第一章 第7話 柄にもなく、勇気を振り絞った結果・・・その3
◆ ◇ ◆
やってやるぜ・・・なんて言ったけど。
言ってましたけれども!
くっそ―――――――っ!
やっぱこえぇええええええ!
程なく、自宅前についた俺は、ドアノブを握ったところで、我に返った。
うーん。
駅前からの坂道を登ってる時や、エレベータで8階まで上がっているときは、瑠璃やかなみを化け物から守っているイメージで、ものすごく力というか、勇気が湧いていたんだけど。
ここに来て魔法が解けてしまった。
直前までブレイブを鼓舞するバトルソングが脳内に流れてたんだけどなー。
効果時間短かったなー。
ドアが開けられない。
ドアノブを握る手と、足の裏に根っこが生えたみたいだ。
動かそうとすると痙攣する。
メリーへの、得体のしれない恐怖が蘇る。
なんなの?
俺、なんの戦略もなしにボス戦に突入しようとしてんの?
アホなの?
どうしよう?どうする?
さぁ、クールゲットの時間だ。
おちつけ? な?
え? そのまま一旦退却すればいいじゃんだって?
はっバカがっ!
このままドアノブ放したら、ドアがガチャンと開いて、両目がえぐられてるメリーさんが出てくるに決まってんだろ?
このパターンそうだろ?
っていうか、さっきソレ想像しちゃったから、バトルソングの効果が切れたんだよ。
ブレイブ雲散霧消したんだよ。
あぁあああ―――っ!
もう動けない―――っ!
詰んだ!
詰みました!
畜生!なんだこれ。
クソゲーだよ!
もう、俺は一生ここでこのままなんだ!
自宅のドアノブ握ったまま、飢え死になんだ!
こんなことなら神社で飢え死にのほうがまだ良かった!
ナギちゃんいたし!
一人でこんなトコで死ぬのは嫌だよぉおおおお!(はい、皆さん、これがパニック的思考ですよ?)
◆ ◇ ◆
・・・。
・・・・。
・・・・・・。
はい。そんなこんなで、さらに小一時間経ってるわけですがね?
え?いくらなんでも、やり過ぎ?
どこかで正気に戻るはずだ?
最悪、家の人帰ってくるんだから飢え死にはないだろ、だって?
いやいや、君ね?
それは君が真の恐怖を味わったことないから言えるセリフだよ。
君オバケとか見たことないでしょ?
オバケなんかないさ♪ッて幼稚園で歌ってそれ信じてる人でしょ?
居 る の に !
オバケとか、居るのにっ!
そういうおめでたちゃんは黙ってやがれ!
こちとらガチで見てんだよ!
だからこのぐらい混乱するのがデフォなの!
フツーなの!
恐怖で石化するの!
ストーン灰谷なの!
あと・・・緊急の追加情報として、ほんとやばいのが、いま・・・
す っ げ ぇ 、 ウ ◯ コ し た い ・ ・ ・ 。
いや、君、何その顔?
その人を蔑んだ顔をやめろぉ! まだだ!
ばか!
もらさねぇよ!
さすがにそれはねぇよ。
高校生だよ?
童貞だけど高校生なんだよ?
うんこ漏らし日本代表オーバーエイジ枠には流石に入らないですよ。
そもそも俺はうんこ漏らしキャラじゃないよ!
バーストした記憶ないもん。
せいぜい小学校の頃、おならだと思ってたら実が出そうになって、「やべっち!」と気合を入れて穴の絞りをきつくして、濃い目のおならをプゥムス~とかまして、「フゥ、セーフー」なんて思って一日過ごした夜お風呂入るとき、パンツ脱いでみたら、尻の穴付近のまぁまぁ広範囲にスプレーしたみたいに茶色く染まってたくらいだよ。
あとは、事後の拭きがちょっと甘くて、味噌パンになったくらいか。
先月だけど。
ま、ホント、だれでもあるレベルですよ・・・。
おい、なんだ?
それで充分クソッタレだとか思ったヤツ!
マジであるだろ!
だれでもな!
お前の好きなあの子も、憧れのあの人も、あの群れのようなアイドルだってみんな味噌パンくらいは経験あるんだからな!
なんなら、アレだけの人数だ。
ステージ上の一人や二人は常時、味噌付きで・・・。
うん。この妄想はやめよう。
俺スカトロ属性は持ち合わせていないんだ。
アイドル集団のライブ中のあの娘ももしかして味噌パンかも、うへへ・・・なんて考え続けたら、不要な属性が付与されちゃうかもしんないよ。
ただでさえ、俺ってちょっと色々アレかもな・・・って自覚しつつある中で、スカトロまで加わったらもう普通に生きていけないよ。
ちなみに個人的見解で味噌パン経験が無いのはプーチン。
ヤツのウンコはきっと鉄の塊とかウラン鉱石とか、ミサイルとかだから。
おならチ◯コみたいな名前のくせにな。
ま、そんなわけだから、俺はうんこたれじゃないし、クソッタレでもないんだ。
蔑まないでくれたまえ?
エンガチョしないで。
食べなれない高級ウナギなんぞ食ったせいで、胃腸がびっくりしちゃっただけなんだよ。
ナギちゃんのせいなんだよ!
まぁ・・・。
ただ・・・。
例えば株式や為替の相場。
ワールドカップの決勝。
そしてシュレーディンガーの猫。
それらが一瞬後にどうなるかわからないように、俺の、一時間後の未来だって誰にも予想がつかない・・・。
そう思うんだ。
いや、漏らさないよ? 本気で!
でもな?
決められた運命なんて、ツマラナイと思わないか?
敷かれたレールの上を走る列車より、自由なその翼で先の見えない未来を切り開くほうが素晴らしいんじゃないか?
だから、もし・・・俺の・・・アレが、そうなっても・・・。
見捨てず、続き、読んでくださいね?
ね!?
その4へ・・・つづくから