第一章 第12話 初めて魔法を使ってみた結果・・・ その8
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え? なにこれ?
アルカトピアのコインを出す魔法?
錬金術?
金の力に物を言わせる魔法?
いや、確かにこの世は金に支配されていると思うよ?
世界の財閥やフィクサーは裏ではあらゆる金融機関を支配し、各国のグローバル化を推進する陰で、その政府をも支配する。
金によって戦争を起こして儲け、金によって仲裁して儲け、引き換えに得る利権でまた儲け、また支配を強化する。
それが世の中の仕組みだ・・・ってマーセル言ってた。
でも500円じゃなぁ・・・。
マーセルどころか妹も買収できんぞ?
ま、マーセルは、コンビニの一番くじで当てた、アヤナミのストラップでイチコロだったけど。「ナンデモするよ! シンタロォ!」って言ってたけど。
つまりマーセルは500円でOK。
でもマーセルじゃなぁ。
所詮、侍マンガや忍者マンガにやたら詳しいだけのドイツ人だからなぁ。
日本語が読めるようになってアイツがしてることは、ドイツ語に翻訳されてない古い侍マンガを大人買いすることだしなぁ。
そして、このあいだ、『侍ジャイアンツ』を古本屋でタイトル買いして憤慨してた。
「シャイセッ! ワズダスイスッ! 侍が出てこないっ!」って言ってたのを見た。
アイツのドイツ語っぽいの、初めて聞いたよ。
ほんとにドイツ人だったんだ。
でも、侍ジャイアンツは野球漫画だしなぁ。
ただでさえトンデモ魔球炸裂野球なのに、刀振り回す侍まで登場させたら・・・それはそれで面白い。
バットの代わりに真剣振り回して大回転魔球とか分身魔球とか真っ二つに斬りそう!
ヒ ッ ト か ア ウ ト か 知 ら ん け ど !
うん。で、これなに?
「ポヨン? なんか出たけど・・・説明して?」
ポヨンはなんだか、「出来の悪い部下がまたやらかしたよ。いっつも俺が尻拭いだ、ハァ~」みたいな、呆れ顔で
「あ~、少し、いや、だいぶ小さいポヨが、それは『絶界の月盤』と言うものポヨ」
「ゼッカイノガチバン?」
でっかいのが一番?
「『ウサギの月盾』とも言うポヨ」
ウサギの?つきたて?
お月様でウサギさんたちがお餅をペッタンコー、ペッタンコー?
そして、手入れのタイミングを間違えたウサギの後頭部を、振り下ろされた杵が強打。
ギャアと言いながら臼に倒れこむウサギ。
そこに再び、容赦無い相方うさぎの杵が!
ペッタンコー。
や、やめrギャア!
ペッタンコー。
グギェエッ!
ペッタンコー。
ゥグ・・・。
ペッタンコー。
・・・。
ペッタンコー。・・・。ペッタンコー、ペッタン・・・・・・・・・。
そして、餅と混ざり合った真っ赤なそれを、皿に盛り付け・・・。
お待たせしました・・・。『ウサギのつきたて』で、ございます。
ご 注 文 は ウ サ ギ で し た よ ね ぇ え ぇ ぇ え ?
お 客 様 ァ ―――― ッ !
ヒィィィィイイイイイイッ!
かわいい系ほのぼの日常が、にわかにホラーにっ!
そんな放心ホラーな俺の目の前に浮く、光るコインをポヨンがコンコンと叩く。
「とりあえず、小さいけど、これは盾ポヨ」
「た、たて?
あ、これ盾なの? シールド?
つきたてって・・・月の盾か」
ウサギのお餅をつきたてとかじゃなかった。
とりあえず、いきなりビームとか隕石とかで東京壊滅とかの魔法じゃないわけね?
良かった。マジで。
「この月盾はどんな攻撃も魔法も一切効かない盾ポヨ。
こちらの世界にあるアイギスの盾やイージスの盾なんか目じゃないポヨ」
いきなりギリシャ神話持ち出してきた。
その盾、実在しませんよ?
「ポヨンのカタマルも相当防御力が強いポヨが、『ウサギの月盾』は次元が違うポヨ。
はっきり言って、本気で、何も効かないポヨ。この『ウサギの月盾』は!」
わかったから、モザイクが必要なほどグロいウサギ餅を思い出してしまうので、その呼び方ヤメてくれますかね?
あとおまえの魔法、『カタマル』なんだ。
もう、魔法っていうか、ポケモン的なにかだな。
「しかも、相手の攻撃を防げば、その強さに応じて力が溜まるポヨ」
「ほほう?」
「そして、シンタロが溜まった力を開放すると・・・」
わかったぞ!
相手にダメージを跳ね返すことができるんだな?
「なんと、相手を押し返すことができるポヨ!」
「なるほど・・・んん? 押し返す?
跳ね返すならわかるんだけど、押し返すって何?」
「押し返すことポヨ。
こう、グイーって」
そう言うと、ポヨンは俺の体を小さい手で押した。グイーって。
「・・・。
あのさ。
押されて、敵・・・死ぬ?」
ポヨンは首を傾げて
「シンタロは、押されたら死ぬポヨか?」
「いや、たぶん死なんけど?」
「なら敵も死なないと思うポヨ」
いやいやいやいや。
おかしいおかしい。
何かがね?
おかしいよ?
その9につづくよ?