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俺がビキニアーマーでどうすんだ!?  作者: ダラリノコトダマ
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第一章 第6話 ハングリーな結果・・・ その10

◆ ◇ ◆ 


 ナギちゃんは、棒付き飴をカロカロ鳴らしながら、空を見て鼻歌なんぞ歌っている。

 女子に対してこっちから話題を見つけてトークを広げる術を持たない俺は、相手が話してくれないと、寡黙なクールガイというペルソナを着けたナイスガイになる。


 コミュ障?

 いえ! 違います!

 寡黙なクールガイです!


 おまえ、高倉健にコミュ障って言えんの?

 言えないだろ?

 じゃあ俺にも言わないで!


 そんなわけで、無言のナギちゃんの横で地蔵と化している俺は、傍目から見れば五月の木漏れ日を浴びながら無言で佇む少女漫画の表紙絵のように見えたであろう。

 『君に届◯』的な感じ?

 爽やかな色使いのアレでお願いしますよ。


 あ、横においてある花瓶と食卓塩はフォトショで消しておいてください。

 意味わからないんで。

 あと、手足をにょーんと伸ばして顔も小さくしといてください。

 ついでに目も二重にして髪もサラッサラにして・・・もう俺じゃねぇな。


「ニーニくん、お腹空きませんか?」

 ナギちゃんが沈黙を破った。ありがとう。

「あー・・・」

 そういえば、すごく空いている。

 だって、もうすぐ昼前だというのに昼飯前の早弁をしていない。

 でも、食うものは塩しか・・・あ、もしかしてナギちゃんなんかくれる?


「よいっ・・・せ。 うあ、重・・・」

 ナギちゃんは体を捻って手を伸ばすと俺の背中側に置いてあったスポーツバッグを手繰り寄せた。

 なんでこんなに重いんだろ?なんて呟きながらバッグを膝に載せ、勝手に中を漁りだした。

 断りなしか。

 自由だな、おい。

 でもゴメンなー。俺もさっき探したが、胃の中に入れるものは、ここにある赤いキャップのサラサラした白い粉しか無かったのだよ。

「うーん。何もない。しょっぱいなぁ・・・」


 塩 だ け に ね !


「しかたない・・・。ニーニくん?」

「お? ん? なに?」

「なんか買ってきてくださいよ」

「え? 俺が?」

 えーと、高校生男子が中学生女子のパシリ?

 童貞っていうだけでそんなにランク低くなる感じ?


 っていうか・・・忘れてたわけじゃないけど、俺はこの、天礎神社という聖域から出られない。

 なぜならメリーさんに追われてるからさ!

 ・・・なんて言えねえなあ。

「あ、いや・・・それは・・・。んーと、なんつーか・・・」

 コミュ症じゃねぇぞ?

「もしかして、お腹が空いて一歩も動けない状況ですか?

 動くと死んじゃう? 残りライフ1ピクセルですか?」

「ははは。

 や、うん。・・・まぁ、その・・・。

 こ、この神社から出ると、死ぬかもしれないのは・・・そ、そうかも」


 ナギちゃんは、ふぅと、呆れたように息をつくと、仕方ないなぁ・・・と自分のポーチを探った。

「じゃーん、ラス1ですよ?」

 手にしているのは、ナギちゃんがさっきからすでに何本か舐めている、棒の先に丸っこい飴が付いている例のあれ。


「 チ ュ パ カ ブ ラ で す ! 」


「いや、チュッパチャップスだろっ!

 チュパカブラは南米の吸血モンスターだ!」

 ナギちゃんは、二秒ほど黙り、

「うーん。四十点」

 え?なにが?

 俺のツッコミが?

 君のボケも微妙だと思うぞ?


「四十点の人には・・・こっちかもですね」

 ナギちゃんは、自分の咥えているチュッパチャップスをゆっくり引き抜く。

 ぷるっとした唇から、チュプッ、と小さな音がして、少し小さくなった飴が引きぬかれた。

 そして、目の前に差し出される。


「 ど っ ち が い い で す か ? 」


「 は い っ ? 」

 右手には、てらりと光る小さくなったチュッパ。

 左手には銀紙っぽいビニールに先が包まれたままのチュッパ。


 え?コレをどうしろと?

 ま、まさか・・・?

「チュッパチャップス占いです。

 これでニーニくんのいろんなことがわかります」


 な !? 何 が わ か る と 言 う ん だ っ !?


 俺は、左右のチュッパチャップスを交互に見る。

 ど、ど、どっちを選ぶのが正解だ?


 いやいや、フツウ、新しいほうだろ?

 舐めかけなんておかしいじゃないですか?

 ですよね?

