第三章 第2話 においマンが最強になった結果・・・ その7
◇ ◆ ◇
マーセルは、胸の前で印を結ぶと元気に明るく「ニニンがニン!」と言った。
ドデンッ!とティンパニーを低く叩いたような効果音がして、ケムリがモクモク。
そしてその煙が晴れたところに現れたのは・・・。
忍者。いわゆる、そのままの忍者。
ただし、その忍者装束は・・・黒赤黄の三色ストライプだったのです。
そう、ドイツ国旗の色。
そして、ニヤリとキメ顔で決め台詞。
「グーテンモルゲン!!バームクーヘン!!
ドイツ忍者マッセルくん、只今参上だってばよ!!」
バチーンとポーズをとって、ドヤ顔のマーセル・・・。
・・・うん。
「 ボ ケ を 絞 れ ―――――――― っ !!! 」
俺は天井に向かって絶叫した!!
「だって、出だしのグーテンモルゲンとバームクーヘンは絶対エヴァだし!!!
忍者マッセルくんのイントネーションが忍者ハットリくんだし!!
かと思えば「だってばよ!」だし!!
チャンポンしすぎだろ!!」
「ハッハー、得意技は、か~み~か~ぜ~の~」
「まだ混ぜるか!!!スカートめくれねぇぞ!!!
とっちらかりすぎて未だにドイツ国旗柄に突っ込めてねぇわ!!」
はぁはぁと息をつく。
しかし、今の変身、見てわかった。
マジックとかじゃない。
物理的なにかでもなければ、ドイチュの科学力でもない。
確実に・・・異世界の魔法だ。
まさか、マジで・・・守護騎士だったとはな・・・。
こんなやつが・・・。
マーセルは更にアイマスクを取り出し目に当て、
「・・・・赤影ぇ~~~」
「・・・なんでもいいよ、もう。見たことないよ、赤影とか」
俺は、ツッコミ疲れて、無愛想にコーラを飲んだ。
小さなテーブルに向かい合わせに座っている学生服の俺と黒赤黄のドイツ忍者(アイマスク付き)。
違 和 感 が ス ゲ ェ !!
そして正座でそわそわしてるマーセル。
なに?俺にも変身しろってか?
確かにドイツ忍者の向かいにいるのが女装魔法少女だったら違和感は薄れるかもしれん。
六面すべてアニメ特撮アイテムに埋め尽くされたこの部屋で、違和感の原因は普通の学生服の俺だからな。
そうか、ここで俺もキューティールナーに変身か・・・。
ま ぁ 、 絶 対 イ ヤ で す け ど ?
ここまでいろんなものを振り切れる勇気は俺にはない!!
ズズと茶をすするようにコーラを飲み、ワクテカしているドイツ忍者に一言。
「いや、やらんけど・・・」
「ヴァルンヴァズ!!!?」
「な?え?なんて?」
「ナゼですかってことです!!!なーんでか!!」
「・・・たまにガチのドイツ語混ざる時以外お前をドイツ人と思えなくなってきた」
「どこからどう見てもドイチュでしょ!!ほら!」
「ドイツ国旗柄の忍者服着たドイツ人居ねぇよ!!」
「ハッハッハ―――ッ!!またまたご冗談を!」手をひらつかせて笑うマーセルだが、もはや元ネタがわからないですよ。
・・・。
・・・・。
・・・・・。
一息ついたマーセルは嬉しそうに自分が守護騎士になった事の顛末を話し始めた。
俺の場合は深夜にwebのポップアップ広告をクリックしてしまったらポヨンがモニターから飛び出てきたわけだけど・・・果たしてこいつは?
「いやー、アレは来日して、転入前日のことでシタ。
届いた制服や学生鞄の整理をしていたら・・・」
学生鞄の中からマスコットが出てきたか?
「見慣れない巻物が一本入ってまシタ」
「ん?巻物?」
「そう。忍者が持ってる秘伝の巻物でス!!」
「難しい日本語で書かれていたので一生懸命辞書引きましタヨ」
「はあ?騎士導者とか出てこなかったん?」
「キシドーシャ?」
「いや、いい。続けて?(騎士導者いないのか?そんなパターンも有るのか?)」
そういえばカルラさんの騎士導者も見たことないな。
松田さんタンは黒炎のネコで、ドラミさんはゴスロリの人形みたいなのだけど。
ハイカラちゃんとヒカリちゃんのもそういえば見たことない。
騎士導者を見せると身バレの危険性が高まるみたいだったからあまり見せなかったのかも。
東京タワーでのカルラさん、勇斗を騎士導者だと勘違いしてたけど、してやったりみたいな感じだったし・・・。
でもこいつはほんとに知らないみたいだけど。
「異世界を救うヴェヒタリッターになったと理解して、なんとかやり方をマスターして・・・。
初めて変身したときには感動しましタヨ!」
「そ、そうか・・・ベヒタリッタ?・・・とかはわからないが」
「これでようやく一般的日本の高校生の一員になれたと喜びまシタネ!!」
「 普 通 の 日 本 の 高 校 生 は !!
部 活 み た い に !!
異 世 界 行 っ て る わ け じ ゃ ね え か ら !! 」
「・・・・・?」
「 不 思 議 そ う な 顔 を す る な ―――― っ !!! 」
俺は再び天井に向かって突っ込んだ・・・。
その8に続んだ・・・。




