第一章 第6話 ハングリーな結果・・・ その9
◇ ◆ ◇
俺は、ナギちゃんの眼前にバッと手を広げ、
「ちょちょちょちょちょっと待って!
あのあああのあのさナギちゃん!」
「んむ~ん? なんですかぁ~?」
くっそ!
この体勢で首を傾げて甘ったるい声を出すんじゃないよ君ィ。
今の一言だけで理性マンに凄まじいダメージ来たよ。瀕死だよ。
ついでに死んでた本能マンにザオリクかかったよ。
アレだからな!
理性マンが逝ったら、本能マンが思うさま我が物顔で大暴れするからな!
ただじゃすまねぇぞ!
逮捕されんぞ! 俺が!
くっそ―――っ!
俺は、ニヤニヤしている嘘つきナギちゃんに、意を決して反撃の狼煙を上げた!
「あのさ!ナギちゃん!
あの・・・もしかして、間違ってたら、ホントに申し訳ないんだけどさ・・・。
なんというか・・・、今の・・・退学とか、破産とかの話も・・・さっきの、アイドルの話みたいに・・・嘘だったりとか・・・しちゃったりする系ですか?」
だいぶ控えめな狼煙を上げたった。
いや、だって、万が一ホントだったら悪いじゃん?
極悪人の冷徹人間とか言われたくないじゃん?
さて、当のナギちゃんは、俺に伸し掛かったまま、その表情から笑みが消えた。
え?なに?
どういう表情?
感情読めないんだけど。
あれ? もしかして、本当だった系?
「や、あの、ごめ・・・」
取り繕う言葉をどうにか搾り出そうとするのに被せて、ナギちゃんはガバっと起き上がると、階段に座り直し、サッサと服の皺を払い、居住いを正した。
正面を向いて、黙る。
そして「グスッ」と鼻をすすり、天を仰いだ。
え? もしかして、涙がこぼれないように?
マウントポジションから開放された俺は、のそのそと起き上がり、再び隣に座る。
なんと声をかけたものかわからず、オロオロしながら黙ってナギちゃんを見つめていると、
「 チ ッ ! 」
え?
舌打ち?
ナギちゃん舌打ち?
そして、ふぅ~、とナギちゃんは肩をすくめ、やれやれといった表情で
「ニーニくんは、人生で三度だけ来るチャンスのうちの一回を無駄にしました」と言った。
な ん じ ゃ そ ら ?
「残念でしたねぇ?」
ジトッとした目で見上げられる。
「え? えーと? つまりどういうこと?」
「ニーニくんの残機は残り二機ってことですよぉ」
・・・いや、わかんないけど、なんか重大なミスをしたっぽいのかな?
結局、何がホントで何がウソかはっきりとしないまま(ほぼ嘘だと踏んでいるが)、金髪でタトゥーな理由もわからないままであった。
その10へつづく・・・。