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/25/真相と妖精

神様との対談です。

この神様はこれから書くとしたら別作品に登場します。


誤字脱字・その他ご指摘よろしくお願いします。

私は魔法の国に生まれながら科学にばっかり興味を示して発明していた。

だからか、形なきものより形あるものを信じるのが信条、死後のことなど考えたこともなかった。

そもそも、死ぬということは意識がなくなるってこと。

また起きて、意識があるなら、それは“死”なのかしらーー?











(まぶた)が疼く。

途端にパチリと目は開き、キョロキョロと辺りを見渡す。

周りには、川。

否、私は川の上に横たわっている。

川を囲うように木々が並び、奥には山が。

空は白湯に濡れたような水色、太陽は出ていても眩しくなかった。


「……どこよ、ここは?」


私は頭を捻って少し考えた。

まさか噂に聞く三途の川というやつ?

いつか渡るんだろうけど、まさか渡る日が来るとは夢にも思わなんだね。


「ここは僕が作り出した空間さ」

「?」

「静かでいいだろう?」


突如聞こえた、女性のものと勘違いしそうな中性質を持った男の声。

それと同時に、1人の少年が空からゆっくりと降下してくる。


「初めまして、ミス。あぁ、自己紹介の前に、言語は共通かな?」

「ん?同じよ」

「それは良かった」


少年はニコリと微笑み、胸に手を当てて一礼した。


「初めまして、“自由の神”と名乗っている。僕も君を好きに呼ぶから、君も僕を好きに呼ぶといい」

「……はぁ、そう」


自由の神と名乗る少年は、神と呼ぶにはあまりにも人間的だった。

緑色のキャスケットに着ている法被(はっぴ)を紫色の帯で結び、行灯袴を履いている。

手にはヴァイオリン、首元には薄紫の羽衣を纏っている。

神の威光というか、神々しさがなかった。

それでも、現状では神なんだと思わざるを得ないけれども。


「……で、神様がなんの用なわけ?私は死んだんでしょ?」

「死んだよ。流石に生きてるわけがない」

「まぁね」


全身真っ赤に腫れ上がって、どう足掻いたって生きているわけがない。

当然っちゃ当然の話だ。


「しかし、君は自分の体が白くてもなにも驚かないんだね。僕の方が驚きだよ」

「ん?あぁ、ほんとだ。違和感ないから気付かなかったわ」


言われてみれば、体が白い。

水面に映る自分の体は赤く腫れておらず、白磁の肌が綺麗に映っていた。

おう、中々に美人なのではなかろうか。


「まぁ、元は君の体だしね」

「なんで白くなってるの?神様のサービス?」

「いやいや、死ぬ間際に君が作った薬を射たれていたんだ。効果が今になって出てきたんだろう」

「へー、ほーんっ」


じゃあ心臓に住む親玉が死んだのね。

感染してるっちゃそうだろうが、肌が白いって事は殆どが滅菌されてる証拠かな。

よきかなよきかな。


「で、世間話をするために私はここにいるの?神様って呑気ね」

「僕は“自由”だからね。暇さえ潰せればそれでいいのさ」

「ふーん。それじゃあ幾つか質問してもいいかしら?」

「どうぞどうぞ。今はわりかし暇なんだ。いくらでも受け付けるよ」


カラカラと笑い、快諾される。

本当に呑気な人だ。

ただ、“自由”って事は怒らせたらなにされるかわからない。

機嫌を損ねないようにしないと。


「じゃあまずは、私はなんでここにいるの?」

「ふむ……順を追って説明しようか。とある神に貸しがあってね、代わりに良質な君の命を僕がもらったんだ。命というのは、魂から体まで、その人間の起こした全事象を指すといって差し支えないよ」

