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俺がビキニアーマーでどうすんだ!?  作者: ダラリノコトダマ
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第一章 第3話 美少女騎士キューティールナーになった結果・・・その4

◇ ◆ ◇


 俺は、頃合いを見計らってきちんと両手でたい焼きの箱をポヨンの前に差し出す。

 そして正座で待つ。

 ポヨンはたい焼きに手を出さず、懐疑的な目でこちらを睨みつける。

 やはりやり過ぎた・・・ごめンゴ。


 俺は、わざとらしく咳ばらいをすると、前もって準備していた言葉を言う。

「コホン。

 え~、ポヨン君。

 昨日から、今の今まで、いろいろ大変悪かった。反省している」

 懐疑的な目が変わらず向けられている。


「えーと、俺も心を入れ替えた。

 やはり正義は大切だ。俺にこの世界とアルカトピアを救う手伝いをさせてくれ」

 ポヨンの頭の上にはてなマークが三つくらい出た気がした。体ごと首をかしげるポヨン。


「え?それは・・・どういう・・・。

 ハッ! また騙そうとしてるポヨね!」

 信用ないな、俺。


 当然だけどな!



 二、三歩引いて、警戒しながらこちらを観察しているポヨンに、俺は計算通りの決めゼリフを言った。

「ポヨン君。

 いや、ポヨン様。

 ・・・俺を騎士(シュヴァリエ)にしてくれ。

 もとい、してください」


 ジリジリとたい焼きまでの距離を詰めるポヨン。

 大丈夫だ。食え。

 もう意地悪はしない。しばらくは。


「・・・ほ、本心で言ってるポヨか?」

「本心だ! この目が嘘を言っているように見えるか!」


 も ち ろ ん 嘘 で す が !


 とりあえず眼力を込めて真剣な表情を装う。



「お前のために、伝説のってなんだよを使った、世界最高峰のたい焼き(160円)を六つも用意したんだ(セットで割引かれて900円+税)!

 このたい焼きのために、多くの人々が(店員とか業者とか)必死で力を合わせてくれた。俺も命かけるぜ!(嘘だぜ)」


 少し間があって、ポヨンの目からポロポロと大粒の涙がこぼれる。

「す・・・素晴らしいポヨ!

 やはりルミナスルナ様に間違いはないポヨ。

 お前はやはり高潔なる魂を持つ者ポヨ!

 仁と義を重んじ、礼と智を兼ね備え信に足る、強い正義の心を持つものポヨ!」


 褒めないでくれ、心苦しい。

 ていうかよく五常思想とか知ってるな。

 詳細な調査レポの着眼点、おかしいよ?


「う、うん。まぁ、仁義礼智信はいいから・・・食ってくれ。遠慮せずに」



「ポヨ~~~~!」と満面の笑顔で、箱にダイブし、頭から突っ込むポヨン。

 ポヨッ!ポヨ~ッ!と歓喜の声を上げながら、ほんとに幸せそうにたい焼きを頬張っていた。


「で、ところで、どうやったら、その、シュバリエ契約?ってのはできるんだ?

 契約書とかって書くのか?」

 たい焼きまるごと一つをほぼ口に入れたところで訊いてみる。

 返答を待つ。


 ほっぺたをリスのように膨らませ、モチャモチャと咀嚼しているポヨン。

 俺の問いに答えようとしたのか、ムニュムニュ動いていた頬がいったん止まる。

 なにか言うのかな?と思ったら、やっぱりモニュモニュ動き出した。

 うん、いいよ。食ってからで。



 暫し待つ。

 待ちながら、今後の不安要素を考える。

 こいつには仲間がいるようだ。

 なんとかストーンが壊れて連絡が取れないとかさっき言ってたし。


 予想だと、・・・というかセオリーというか、お約束というか、その仲間は、おそらくこいつと似たような色違いのボールだろう。

 ポヨンの頬の上というか目尻の外側辺りに小さいハートマークがあるところを見ると、きっとこの模様がスペードだったりダイヤだったりクラブだったりするのだ。

 で、色は赤と青と黄色と緑とかじゃないかな?


