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俺がビキニアーマーでどうすんだ!?  作者: ダラリノコトダマ
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第一章 第15話 かなみを助けた?結果・・・ その3

◆ ◇ ◆ 


 霧のドームの中は、薄ぼんやりと明るい。


 そりゃ昼よりはだいぶ暗いが、ドーム全体が発光しているみたいで、外よりは少し明るい。



 目の前は『地層の回廊』が、いきなりズンと立っている。


 俺は迷いなく垂直跳びをして、回廊の縁に取り付き、登攀。

 ゴツゴツした岩のような壁面になっているので登るのは簡単だった。


 こんなカッコで、魔法もしょぼい盾しかないけど、身体能力的には人類最強のロッククライマーだからな。


 そして、今、気がついたが、俺、めっちゃ視力上がってるわ。

 サバンナとかで暮らす人とか、すごく夜目が効くというけど、まさにそれ。


 敵の視力ってどうなんだろう?

 ハトだし、鳥目じゃないのかな?

 だったらいいな。



 回廊上の通路にさっと伏せ、周りの音を探る・・・までもなかった。


 顔を少し上げ、回廊の上から覗き見ると、10メートルほど先の植え込みの向こうに、ポッポーの背中が見えた。


 三体いる。


 三匹並んで、目の前を木の根本を見下ろしている。

 なにか・・・いや、誰かが倒れている?


 その並んだポッポーの間から、サンダル。

 そして片方だけ脱げた・・・白い足が、見えた。



 ザ ワ リ ・ ・ ・ 。



 後頭部の毛が逆立つような感覚を覚えた。


 脳内が叫ぶ。


『 全 部 殺 せ ! 』 と。



 その感情を、脳内暴動を、唇を噛んで抑えこむ。


「・・・おい、ポヨン。確認だ。

 アナザーディメンジョンボールってのは、相手を何処かへ消し去る魔法のアイテムでいいんだよな?

 それとも、自分がどっかにワープできる系か?」


「え? ぶつけた相手を異空間に追い払うことができるアイテムポヨ。

 なんでシンタロがそのアイテムのことを知ってるポヨ?」


 こいつ、さっきの戦いで自分がこれを取りに行ったところから忘れてやがるな?


「いや、それだけ聞けば充分」

 俺はそれだけ言うと、



「 おらぁッ! こっちだ! 糞ハトがっ! 」



 と叫んで、回廊の上から飛び降りた。


 そのまま全力で駆け寄る。

 ハトが振り向く。



 おあつらえ向きに、ボールは三つ、敵は三体!


 失敗はしない。


 なぜなら、ビビって遠距離投擲なんか、しないから。


 接敵してやる。

 なんなら相手のパンチをかわして、懐に入ってボール押し付けてやる。



 俺は走りながら透明のケースからボールを取り出し、右手に握る。


 思ったより柔らかい。

 ソフトテニスのボールみたい。そふてにっ!



 それを見たポヨンが、「あっ! なんでそれを持ってるポヨッ!」と驚きの表情。


「敵はただのポッポーだポヨっ? そのアイテムはすごく・・・」。


 俺はそれに答えず、敵に詰め寄る。

 知ってるよ。

 高いんだろ?

 なんとか銀貨か金貨で何十枚とかなんだろ?

 だからなに?



 俺の正面にいるポッポーは、「ボヴォッ?」っと声を発し、俺を見る。

 少し驚いた表情に、見えた・・・気がした。鳥の表情とか、知らんけど。



「うぉらあぁァァァァァァあああっっっ!」



 相手の横っ腹に、七色に鈍く光っているボールを押し付ける。


 その瞬間、アナザーディメンジョンボールは水風船が割れるようにパシャンと弾け、虹色の光がバアッとほとばしった。



 メチャメチャ眩しい。

 色々な色のフラッシュをバシャバシャ焚かれているみたいだ。


 ポヨンがなにか叫んでいる。

 半泣きの顔。


 一瞬後、ボールを中心に渦巻きが発生し、光をキュルキュルと巻き込みながら吸い込んでいく。



 その光が消えた時、目の前のポッポーの姿はもう無かった。



 よし、イケる!


 即座に左を向く。


 二匹目のポッポーが「ボボッボォ!」と怒気をはらんだ顔(かどうか知らんけど)で両腕を振り上げる。

 丸太のような太い腕。

 ブゥンと振り降ろされるのをオリンピック級の反復横跳びで左に避ける。


 空振りした腕が地面を叩き、右足元にドゴォンと土煙を上げた。


 俺は、避けながら後ろに回り込み、取り出した二つ目のボールを、「二匹目ぇ・・・」と言いながら、前屈みに体勢の崩れたポッポーの背中にポンと乗せた。



 またもや激しい発光。

 光の渦巻き。

 ポッポーはギュルギュルと吸い込まれ、跡形もなく消える。


 ポヨンがずっと「やめるポヨ~ッ!」とか、言っていた。



 三つ目のボールを取り出す。

 

 ポヨンはポーチから出てきて、顔面蒼白で俺の肩を揺らす。



 三匹目のポッポーは一歩下がって手のひらをこちらに向けた。

 そこには小さめのハトが埋まっている。


 眼前に、銃口のように突きつけられる腕。



 だが、少しも怖くない。


 むしろ、ハイハイ、ハトミサイルね~。って感じ。


 つーかね、敵との距離が50センチ無いのに、撃つまでに時間の掛かる飛び道具とか、もうね、



「 馬 鹿 か よ ? 」



 俺は泣きわめくポヨンに肩を揺すられながら、突き出された敵の手のひらにボールをくっつける。

 まるで握手でもするように。


 俺の手に吸い込まれていくように、光とともに消え失せるポッポー。



 ポッポーの消えたあと、虚空を見つめるポヨンの顔からは血の気が失せていた。

 何か色薄いよ? 大丈夫? アゴ、ガクーンなってるけど。



 そして、俺の足元に、サンダルがひとつ転がっていた。



 その4につづいていた。

 


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