第一章 第5話 謎の電話に出た結果・・・ その2
◆ ◇ ◆
説明しよう!
『メリーさん』とは、怪談話というか有名な都市伝説である。
ある日、かかってきた電話にでると「私、メリーさん、今、〇〇にいるの」と言われて、ガチャって切れる。
その後、電話がかかってくる度に、「今、アナタの町にいるの」、「今、家の前にいるの」、「今、部屋の前にいるの」・・・。
そして、最後の電話は・・・「今、アナタの・・・後ろにいるの」・・・。
で、振り返ったら・・・ギャアアアアアアアアッ!っ的な、そんな話!
そういうのに相応しいんだよ!
公衆電話からの着信ってさぁ!
あーも―――――ッ!
どうしよどうしよ!
もうすぐ留守電に切り替わっちゃうよっ!
ええい!
ままよ!
ままよ!ってなんだよと思いつつ、俺は床を這っているニャル・・・スマホの着信ボタンを押した。
そして、ビビりながらも、努めてでかい声で
「はいっ! もしもしっ? 灰谷の携帯ですけどっ?」
若干、キレ気味に言った。
ちなみに、電話を手に取る勇気はないのでスマホは床においたままだ。
全裸で寝そべったまま、耳だけを少し近づけて、相手の言葉を待つ。
さぁ、答えろ。
お前は誰だ!?
ぶっちゃけ、リアルにメリーさんは勘弁な!
「・・・・・」
また無言ですか―――っ?
と思っていると、
「・・・シン・・・。・・・ケド・・・イキテル?」
ノイズ混じりの、囁くような小さい声が聞こえた。
ちょっと聞き取りにくいけど、子供?
・・・いや多分、女の声っ!
ていうか聞き取りにくかったけどたぶんシンタロウっていったよな?いま!
ぐあぁぁぁ!俺の名前、すでに知ってる―――ッ!?
ていうか「生きてる?」って?
生きてるってなんだ?
うん生きてるってなんなんだろうな?
哲学だな?
じゃねぇよ!
ていうか謎の女が、俺が生きてるか確認しに来やがった―――っ!
「だ、だっ、だっ、だっ誰だよっ! さっきから!」
ビビって、怒鳴る。
「・・・サッキ、カラ?」
「さっきからだろうが!」
「・・・・・」
そしてまた無言。
もう、ヤダ。
「答えろっ! テメーっ! ぶっ殺すぞ!」
なんかもう、相手をオバケかなんかだと決めつけているので、恐怖の裏返しの強気で殺人予告出ました。
「 ・ ・ ・ イ マ 、 ド コ ? 」
ヒィィイイイイイ!
いまどこキタ!
キマシタ!
メリーさんか?
メリーさんなのか!
「私、今、あなたの町にいるの」なのか!
さ っ き の 嘘 で す !
殺 す と か 嘘 で す ぅ ー っ !
「ご、ど、・・・だ・・・いま・・・。や、来んな」
もう、どもって、噛んで、どうにか絞り出した「来るな」。
最初に怒鳴った勢いはもう全くもってナッシング。
マイ・ブレイブ・イズ・雲散霧消!
「・・・・・」
また無言だよーっ。
俺は電話を切ることもできず、動くこともできない。
心臓が痛いほどに速い。
息が詰まる。
もう言葉も出ない。
「学校ニハ・・・イナイ・・・カラ。 ・・・家?」
ギャアアアアアアアア!
なんかもう、すでにバレてルゥゥゥゥゥウウウ。
居場所、即効でバレてるぅ―――っ!
町とか駅とかとばしてもう学校まで来てるぅ―――っ!
「ち・・・ちが・・・」
違う、そんな三文字すら、出てこない。
「血? 血ガ出テルノ?」
くぐもった小声だが、少し調子が強くなる。
出てません!
血なんか出てませんよ!
吸血鬼?
メリーさんて血吸っちゃう系?
吸わないでください!
出てるのはダラダラ流れてる油汗だけーっ!
「・・・イマカラ・・・行クネ?」
ガチャ、プー、プー、プー・・・・。
き、切れやがった。
いや、それよりも・・・。
いまから?
・・・なんでしたっけ?
く・・・来るんでしたっけ?
だ れ が ?
メ、メリーさんが?
俺は、ガバっと起き上がった。
乱暴にクローゼットを開け、スポーツバッグに服を適当に詰める。
ぎゅうぎゅう詰める。
服を詰めてる最中に、自分が全裸だということに気付き、ジーンズにTシャツに適当な上着を羽織る。
省略したけどパンツも穿いたよ? 安心してください。
あとは、財布。
机の引き出しの貯金箱の中の万札・・・三枚あった。
全部財布に入れる。
元々一枚 入っていたから持ち金四万。
これで最低限の逃げる準備はOK。
後は・・・なんか武器になりそうなもの、いるかな。
無理だな。勝てない。
おばけ相手じゃ魔法の武器、聖剣とか神剣とかじゃないとダメージ通るまい。
他には御札とか聖水とか・・・。
あ、塩。
塩はどうかな?