「ふーん……」


ややこしい説明だけれど、だいたい把握した。

良い魂だから交換の道具に使われた、ね。

人間なんて、神様からしたらそんなもんか。


「交換したってことは、貴方は私の居た世界の神様じゃない、ってこと?」

「フン、そうだよ。僕があんな世界をつくるわけないじゃないか。面倒くさい」

「…………」


私の問いを、彼は肩を竦めて鼻で笑った。

面倒だからというあたり、自由らしい。


「何か向こうの神に聞きたいことがあるのかい?」

「ええ。私が必死こいて抗体作った病気の出処を訊きたかったのよね」

「あぁ、それなら僕も知ってるよ。ただ、知らない方が幸せだと思うがね」

「なによ、もったいぶって……」

「……まぁ君が知ろうと知るまいと僕には関係ないことだ。教えよう」


言って、彼は空を見上げた。


「飽きたんだってさ」

「……なにに?」

「作った世界に」

「…………?」


世界に飽きる。

一体なにを言っているんだろうか?


「生き物の発展が途絶え出すと、生き物を観察、研究、管理する身としては飽きるんだ。そこで、世界を壊す神も多い。神は保有できる世界が各々決まっているから消さないと次に進めないんだ。研究が滞るというのも億劫だからねだから、削除しようとしただけだよ」

「……そんだけの理由?」

「そう、さ。神は“時間”の神以外は時を扱ってはならない。代わりにいくらでも生物は増産できるという掟がある。だから再構成する神も少なくない。君の世界では病気が流行ったように、さり気なく滅ぼすんだよ」

「……そー」


怒り心頭、という風にも行かなかった。

どうせなに言ったってこの神が滅ぼそうとしたわけじゃないし、話のスケールもデカ過ぎて寧ろ呆れ返ってしまいそうだ。


「君の居た所では2人の神が運営していてね、1方は自ら地上に立って殲滅すると言ってたんだが、もう1方が生物の可能性に賭けたいと言ってね、あの時は立派だと思ったよ。そしてその可能性はあった。それが君というわけさ」

「……それは良いことなの?」

「勿論だとも。神がただの生き物達を蹂躙しようと思えば星なんて5分持つかわからない。前に龍神が人間が龍を虐めてるのにブチギレて2つ所有している星のうち1つを、一瞬で粉々にしていたし」

「……へー」


龍神様っていうのがどなたか知らないけれど、なんとも物騒な話だ。

なら殲滅よりも病気の方がマシだったのかもしれない。

救いようがあったから。


「あぁ、勿論全ての神が最低じゃない。いろいろとすっぽかして遊んでいる奴もいる。僕はその1人だし、生き物を滅ぼしたりはしないね」

「……生き物だの生物だのって、物がつくように言わないでもらえないかしら?」

「実際所有物と言って遜色ないんだけどね、僕は誰かを怒らすのが好きじゃないからこの辺で失敬しておこう。フフフ……」

「…………」


まったく不気味な神様だ。

しかし、話が通じるし、まだまともな方なのかもしれない。


「じゃあ3つ目。ドロップ病のーー感染性心的全身炎症症の特徴とか、教えてもらえる?」

「あれは対象に好意を数値的に1万以上持っていて、かつ触れると感染するんだ。潜伏期間は3日だが個体差はある。死ぬまでの時間もね。って、君の知ってることばかりか」

「……まーねっ。触れると感染ってのは知らなかったけど」


それに、今の質問はたいして意味もない。もうこの先、ドロップ病と付き合うことはないんだから。


「質問は以上かな?特に人生に未練もないだろうし」

「……そうね。以上よ 」

「ならこれから君がどうなるか。それについて説明しよう。あぁ、これ面倒臭いな」

「?」


なにもない所を掴む神の手にはいつの間にか左上にホチキス留めの書類を持っており、パラパラと眺めている。

なに?マニュアル?

“自由”とか言っておきながらマニュアルに従うの?

