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俺がビキニアーマーでどうすんだ!?  作者: ダラリノコトダマ
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第一章 第5話 謎の電話に出た結果・・・ その3

◆ ◇ ◆ 


 ズ シ ン !


「ひっ!」

 俺が、俺なりの推理劇をかなり無理矢理な感じで幕引いた瞬間、家が揺れた。

 食卓塩がカタッと鳴った。


 なに? 地震?

 いや、違う。

 外のバルコニーになんかでっかいものが・・・落ちてきたっていうか、降りてきたっていうか・・・。

 まあ、そのようなことに起因する揺れのように・・・感じた。


 ダイニングキッチンと隣接しているリビングはでかい窓というか、広く開け放てるタイプのテラスドアなので広いバルコニーが見渡せる。

 で、俺が今いるキッチンカウンターのとこからは角度的に微妙に見えないのだが、この時の俺にリビングに行く勇気はちょっとなかったね。

 リビングとダイニングは壁で仕切られていないので、数歩移動すればバルコニーが見えるんだが。

 なんなら、わざと見ないように、そろーっと廊下に出た。

 ちなみに、何が来たかは・・・当たり前だが、すっげぇ気になる。


 ていうか、ポヨンだよな?

 うん。絶対ポヨンだよ。

 だって、ここ、八階だもん。

 登ってこれないもん。

 スパイダーマン以外。

 あと、ルパン以外。

 あと、忍者ハットリくん以外。エトセトラ。

 結構いるな他は・・・。


 井 戸 を 登 っ て き た 貞 子 と か か な 。


 ひぃ! また、余計なことを考えてしまった。

 ま、まぁ、ポヨンだよ。

 アイツ、宙にフワフワ浮かべるっぽいし。

 さっきの電話した後、フワフワ飛んで、ベランダに下りたんだよ。絶対そうだよ。


 っ て い う か 、 そ う で あ れ よ !


 なんか、ズシンて、相当重量がありそうな音だったけども!

 ポ ヨ ン で あ っ て く れ よ !


 ・・・うん。

 そういえば、重かったもんアイツ。

 なんだったら150kgくらいはあったよ。

 力士並。はっけよい!

 鷲掴みして投げたり、サッカーボールみたいに蹴飛ばしたりしたけど・・・今思えば、すっごい重量感あったわ!

 俺、めっちゃ強いからできたけど、普通なら足とか折れてるわ。

 アイツがベランダに降りてきたらそりゃズシンてなりますわ。どすこい!


 はい。わかってます。

 完全に、現実から全力で目を逸らしてる感がアリアリです俺。

 どうしよう?

 大切なことは、いつも、冷静さ。クールゲット。落ち着け、俺。

 何が、キタ?

 まじで。

 メ、メ、メ、メリー・・・な、わけないし・・・。


 俺は、迷った・・・。

 このまま玄関から外に逃げてやろうか・・・。

 それとも、自室に戻り、現状を把握するか・・・。

 いざとなったら、謎のなにかと対決か?


 いや無理だろ。

 日本のホラー(女幽霊)は肉弾戦無効の能力持ってるからな・・・。

 精神攻撃(お祓いとか)じゃないと効かねぇんだあいつら。

 ゾンビやチャッキーの方がほんとマシだよ。

 さっきも言ったけど最強は白鳳だよ。

 ゾンビより白鳳のほうが全然強いよ。はっけよい!

 チャッキーなら張り手一発だ。どすこい!

 

 俺は、ソロリソロリと、物音を立てず、玄関に移動し、壁に飾ってあるバットを手にとった。

 松◯秀喜のプロ入り前、星◯高校時代の直筆サインバットで、おそらくはとんでもなくレア物。

 父親の宝物ではあるが、武器、これしか思いつかなかったので仕方ない。

 折れたらゴメン、オヤジ様。

 せめて木刀があれば昔とった杵柄的なスキルが有るのだが、剣道の道具は残念かな、俺の部屋のクローゼットの奥に押し込められているから無理。


 そして、俺は迷った挙句、対面はせずにこっそりバルコニーを見に行くことにした。

 いや、だってエンカウントは怖いし・・・でも確認はしときたいじゃん。


 俺の部屋は、ドアを開けたら正面がバルコニーにそのまま出られるでかい窓があるので当然部屋の中も丸見え。

 カーテンあるけど普段から閉めてないから多分、向こうに見つかる。

 つーか、今、窓すら開けっ放しじゃん俺!