 たぶん。

 うんきっとそう。


 だがしかし、コレで俺の何かがわかるとなると・・・。

 えーと、予想だけど、未使用を選ぶとヘタレって言われる気がする。

 でも、使用済みを選ぶとヘンタイって言われる気がする・・・。


 挙句、間接チューだって言われて、いつの間にかそれが私の初チューを奪ったとかになって、べろべろ舌でいやらしく長時間舐め回したとか、もうお嫁にいけないとかになって、いろんな人に言いふらします。そうされたくなければ・・・って感じで先ほどと同じ脅迫モードに・・・。

 絶対そうなる!


 怖いなこの子!

 スキあらば脅迫!

 いつどんな体勢からでもフィニッシュブローを打てる伝説のボクサーか! まっくのうち!


 となると、ヘタレと呼ばれようとも、このぬらぬらとナギちゃんの唾液に濡れた飴を選ぶわけにはイカンな!

 いや、最初から選ぶつもりなかったからな!

 ホントに!

 ホントだよ!?


「よ、よよよし・・・」

 俺は、ふうと息をつき、ゆっくり新品のチュッパチャップスに手を伸ばし・・・。

 震える手で取ろうとした、その直前にナギちゃんが

「この占いは、ニーニくんが童貞かどうかと、あと、男の人の体の一部の形状がわかります」


 っ と ! 危 ね ぇ っ !


 慌てて手を引っ込める!

 ナニソレ!

 ナニソレ!

 なんだよそれ!


 え?

 これは?

 つまり?

 この小さい包装紙に包まれている新品の方を選ぶと、俺は童貞で?

 かつ、なんていうかその、吾輩の持ち物は先っちょが包まれているお子様形状って判定されるってこと?


 なんて俺だけにピンポイントでひどい占いだ!


 いや!ちがうよ?

 アレは、アレよ?

 そんなことないよ?

 俺の、その、あれは・・・ねぇ。

「さらには、包み紙の剥き方によって、ニーニくんが、・・・ウフフ・・・をどう扱うかがわかります」


「 そ ん な こ と ま で っ ? 」

 いやもう、選べないですよ!


「ちなみに、世の高校生男子の92%は私の舐めかけを選びますよ?」


 マ ジ で か !


 選んで良かったんか!

 くっそ!

 ヘタレだ!

 俺はやはりヘタレだったんだ!


 ていうか、男子高校生の92%は童貞卒業してるの?

 あいつもそいつも?

 ドイツもコイツも?

 ドイツのマーセルも?

 そりゃないだろ?

 ナイナイ。

 あいつは声がサスケに似てるだけのただのヲタゲルマン人さ。


 この一連の流れも全部ナギちゃんの嘘さ!

 あるわけないじゃん!そんな占い!

 もうだまされないぞ?

 大人の余裕を見せてやる!

「へぇ、そうかい」と、俺は落ち着いた風を装って未開封のチュッパチャップスを摘むと、なにも気にしてない風に乱暴に包み紙を剥いで、口に入れた。


 あ。う・・・うめぇ。


 アマイはウマイの語源というが、ほんとにウマイ。

 腹減ってるからなぁ。


 う、ナギちゃんがなんか見てる。

 そして、なんか・・・ニヤリとしている。

 そして、ポーチの中からドクロにデコっている手帳を取り出してなんかメモりだした。


 な、なんだよ。

 何書いてんだよ?

 別に、フツウを装ったよ?

 なんならちょっとワイルドに皮を剥いたよ。なんとなく。

 だから、ナギちゃんのウソ占いなんかに、貶められる俺ではないはずだ。

 動揺するな! 俺!

 それは相手の思うつぼだぞ!


 ナギちゃんは、手帳を閉じて表紙に付いているボタンをパチンと閉じると、

「うん、なるほど。まぁ、いいでしょう」と言ってそれをポーチにしまった。

 ちょっとぉ~、何がいいんですかねぇ?

 せめて「ニーニくんは童貞ですね? ついでに○○の仕方は××ですね。ヘンタイです」とか言ってくれよ!

 黙ってるとか、勘弁してもらえませんか。


 って、イヤイヤ! 気にしたら負けだ。

 きっと別に大したことは書いていないはずだ。

 俺が気にしてそわそわしだしたら、それを煽るような小悪魔的なことを言って、拝み倒して手帳を見るか、無理に奪って手帳を見るように仕向けられ、開いてみたら『バカが見る、ブタのケツ』とか書いてあるに決まっているんだ!

 だから・・・見ない!

 見せてくれとも頼まない!


 いつかウチに遊びに来た時とかに、こっそり見てやる!

 くそーーーっ!



 その11にぃつづく!

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