第三章 第4話 ヴァレヴァレだお!で覚悟決めた結果・・・ その1
◇ ◆ ◇
「シンタロ・・・、出口が見えてきたポヨ~!」
ポーチの中でくつろいでいる俺達に、外から聞こえるポヨンの疲れた声。
かれこれ一時間は虹色グニャグニャの異次元空間を飛んでいる。
その空間の中をふわふわ漂いながら流れている紫の霧に沿ってフラフラと飛んでいる。
はじめは珍しくモニターを見ていた俺だが、そのうち飽きた。
下手をしたら死んでいたかもしれないのに、どこかお気楽なマーセルのせいで緊張感が持続できない。
だって、マーセルと勇斗がUNOをはじめちゃうし。仕方ないから俺も参加した。
「そういや勇斗、お前の言う通り、確かにヒヤヘビの追撃は来ないかったけど、なんで来ないってわかったん?」
マーセルのドローツーをリバースで返しながら聞く。
「ヒヤヘビの体は、こちらに出てきたばかりの怪人と違って、すでにこちらの世界とすでに同期してる。
飛べないヒヤヘビがここに落ちたら、多分どこかに落っこちちゃう」
マーセルのドローフォーをスキップで交わしつつ、説明する。
「それに、ヒヤヘビがこの空間に入れるなら、わざわざ対岸の川岸に潜伏したりしないと思う。
この異空間の中から状況を覗いておけばいい・・・」
「あー、なるほど」
頭いいね、勇斗。理性マン、見習え。この小学生を。
「でも・・・、ボクの姿を見られた・・・」平坦な声が少し沈む。
「お、おうそうだな・・・やっぱマズったかな?具体的に、どうまずい?」
「・・・・・・」
「・・・・・・シャイセ」
黙る悠斗。悪態をつきながら手札を増やすマーセル。
「・・・例えば、アジトを燃やした犯人がイナオイコール守護騎士だってのはバレた。
今頃、家を探しているかもしれない・・・」
「それはヤバイ」
「イナオは、シャドウや、ヒヤヘビの計画を何度も頓挫させた要注意人物。
バレたら・・・すぐに家族を狙うとおもう。
僕のママが・・・バレて、ウチが狙われたように・・・」
汗がダラダラ出てきた。
膝がカクカクしてきて、なんか顔は引きつりながら笑う。
瑠璃や母親が人質にされる?親父は・・・うん、まぁ。平気だろう。
「他にも・・・」
「ほ、他にも!?なに?」
もしかしてかなみが狙われるとか!?ナギちゃんとか、マコ姉とかも狙われたりする!?
学校はどう?会長とかウルエちゃんとかは?
「いや、イナオには関係ない。平気」
「いや、もう、家族狙われるだけで全然平気じゃないけどね!?」
と、とにかく、事態がやばいってことを松田さんタンたちに報告しないと・・・。
・・・。
・・・・。
・・・・・。
「出るポヨ~!いいポヨかぁ?」
「お、おう、いいぞ!
マーセル、いつでも隠れ身の術使えるように準備しといてな?」
「ヤー!ガッテンショウチのスケ!!」
誰だよそれ。
元ネタどれだよ。
この空間に入ってから、とりあえず一番流れの太い霧に沿って飛んできた。
その先に一番大きい出口があると踏んだからだ。
支流のような細い流れもあったが、松田さんタンたちはきっとでかい方に居るだろ?多分。
空間の割れ目はさっきの球場側のものより小さい。
トンネルを抜けるとそこは雪国だった。
じゃなかった。
線路だった。
線路がいっぱいあった。
「オー、電車がいっぱいでス!」
「どこだここは・・・ええと・・・どっかの車両基地か?。
おいポヨン。もうちょっと上昇。松田さんタンたちを探せ」
ポヨンをドローン扱い。
いや、ドローンのほうが安定飛行できるけどな。
ヨタヨタと上昇する。モニターにフィールドの全体が映る。
「うん。やっぱ中井町駅の車両基地だ」
中森の隣駅である中井町だった。
ウチから近い。マンション出て左に下ると中森駅で右に登っていくと中井町駅だからな。
「あそこに、人が集まってるポヨ~。
怪人は・・・居ないみたいポヨ」
車両基地は20本くらいの線路があって電車は八本くらい止まってた。
その出入り口、線路が収束しているところあたりに松田さんタンたちと十数人の守護騎士達がいる。
俺たちは電車の影に降り、怪人もいないし姿を隠す必要はないだろうってことで、俺とマーセルは普通にキュルンと飛び出る。
電車の影から見ると・・・なんか議論が紛糾してた。
守護騎士たちが松田さんタンに詰め寄りギャーギャー言ってる。
松田さんタンは困っている。
困ってる彼女を見過ごせるか?否!
「待て待て待てーい!!」
俺たちはかっこよく躍り出た!!
剣道頭に白ジャンに袴の男と黒赤黃のドイツ色の忍者を見た守護騎士たちは、二度見したあと、黙った。
泣く子も黙る異常な組み合わせ!それが俺たちさ!!
その2に続くさ!!