俺はダイニングキッチンに行き、食卓塩を手に取る。
・・・人工的に作られた塩化ナトリウムが効くかなぁ?
効かねぇ気がするなぁ。
塩とか酒とかって、神社とか寺とかで清められたりお祓いされてるから効くんじゃないのかなぁ。
俺は数瞬考えて、赤いキャップの食卓塩のパッケージを見つめる。
「くそっ!せめて伯方の塩なら・・・」
なんてつぶやいた時、ふと我にかえった。
自分の中の冷静さが目覚めた。
あれ?
おばけなんて、居るわけ、無くね?
なんだよ。
メリーさんて。
アホか?
アホだ。
ただのネットの都市伝説に何を踊らされてるんだ。
うん。いるわけねー。
とりあえず、謎の電話がたてつづけに二本あった。
ただ、それだけだ。
その謎の電話は、おそらくポヨンだ。
多分そうだ。
きっとそうだ。
そうであってくれ。
つまりだな・・・俺に蹴り出されたポヨンが、公園に落ちる。
テレパストーンなる通信手段は壊れていると言っていたが、どの程度壊れているかはわからんからな。
奴にはさっき俺のスマホを見せていたし、魔法のなんかなら番号とか知らなくても掛けられそうだし。
むしろ番号わかっててもおかしくない。
俺の名前も名乗る前から知ってたし。
アイツの知識元のレポート・・・謎だし。
で、ヤツがその魔法の通信手段で俺に電話をかける。
当然、謎のルーン文字が着信画面に表示されるわけだ。
で、一本目の電話が無言なのは、ヤツの通信機が通信はどうにかできるけどマイクが故障しているからで、なんかちょっと聞こえた吐息みたいなのは、多分俺が俺自身の息を聞き間違えたという結論で、多少強引だが、はい論破!
で、二本目の電話は、通信機がやはりつながらなかったと思ったポヨンが、公衆電話に行って(確か公園の入口付近にあった気がする)掛けてきた。
金は・・・落ちてたか、あの高性能そうな魔法のタブレットでハッキング的なことをした。
くぐもった女の声っぽく聞こえたのはポヨンがどこかに激突して顔面の形が変わったから。
ポヨンの声ガキっぽいし、電話だから女と勘違いしてしまった。
んで、言動が・・・謎だったのは・・・。
えーと・・・。
えーと・・・。
やばい。
調子よく(?)いってたのに・・・推理が・・・詰まってきたぞ。
んんん。
頑張れ俺!
ポヨンの言で、「今から行くね」は、いいとして・・・なんで、「今どこ」とか「生きてる」とか「学校に俺が居ない」とか言う?
んん~・・・。
た、例えば・・・蹴り出されたポヨンが反射的な怒りで、リンク解除の魔法をもう一度使ったとする。
しかし、すでに騎士契約は完了しているはずなので爆発四散ナムアミダブツにはならないはずだし、実際、爆発などは起きていないのだが、もし間違って変なことなったらどうしようやべーポヨ、勢いでやっちまったポヨ~、って感じで、恐る恐る小声で電話して俺の生死を確かめるって感じだとどう?
スジ通ってる?
ああ、ダメだ。それじゃあ、「生きてる?」とか「血が出てるの?」とか「今から行くね」、はどうにかこうにか必然性が得られるが、「今どこ?」と「学校には居ない」が説明つかねぇえええ。
あと、口調がやっぱりポヨンじゃねぇええ。
だって、ポヨンのくせにポヨって一回も言ってねぇもん!
じゃあ、ポヨンじゃないとして、誰?
本来であればロッカーにインされてて繋がらないはずの俺の電話に公衆電話から掛けてくる。
俺の名前を知っていて、且つその時点で俺の学校を既に捜索済みの、女・・・。
メリーさんでもなく・・・その他のオバケでもない。
でも今どき携帯を持ってない人間の女。
ええ、オバケなんてこの世にいませんからね! 絶対!
って考えると、結局、電話したのは~・・・。
えーとぉ・・・。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
やっぱいねぇよ!
誰だよ!
マジで!
もぉぉぉぉぉお!
ああああもおおお!
ハイ!結論!
犯人はポヨン!
不可解な言動は、なんていうか、ノリ!
ノリでやっちゃった系!
はい論破! 終了!
終 了 さ せ ろ ぉ ぉ ぉ お お お !
その3へ続く




