第一章 第5話 謎の電話に出た結果・・・ その1
◆ ◇ ◆
突然。
机の上のスマホがビビビビビと震えだした。
ビクッとする。
全裸で。
今、外に蹴り飛ばしたポヨンが掛けてきたのかと思って、警戒の目をスマホに向けた。
冷静に考えたらそんなことあろうはずもないのだが。
んん?
スマホはまだ鳴り止まない。
ということはメールじゃない。
ん? なんで電話? え? 誰?
だって、俺、フケたけど普通なら学校のはずだぜ?
そして今は授業中だ。
うちの学校は自由な校風を謳っているわけではないけど、あまり生徒に細かく干渉してこない。
公立で、それなりのレベルの進学校で、見た感じ不真面目な輩が居ないせいかもしれない。
みんな、「頭の良い真面目ちゃん」というわけではなく、わざわざ不良的行動やDQN的行動をとるのもめんどくさいし、普通にしていよう・・・という消極的真面目が多い気がする。
しかしそんなゆるい我が校においても厳しい対応をされているのがスマホはじめカメラ付き携帯電話だ。
数年前、盗撮騒ぎがあったんだよねー。
バカヤロウがクラスメイトのパンチラをな・・・。
真面目な我が校で盗撮とは、やれやれ全くもう・・・。
す げ ぇ 気 持 ち わ か る !
やらないけど!
かなみに殺されるからやらないけど!
もう! 毎日かなみのパンツもお風呂も覗きたいもん!
それを記録したいもん! REC! REC!
童貞にかぎらず男子諸君、みんなそうだよな! な! なぁ!
不特定多数を盗撮するのはともかく、好きな娘のパンツとお風呂は覗きたいよなぁ!
ていうか、好きじゃなくてもかわいけりゃ覗きたいよなぁ!
え?ちがう?
そんなことない?
あ、そう。ふーん。
・・・あ、おまえこないだスカイフィッシュのフライ食べたことあるって言ったやつだな?嘘乙!
ま、そんなこんなでケータイ&スマホの類は、授業中は教室背面のロッカーの中で管理されている。
休み時間中は着信やメールなどの確認はしていいが、ロッカーの前のみ。
余程のことがない限り、通話禁止、持ち歩き禁止という徹底ぶり。
だから!
俺のアドレス帳に入っているやつからは、俺に電話がかかってくるはずないんだよ。
出ないこと知ってるんだし。
現に今までかかってきたことない。
普段の俺なら別に気にも留めない。
相手もなにも気にしないで、ハイハイ~、みたいな感じで出ただろう。
でも、なんつーか、タイミングってあるよね。
メール、ツブヤイターとかリンクスとかのアプリの着音ならあまり気にしないけど、この特殊なタイミングで電話て・・・。
全 裸 な の に !
そういえば、以前、風呂上がりにかなみから電話きたことがあったが、全裸で話していたらなんか興奮した。
かなみ、かなみ!
俺、今ぶっきらぼうに明日の課題についてお前と話してるけど・・・実は裸なんだぜ!
ハァハァ! かなみぃーーっ・・・あ、まあ関係ないです。
へ、変態じゃねぇぞっ!
そんなわけで、俺はちょっとだけ緊張して、電話のかかってくるはずのないスマホの画面を見た。
「はあ?」
思わず声が出た。
画面の表示は見たことないグチャグチャした謎の文字。
見た感じではヨーロッパのルーン文字?に似ている。ゲーム知識ですが。
え?なにこれ。
何?文字化け?じゃないよなぁ・・・
あ、ピンときた。やはりポヨンか!
この文字、魔法のなんかだろ!
怒鳴りつけてやろうと思い、スマホを手に取る。
あ、でも、もしかして出た瞬間、爆発したりしますかね?
復 讐 で !
俺は、着信ボタンを押して、ちょっと耳から離して向こうの声を聴いた。
「・・・・・・」
アレ?
無言?
無言電話?
なにも聞こえない。
シンタロ許さんポヨ~、とかの怒号を予想してたんだが。
・・・しばらく待つも、なにも聞こえない。
え?ポヨンじゃないの?
じゃあ・・・ナニコレ?
俺は、ちょっと鼓動が速くなるのを感じながら
「だ、だ、誰? ・・・ですか?」と訊いた。
声はちょっと震えていた。
その途端、受話器の向こうからフゥ・・・と息をつくような音が聞こえ、ツー、ツー。
それきり、通話は途絶えた。
・・・え?なに?
何なんだ?