 セキュリティーはもはやウンコ。


 リビングも同様に丸見えだから却下。

 親の部屋とか書斎とか客間とかは廊下の左側なのでそもそもバルコニーに面しておらず、残る選択肢は、廊下の一番奥右手。

 そう、瑠璃の部屋。

 瑠璃の部屋は普通の窓なので、窓の下の壁に身を隠しつつバルコニーをスネーク可能だろう。


 俺は肩にかけていた逃走用スポーツバッグをゆっくりと下ろす。

 松井バットを中段に構え、音を立てずに、剣道のすり足で廊下を進んだ。

 自分の部屋の前を通る時、心臓がキュっとなるくらいの緊張感がキタ。

 心臓がドドドドドと動いているのがわかる。

 だってそのドア、いきなりバン!って開きそうじゃない?

 助けて松井! 我にゴジラの加護を!


 くそー。

 廊下が薄暗い。

 玄関で電気つけとくべきだった。

 明かりはダイニングキッチンとリビングへドアの擦りガラスの格子扉から漏れる光だけ。

 その二部屋を通過し、俺の部屋の前に来ると急にルクスが下がりやがる。地味に罠だ!(自分のせいだけど)

 俺は、フ・・・と小さく息を吐き、自室の前を慎重に、密やかに、進む。

 ドアからは決して目を切らなかった。

 物音しないけど、ズシンの正体はまだバルコニーに居るかな。

 もしかしたら既に俺の部屋の中に・・・。

 そんな考えが去来し、バットを握った手にさらにギュウと力を入れた。

 少し震えていた。


 俺はドアの前を通り過ぎた後、剣先バットだけどをドアに向けつつ、静かに反転し、今度はゆっくりと後退して瑠璃の部屋へと歩を進める。

 常にドアを警戒する。

 いつ飛び出してきても即応できるように、精神を集中する。

 玄関から廊下の奥までのたかだか十数メートルが、めちゃめちゃ長く感じた。

 この廊下はもしかしたら三十三間堂だったかも。


 ドアは、開かれなかった。

 後ずさりで瑠璃の部屋の前まで来た俺は、もう一度、フゥと息を吐き、その後、大きく、静かに息を吸い込んだ。

 血液に、渇望していた酸素がドッと送り込まれ、体内を巡る。

 俺、気が付かないうちに息止めてたみたい。くるしー。スーハー。

 息をして、もう一歩下がった・・・その時。


 ビギッ!


「ヒッ! んグ!」

 左足カカトに痛み!

 鋭い痛み!

 やばい!

 キタ!

 俺は叫び声を上げるのをどうにかこうにかやっとこ堪えた。

 まさか、まさか、こんなとこで攻撃がくるとは夢にも思わなかった。


 背後の廊下の床。

 裸足で白服の生気のない女が、うつ伏せに倒れ、異様に長い乱れ髪で、首をおかしい角度にねじらせながら俺のカカトに噛み付いている・・・。

 そんなイメージが脳裏に浮かんだ。

 いや、そのイメージを、脳裏に無理矢理浮かばされたというべきか。

 ありえないくらい鮮明なイメージだ。


 そのカカトに噛み付いた女は、俺が振り返った瞬間に、きちんと目が合うように、不自然な角度で常に俺の後頭部を凝視しているのだ。

 そしてその瞳には黒目が・・・ない。

 今振り返り、下を見れば、確実にそのイメージ通りになるという確信がある。

 痛い。

 おそらく、歯がカカトに食い込んでいる。

 でも、下を、そして背後を見ることができない。

 確かめるのが怖い。


「・・・・・・っ」

 俺は無言。

 無言だが冷静ではない。

 混乱している。

 恐怖でこの上なく混乱している。

 パニック。

 暴れたい。

 逃げ出したい。


 でも、動くことができない。


 さっきちょっとだけでも息しといてよかった。

 今、心臓はものすごい速さで動いているけど、ぜんぜん呼吸できる気がしない。

 脳に酸素が行かない。


「か・・・は・・・」

 かすれた声が出る。

 叫びたいのに、叫べない。

 どうなってんの?

 俺の足元、どうなってんのさ!

