第一章 第12話 初めて魔法を使ってみた結果・・・ その7
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ひどく気落ちする俺。
そのままベッドに仰向けに倒れる。
ポヨンは程なく元に戻り、
「さ、次は、シンタロの使う魔法の説明ポヨ。
ホントはさっきの戦いの前に説明しておけばよかったポヨが・・・」
え? 俺の?
魔法?
ムクリと、ゆっくり起き上がる。
「ポヨ~ン・・・」
「な? なにポヨ?
いや、確かに、戦いの前にちゃんと教えておくべきポヨが、さっきのは急だったし。
敵はD級だし、魔法なんか使わなくても勝てるかと・・・」
「いや、いいよ。うん。
済んだことだし・・・」
ああ。 顔がほころんでるのわかるわぁ。
いや、もうね? 何回も騙されてるというか、ぬか喜びしてますから、今回だっておんなじ感じの ガッカリになるのかもしれないって予感はビンビンしてますよ?
でも、やっぱ嬉しいよね。
松田さんタンが使った炎の魔法が思い出される。
いや、過度な期待はしてないけど?
ヘタしたらさっきのポヨンの魔法とまったく同じ魔法かも、とすら思う。
でも、話を聞く前くらいは、夢見たっていいじゃない?
ポヨンが俺の正面に改めて立つ。コホンと咳払いをする。
「シンタロ、キューティールナーは意味もなく『世界のヒロイン』の二つ名を戴いているわけじゃないポヨ・・・」
いつになく真剣な表情。
俺も思わず姿勢を正す。手は膝の上。
「普通の魔法は、適正のある魔法系の騎士や魔法使いが魔法の構造や詠唱を理解し、鍛錬すれば使えるものポヨ・・・。
でもシンタロの魔法はキューティールナーしか使えない、他のどんな高位の魔導師にも使えない、とても特殊な系統の魔法ポヨ」
「お、おう・・・」
なに? こんなナリで、がっかりしっぱなしの俺だったが、ついにすごい魔法使いの道が開けちゃうのか?
いやいや、どうせ、ぬか喜びだ。
間違いない。
学習しろ、俺。
「初代のキューティールナーは、文字通り、この魔法で世界を救って、『世界のヒロイン』になったポヨ」
「ほ、ほう・・・」
世界を救った魔法だと?
あれ?
それはすごくね?
さっきの松田さんタンが使った黒い炎の魔法もすごいと思ったけど、さすがに世界を救うほどじゃないよね?
もしかしてラスボスにトドメを刺すのは俺の超魔法のみとか、そういうヤツ?
まさか、ゲンキダマ的な感じ?
「シンタロ、ニヤニヤしないでちゃんと聞くポヨ」ポヨンが叱る。
「あ、ああ・・・」
あれ?ニヤニヤしてた?
バカやろ。喜んでねぇって!
ダイジョブ。どうせぬか喜び。知ってる。にやにや。
「第一次アルカトピア聖戦で、魔界マガガイアに世界のほぼすべてを侵食されたポヨ。
女神はじめ生き残った人々が最後の城塞都市に追い詰められた時、キューティールナーはこの魔法ひとつで三年間、敵軍の攻撃を防ぎきったポヨ。
そして、最後には、一千万ともいわれる、見渡すかぎりの敵軍の全てを・・・。
たった一人で!
だだ一度の、この魔法で!
アルカトピアの遥か外に追い返したポヨ・・・」
「へ、へえ・・・。
す・・・スゲェじゃん」
いや、もう、それはほんとにスゴイ。
その魔法を・・・俺が?
フフフ・・・フヒヒ・・・。
やぁー。まじかー・・・。
いやいや、喜ばない喜ばない。
どうせ、詠唱が難しくて俺には発音できないので使えませーん。とか、そういうオチだよ。
ニヤけてしまう口元を手で抑える。
「この魔法は詠唱も舞踊も呪歌も魔法陣も必要としないポヨ。
シンタロが、念じるだけで即、発現するポヨ」
使 え ち ゃ っ た !
俺でも簡単にできちゃう系だった!
念じるだけとか、お手軽でいいじゃな~い?
「さぁ、シンタロ、とりあえず、片手を前に出すポヨ」
「えっ? 今ここでやるのっ?」
「一回やっといた方がいいと思うポヨ」
「いや、でも・・・」
一千万の大軍を壊滅させるなんて、超トンデモ魔法だろ?
人間最終決戦兵器だろ?
この部屋どころか、東京23区、まるごと吹っ飛ぶレベルじゃないの?
「はい、早く手を出すポヨ!」
「え? あ? いやでも」
ポヨンが宙に浮いて寄ってきて、俺の手をグイと前に出させる。
「ハイ! 夜空に浮かぶ満月をイメージするポヨ!」
「ま、満月? いや、でも、今そんな魔法使うのはヤバイって!」
何? これ、月を落とす魔法なの?
メテオ・ストライクならぬムーン・ストライク? ムジュラなの?
いや、たしかにそれは敵全滅するけども。
つ ま り 、
こ こ で 撃 っ た ら 、
絶 対 駄 目 だ ろ っ !
でも、月って言われるともう、頭に月のイメージって出てきちゃうよね?
「ハイ! 次はその月の光が手の前で収束して光る円盤になるところをイメージするポヨ!」
「うわ!ばか!
そんなこと言われたら考えたくなくても想像しちゃうだろっ!
やばい、やばい!
だめだって!
おい、やめろ馬鹿!」
俺の手の前が薄ぼんやりと光る。
え? 発動し始めてるっ?
チョッ!
駄目駄目駄目駄目っ!
考えるなっ!
でも考えちゃうって!
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!
壊滅が来る!
カタストロフ魔法があ―――――っ!
嗚呼嗚呼嗚呼っ!
都 民 の 皆 さ ん ゴ メ ン ナ サ ――――― イ ッ !
目をギュッと瞑る。
ポコン!
なんかッ・・・。
あれ?
なんか・・・出た・・・。
冷や汗、あぶら汗ダラダラ。
ゼハーゼハーと息つく俺。
その、手の前に、黄色く輝く半透明の500円玉のような物が浮かんでいる。
「・・・ちっちゃ」とポヨンがつぶやいた。
その8につづやいた。