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/28/再び図書館へ

この辺りから、文字数がダダ下がりします。2000文字は切りませんが、読み応えがないかと思われます。申し訳ありません。


誤字脱字・その他ご指摘よろしくお願いします。

真和が勉強に集中できていない。

これはもうアレだ、私にメロメロということだ。

……と思いたいが、如何(いかん)せん真和の恋愛事情は把握できていないし、何のせいで集中できないのかはわからない。

けど、このままじゃ真和の点数が危ういため、朝から私は善後策を弄じた。


「真和!今日は図書館に行こう!」

「あぁ、行ってらっしゃい。ついでに俺の本も返してきてくれ」


机の前で漫画を読みふける真和は素っ気なく返した。


「真和も行くのっ!ほらっ、準備準備!」

「はいはい、わかったよ……」


パタンと漫画を閉じ、私の方を見る。

……?

なんでしょう?


「……普通、出て行くのお前じゃね?」

「着替えの光景を生見学させていただきます」

「ここにいる不審者誰か捕まえてくんねーかな……」

「真和のこと?警察呼ぶ?」

「呼びに行ってもいいから、とにかくさっさと出ろ」

「わかったよーんっ。へっへっへ、後で会いましょうぜ」

「おーう……」


私は真和の部屋を退室した。

なんだか真和の暴言が日に日にしょぼくなってる気がする。

前はもっと酷いこと言われてたけど、今じゃ適当さが出てきている。

これも配慮なのかなーと思いつつ、私も別室を借りて着物から着替えた。











午前のうちは日も傾いて風もあり、暑さも和らいでいた。

晴れの日は続き、太陽は燦々と光を降り注いでいる。

至る所で太陽光の反射する小路を抜け、俺たちは図書館に着いた。

荷物はスクールバック1つ、その他財布など諸々。

会話は少なく、館内に入った。


まずは前回借りた本の返却をした。

カムリルはもう読み終わっていたし、俺も少しくらいは読んだから返却した。


「……また休憩スペースか?」


俺たちは2人で館内案内図を見ながら、どこに行くか決める。

俺の提案に、カムリルも頷いた。


「真和には勉強して欲しいし、開放室でもいいんだけどね。私に聞きたいところとかあるかもしれないし、休憩スペースかな」

「休憩スペースなのに休めないんだよな」

「人間に休みなどないわっ。ほらほら、行こう」

「はいはい……」


休憩スペースは2階。

足を揃えて階段を登り、通路にぽつーんと置いてあるソファたちの前までやってきた。


「…………」

「……あ、真和!?」

「……よう」


休憩スペースには、先客がいた。

明葉に和子という先客が。

……そして今、カムリルは実体化をしている。


「え、その子は?」

「なっ!い、いつの間に真和に彼女が!?」


そして当然ツッコまれる。

目立つ髪の色だしな。

俺の横に居たら、当然だ。


「……どうするよ、カムリル?」

「私にお任せをっ」

「ああ、やだ」

「なぬっ!?」


ここで冗談でも言われたらたまったもんじゃない。

俺が一歩踏み出し、2人に隣の白い奴の説明をする。


「コイツはカムリルっつてな、まぁ見りゃわかるように外人だ。うちにホームステイしてんの」

「真和!」

「なんだよ」


カムリルが隣で拳に親指を立てる。


「冴えてるねっ」

「……あっそ」


冴えてる冴えてないはいいとして、2人の反応は薄かった。


「へー、外人さんか〜。真和に変なこととかされてない?」

「ぬははは、実は先日……」

「俺の着替えを覗きに来て鼻血が出ないから代わりにケチャップ使ったんだよな」

「という関係でございます」

「う、ううん」


和子の問いにカムリルに答えさせるわけにもいかず、俺が口を挟む。

言ったことは事実で、カムリルも認めると和子は顔を引きつらせた。


「なんだか面白そうだね。真和が居るんだから当然だろうけど」

「俺をお笑い担当だと思い込むんじゃねぇよ。というか髪切ったな、明葉」

「あ、うん。ちょっと自戒のためにね」

「はーん……」

「どう償ったものかわからないけど、取り敢えずボランティア部に入ったり、朝から町内清掃とかしてるんだ」

「そりゃ感心だ」


いつも目まで隠れていた髪は眉上まで上がっており、全体的に量が減っていた。

そうだな、俺も何かするべきだろう。

カムリルに気を取られて何かしようと気が回ってなかった。


「今度俺も混ぜてくれよ」

「うん……」