 確かめたい。

 動けない。

 見たい。

 いやいや絶対見ちゃ駄目だ。


 見ちゃ駄目・・・なのに、俺の目線は、だんだんと下に・・・。

 首の筋肉が硬直して抵抗しているのに、無理やり下を向きはじめる。

 骨がギギギときしむような感覚。

 心臓が強く打ちすぎて、血流が物凄く速い。


 ああ・・・。もうすぐ、もうすぐ足元が見えてしまう。

 これは、自分の意思なのか?

 それとも、足元の何かの意思によって動かされているのか・・・分からない。


 ダメだ。止まらない。止めようとしても。

 ああ、このままじゃ、目が、・・・合ってしまう。

 女の、異常なまでに充血し見開かれた目。

 眼球の中心にある、白目とほとんど色の違わない灰色の瞳孔。

 生きている者ではない瞳と、目が合ってしまう。

 そうなれば、俺は・・・。


 そして、ついに、俺は、自分の足を・・・見た。見てしまった。


 おお。

 ・・・おお、まいごっです。



 ハ イ !


 なんかね!

 木の切れっ端、踏んでましたーーーーーーっ!

 みなさまお騒がせしましたーーーーっ!

 マジすまんごっでーす!


 なんだ?「イメージが脳裏に無理矢理浮かばされた」とか。

 アホか!

 なんだったの?「確実にそのイメージ通りになるという確信」とか、もうね。

 バカか!


 ていうか、なんだよ!

 なんなんだよ!

 なんでこんなとこに木片が落ちてるわけ?

 意味わからないよ!


 しかもなんか一個じゃないじゃん。その辺にバラバラ落ちてんじゃん!

 なにこれ。マキビシ?

 忍者の罠?

 暗い廊下にマキビシとか卑怯なり!

 ざけんなよ!忍者め!

 海外でウケてるからって調子こいてんじゃねぇぞ!

 日本で全然売れてないくせに、ちょっとアニソン歌ったおかげで海外で謎の人気出ちゃってワールドツアーなんかやっちゃって、逆輸入アーティストとかいっちゃって、それでそこそこ客も入っちゃうバンドみたいな立ち位置なんだよ忍者なんてのは!


 そんなだから、うちのクラスにドイツから交換留学に来たマーセルは、最初の挨拶でいきなり


「コンニチワ。ワタシハ、マーセル・ビットナー、デス。

 ドウゾ、ヨロシクオネガイシマス~、カラノ~・・・

 カトン!ゴウカキュウノ、ジュツ!」


 とかやらかしちゃったんだよ!

 クラスの大半がポカンとしてたよ。

 俺は脳内でマーセルェ・・・って突っ込むのが精一杯だったよ。


 あぁ、アレ、多分、めっちゃ温めてたネタだったんだろうなぁ・・・。

 留学決まった日から、日本に行ったら、この忍者ネタで鉄板だ!と思って意気揚々と披露したんだろうなぁ。

 地元の友だちも、「イイヨソレ!ゼッタイ、ニンキモノニナレルヨ!」って太鼓判だったんだろうな。


 しかも、ちゃんとサスケに似てたからな。


 なのに、まさかの無反応だもんな。

 おれはマーセルのあの悲しそうな顔が忘れられんよ。

 出オチでコケた若手芸人のいたたまれなさを感じたよ。


 ドイツからの留学生なんてスーパー花形ポジションだったはずなのに、今じゃ、毎日、漫画研究会とかに入り浸って、ナ◯ト談義に夢中だよマーセル。

 楽しそうだからいいけどさ。

 あいつがゴメンっていう代わりに、「ユルセ、シンタロウ」っていうの、絶対わざとだよ。


 つ ま り 全 て 忍 者 が 悪 い よ !

 マ ー セ ル と 俺 に 謝 れ !


 ああもう!

 極度の緊張から開放されたのはいいが、怒りのやり場を仕方なく忍者に向けたところで、まったくもって虚しいなぁ、おい!

 そして、ふと左を、瑠璃の部屋のドアを見る。

 ドアの、顔の高さに、サッカーボールくらいの大穴が・・・。


 ・・・あ。

 この、散乱してる木の切れっ端。

 さっきポヨン蹴っ飛ばして瑠璃の部屋のドアぶち破った時の残骸だ・・・。


 んーと。

 つまり原因は俺か。

 なんつーか、意味もなくディスってゴメン。忍者ァァアアア。



 その4につづく


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