンなどで可愛くできるはずの胸元には、ガッツリ、グレー系のネクタイを配置。
かなり地味。
重厚感すら感じさせるシロモノである。
他校と比べ、お世辞にもカワイイとはいえないのだが、かなみが着ると・・・。
す ご く カ ワ イ イ !
この地味さが知性と清純さを際立たせている!
そこにボリューム感満点、パツパツの胸元とか!
なのに細いくびれた腰回りとか!
かなみの性格上あまり短くしすぎていないスカートから伸びるスラリとしながらも肉付きのいい脚とか!
制服がエロさを全く強調していないところが逆にもう、めっちゃエロい!
内から溢れ出るエロさを地味な制服で無理やり押さえつけようとして、全くできていない。
中からあふれ出るエロスの圧力!
もんげーたまらんズラ!
これを「地味エロい」と名づけよう!
ジミェロイと発音することとする。
アヴァロンみたいなアクセントで。
流行れ。
なお、少し離れたところに、同校の女生徒が数人おり、俺らと同じように電車を待っているのだが・・・。
まぁ、全くエロくないね。
ひたすらに地味だね。
地味エロくないね。
ジミェロクナイね。
あ、アクセントはジャミロ・クワイと同じで。
しかしなんで同じ人間なのにあいつらは全くジミェロクナイなのか。
ビアンカにエッチな下着を装備させるとむっちゃエッチだけど、ボストロールに装備させても毛ほどもエロくないどころか嫌悪感すら感じるのと一緒かな。
そうだね。
その4へつづく