「暗い話ばっかしないの。あ、2人とも座って良いわよ」

「私は和子ちゃんの足の上に座る〜」

「え?あはは、どうぞ〜」


女子2人で席一つを埋め、俺と明葉が向かい合う形で座る。

テーブルの上には開かれたノートや教科書があった。

明日からテストだ、勉強していたのだろう。


「うわー、カムリルちゃんかるーい」

「ふっふっふ、人体改造の成果です」

「えっ!?」

「バカなこと言ってねーで勉強するぞ」

「はーいっ」


それから暫くは黙々と勉強して、カムリルは本を読んでいた。

中学の範囲では明葉に勝てなかったが、高校の授業は手を抜いてるのか、俺が2人に教えるところも多く、わからなければカムリルに訊いた。

その度カムリルがネタを振ってきて俺が適当に対処したり、明葉達がリア充ぶりを発揮したり、なんやかんや楽しく過ごした。


昼時になると、明葉と和子は帰って行った。

俺とカムリルは定食屋に駆け込み、それから再び図書館に戻る。


「…….うぐっ。私の胃がこの程度とは……」

「女性だから仕方ねーだろ」

「……もっと美味しいものを食べたいのに、クッ……」


と言いつつカムリルは唐揚げ定食とハンバーグ定食をたいらげているが、せっかく触れた現代、もっと食べたいのだろう。

また時間があれば、おいおい連れて行くとしよう。


「……って、また2人になったな」

「ね。でも、これでいいよーっ」


休憩スペースに隣り合って座る。

別に向かい合わせでもいいだろうに、また隣に、だ。


「……向かいに座れよ」

「え?と、隣じゃ嫌?」

「……勉強に集中できねぇよ」

「……ははーんっ」


カムリルはニヤリと笑った。

一体なんの電波をキャッチしたんだお前は。


「……嫌、とは言わないんだねっ。うふふふふっ」

「うふふじゃねぇよ。向こう行け」

「……うん。真和の勉強のため、向かい側に座りまーすっ」

「はいはい……」


カムリルは立ち上がり、向かい側に移動する。

しかし、今の“真和の勉強のため”、という言葉。

きっと、俺のために図書館に来たのだろう。

いらん気を回しやがって……。


「ありがとうな……」

「ん?なんて?」

「……なんでもねーよ」

「そう?うふふっ」


ニヤニヤと笑った顔を本で隠すカムリル。

俺もそれから先は、勉強に没頭することにした。











帰り際に、バイトの情報冊子を1冊もらって来た。


「アルバイトするの?」

「あぁ、多分な。このままだと金が足んなくなるだろうし、ぼちぼちやって行くつもりだ」

「え、私のせい?」

「俺がしたくてやってんだよ。気にすんな」

「はーいっ……」


勉強道具と数冊借りた本の入った鞄を持ち、カムリルとオレンジ色の空の下を歩く。

マンションの乱立した、人気(ひとけ)の少ない道だった。

景色の見えない壁に囲まれた道、俺とカムリルの2人が歩いていた。


「……ねぇ。手、繋がない?」


だからだろうか。

気恥ずかしいことでも、少しは許されると思った。

カムリルが言うと、“同調”のためかとも思えたその言葉。

でも、きっと、違う意味で言ったんだと思う。


「……別に、いいぞ」

「……うん」


歩みを止め、ゆっくりと手を握り合う。


「……男の人の手って、ちょっと硬いよね」

「生物学得意なんだろ?どういう原理なんだ?」

「あはは、知りたいなら教えるけど、今はそういう話したくないなー……」

「……それもそうだな」


和らいだ雰囲気なのに、男の手の話なんてされたくもない。

ゆっくりと、静かに歩いていたい。


「…………」

「…………」


同じ気持ちだったのだろうか、会話はなかった。

静かに、ただ手から伝わる温度を感じながらアスファルトの上を歩く。

ゆっくり、一歩ずつ。


「……ね、ぇ、真和?」

「……なんだ?」


顔も見ず、会話をする。

多分今、お互い見れた顔じゃないだろう。

きっと真っ赤だ。


「……もし、もし私が、ずっとーー」

「うん?」


言いとどまるカムリル。

ずっとーーその先を聞こうとカムリルの顔を見ると、彼女は別の方向を見上げていた。

血の気の引いた顔付きで、大きく口を開けて。

刹那ーー。


「危ないっ!!」


カムリルが俺を押し飛ばし、羽を広げて飛んで行った。

倒された俺は尻餅をつき、痛みを堪えながらもカムリルの飛んだ先を見る。


そこでは垂直落下する人を、カムリルが捕まえる瞬間だった。




続く

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