なんか、ちょっとコワイ。
このタイミングで謎の無言電話とかコワくない?
ちょっとホラーちっくじゃん?
スマホをポチポチ・・・。
うーん。着信履歴にはなにも残らず・・・か。
たしかに着信はあったのにね。
・・・。
・・・・。
・・・・・。
や っ ぱ り ホ ラ ー じ ゃ ん !
一時期流行った、携帯ジャンルホラーじゃん!
やだやだやだやだアレ。
ホントにイヤだ。
夜中に再放送とかするのやめて欲しい。
ちょっと見ちゃったら途中で消しても怖いんだよ!
なんかテレビ消した途端に、スマホに着信来そうじゃん!
結末見なくてもコワイから、仕方ないから最後まで見てなんとか解決してもらってから寝ようと思ったら、バッドエンドとかホントやめてーっ!
最後まで見ても見なくてもケータイ鳴る恐怖にガチガチ歯を鳴らしつつ寝るしかないじゃん!
日本のホラーはそこがイカン!
対処不能のバッドエンドは視聴者にキツイよ!
その点、アメちゃん(ハリウッドのこと)のホラーは良いよ。
だいたいしっかり実体があって、女子供でもストーリーの都合上、物理的な方法で勝つもの!
ギャーとかワァーとか叫んで怖がってるのは劇中の登場人物だけで、こっちは対岸の火事だもの。
全然怖くない!
攻撃方法も斧とか爪とかチェーンソーとか、物理的じゃん。もしくは病気とか。
ジェイソンと厚切りジェ○ソンだったら下手したら厚切りの方が勝つもん。
白鳳なら張り手だけで大概のやつに勝つもん!
日本のホラー映画はさぁ、見た後に、自分にも同じことが起こりそうなのもイヤだよなぁ。
ケータイとかビデオとか、ゲームとかさぁ。
あぁほら、こんなこと考えてたからまたこないだ見ちゃった『着信キタ』のいろいろ怖いシーン思い出してきちゃっ・・・
ビ ビ ビ ビ ビ !
「ギャーあぁあウワァッ!」
ビビりながら手に持っていたスマホがいきなりヴァイヴレイションしやがったので、直前の怖い妄想も手伝って、リアルに飛び上がり、全裸でふつうに絶叫した高校生男子は俺です。
スマホは投げ出され、床をスライドして壁にガツンとぶつかる。
床に振動が伝わり、ガタタタタタタタと這いまわるスマホ。
怖いっ!!!!
別に怖くない光景だけど怖い。
あのスマホ、生きて這いまわってんじゃないの?
這い寄る混沌なんじゃないの?
ていうか、なんだよ? なんだよ!
なんの嫌がらせだよ!
しかも、また、バイブ鳴りっぱなし。
メールじゃなくて、また電話だよ・・・。
おかしくない?
おかしいよ!
俺は、おそるおそる、四つん這いで・・・。
なんなら一メートル手前からは匍匐前進でスマホに近づく・・・。
とりあえず、全裸で匍匐前進はやめた方がいいよ?
痛いよ? 女には分からんだろうが。
どうにかスマホにたどり着く。
着信は、まだ鳴り止んでいない。
俺は匍匐の姿勢から顔をそっともたげ、画面を覗きこむ。
また、あの変な文字だったら嫌だなぁ・・・。
んん?
「公衆・・・電話ぁ?」
これまた見たことない画面表示・・・。
だけど、まぁ、これは公衆電話からの着信ってことだろな・・・。
うん。さっきのよりはマシ。
よかった。
これは公衆電話から、本来出るはずのない俺に、誰かがかけている電話です!
うん。
だ れ が ?
もーやだ。
マジやだ。
だれだよ。
今の御時世、ケータイ持ってない奴いねーよ。
俺だって中三までは持ってなかったけど、高校上がったらさすがに買ってもらったぞ。
瑠璃はなぜか小一の頃から防犯ブザー付きの子供用ケータイ持たせられてたぞ。
・・・なんか、性別を超えた親の愛の差を感じなくもない。
ちなみに瑠璃は同じものを未だに使っている。
110番とかと、家族しかかけられないんだよアレ。
瑠璃、よく文句言わないよな。
もしかして瑠璃、友達少ない?
妹は友達が少ない? はがない?
とりあえずどうする?
出る?
でない?
いや、出るべきだろなぁ。
出なかったら・・・なんか・・・来そうだし。
出ても・・・やっぱ来そうだよな・・。
メリーさんとか・・・。
メ・・・メリーさん・・・。
その2へつづく。