 そして、物語半ばから、追加で星マークか三日月マークのついた、黒か紫のヤツとかがテコ入れで出てきて、そいつとそいつのシュバリエはきっと能力値がすごく高いんだ。

 毎回、満月もしくは三日月を背景に逆光でポーズつけて登場してくるんだぜ。ベタだな。


 どうせ名前もみんなグリンとかプリンとかメロンとかそんな感じだろ。

 間違いないね。

 あれ。ちょっとまて?

 てことは他の騎士候補ってのも当然いるんだよな。


 引き受けなければ死ぬっていうパターンは一緒だろうから・・・ヘタしたら既に何人か爆死したのかもしれんが、なんだかんだで美少女ナントカになっている、もしくはこれからなる奴らがいるはずだ。

 ・・・一体どんな奴らなんだろう。


 普通に美少女ナンチャラになるべき候補をアニメ・マンガ的志向で考えたら、小学校高学年から中学の・・・二年、そこが限界だ。中三以降の可能性はかなり低い。


 しかし現実はさらにシビアだろう。

 最近の小学生女子はませているから、おそらく小三くらいで大半の子はアニメ・マンガは卒業し、コスメだネイルだなんだと雑誌社の思惑に乗せられてビッチ小学生ロードを歩み始めているのが実情・・・。

 とすると、やる気満々で正義の味方になろうなんて女子の年齢は、きっと・・・。


 ふと、先ほどのブレイブにあふれた園児の瞳が思い出される。

 うん。やっぱそんくらいの年齢になっちゃうよね。 


 頭の中で、この間駅ビルのロビーでやっていた日曜朝の女の子向け人気アニメのきぐるみショー。

 夢中で見入って「プリ◯ュア~!がんばれ~っ!」って叫んでいたくらいの子供たちが変身して頑張る画が想像された。


 うん。

 こりゃ、ヘタしたらアルカトピアの命運は幼児戦隊に託されるやもしれんぞ?

 はは、終わったな、アルカトピア。

 ・・・ざまぁ。


 俺にヤル気があって使命を果たそうとしても、そんな幼女集団に俺一人が混じっていたら、もはや完全に事案発生だ。


 おまわりさんこいつです!

 で、即通報タイーホ!

 間違いないですわ。


 なんて考えていたら、ポヨンがようやくたい焼きを食べ終えた。

 丸い体をさらに丸く膨らませ、プフーっと気持ちよさそうに息をついた。

 幸せそうな顔だ。


 なぜかムカつく俺がいた。



「えーと、じゃあ、騎士契約の儀式に入るポヨ。

 シンタロ、準備はいいポヨ?」

 口の周りに栗あんのついたポヨンがサッと両手を俺に向けた。


「ちょちょちょちょっとまて!

 いきなりか!

 準備って何だ!

 儀式って具体的にどういう手順でどういう感じになるんだ?

 説明!

 詳細な説明を求めるぞ、俺は!」


 俺は普通に慌てる。

 だって今しがた爆発四散しそうになった時と同じポーズじゃん!

 さっきは現代日本社会においてほぼ感じることのない死の危険を感じたぞ。

 トラウマだ。


「せつめい~? めんどいポヨね~。

 別に大したことじゃないからいらんと思うポヨよ?

 ん?なに汗かいてるポヨ?

 ・・・あ。ププ。

 もしかしてまた、爆発するかもって思ったポヨ?」


 こんのやろう。

 余裕かましやがって。

 今すぐその非常に蹴りやすそうな体躯に、大空翼ばりのキックをぶち込んでやりたいぜ。

 この契約が成立して、お前からリンク解除の権利が喪失した後は、ホントに覚えてろよ。


 今 食 っ た た い 焼 き 、

 全 部 吐 き 出 さ せ て や る か ら な ! 



 とりあえず、顔がビキビキ引きつるも、どうにか笑顔を浮かべ、

「い、いやいや、万が一、失敗したりしたら、困るし!

 そういうのはイクナイ!

 なんにせよ、オリエンテーションは必要だろう?

 むしろお前の立場としてそういう説明義務はないのか?

 こっちの世界は、いろいろ詳細な説明はなんにつけ必要だ。

 インフォームド・コンセプトっつってなぁ・・・」

 冷静さを失ったり焦ったりすると饒舌になってしまうわ、俺。くそう。


「っはぁ~、ハイハイ、仕方ないポヨね」

 両手を広げて肩をすくめる様なポーズ。

 うぉお、殴りてぇ。

 ていうか後で殴る。絶対!!!!


 その5へつづく


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