それはちょっと面白い。


「……はぁ、転生云々は億劫だ。管理も大変だし、あんなものは大魔神か魔王にやらせればいいのだ」


ポイっと書類を落とし、どぽんと川に沈む。

やっぱり“自由”は“自由”だったみたい。


「まぁ一般的に、君のような英雄まがいな人には天使か妖精をやってもらうんだ。天使は僕の補佐、詰まる所、とある世界の役人をやってもらう。今はかなり胸糞悪い天使ばっかりだからお勧めはしないな」

「自分からそれ言うのね」

「実際クズばかりなんだよ。で、もう1つの妖精は人々に干渉し、何かしらしてくれればいい。但し、妖精は人には見えないから留意する必要がある。こっちからは喋っても触っても気付かれないからね」

「? 喋れない、触れないならどう干渉すんのよ?」

「君には“同調”というスキルがあるだろう?もし君が妖精をやるならこれをもう少し強化してあげるし、“同調”で干渉できるようにしよう」

「……へー」


ならばもう迷うことはなかった。

ゲスなことをやっていくより、人と同調してあげることで何かができるだろうから。


「さらに特典があってね。妖精、天使は100年契約なんだが、そんなにやらせるのも癪らしく、さっきの紙には願いを3つ叶えるようにと書いてあった」

「……はーん、願いねぇ」


贅沢な話だと思う。

100年頑張る代わりに願いを3つ?

ふーん、でも……。


「願い事はないなぁ……」

「……そうかい。それは珍しい。1つ目から“妖精やらないから人間として生まれ変わらせてくれ”なんて言う奴もいるのに」

「……それ本当に英雄?」

「英雄だって善い事をしようと考えてる奴ばかりじゃないさ」

「……神様も難儀ねぇ」

「そうでもないさ。いろんな奴が居て面白いよ。英雄は個性が強い奴ばかりだからね」


個性が強い、アンタも中々だと思うけどもね。

あ、私も濃いか。


「……さて、まずは妖精か天使になるか訊こうか?」

「え?その2つ以外に選択肢あるの?」

「あるけど、死ぬ、という選択肢さ」

「あー、なら妖精がいいわ」


死ぬより妖精の方が良いに決まっている。

元から選択肢から外されてるのも頷けるわね。


「フフ、なら次に願いを訊こうか。無論、保留でも構わないよ?僕は暇だからいつでも聞いてあげよう」

「じゃあ全部保留で。まだこの先の世界がどんなか知らないのに叶えてもらえないわ」

「賢いね。さすが、と言うべきかな?」

「どーもっ」


さっきから行く先に人間がいる前提で話してるけど、どこにもそんな保証はない。

世界によっては私の振る舞いも変わるのだから、保留で当然だ。


「じゃあ幾つか確認を取る。取らないと後で呼び出す天使とか居て面倒だからね」

「あはは、確認は私も嬉しいな」

「そう……じゃあまず、“同調”の効力は診るだけじゃなく、授受や、対象にも共有できるようにした。例えば、自分の持つ嬉しいという感情を、対象にも嬉しいと思わせることができる。腕や足の交換も可能というわけだ」

「……便利ねぇ、それ」

「じゃないと干渉しても無意味だからね」


サービスが過ぎるとも思うが、サービスがあるに越したことはない。

有難く受け止めよう。


「まぁ干渉するしないは好きにしてくれて構わない。僕は束縛が嫌いだからね。で、行く世界は僕の作った人間が主に活動し、科学が発展した世界さ」

「科学?」

「嫌かい?」

「ううん。ふふっ、面白いわ……」


科学の発展した世界、なるほど面白そうだ。

俄然興味が湧いてきた。


「……君も楽しそうならそれでいいがね。説明は他に必要かな?あ、衣食住はないけど、どれも必要ないし、睡眠も不要だ。睡眠は取りたければとって、その夢で僕に会いたければ呼べばいい」

「うんうん、それだけ聞ければ十分よ。早く始めましょう?」

「心得た。フ、ではまた会おう、妖精さん」

「ええ。またね、神様」


別れを言う。

刹那、私の体は川の中に沈み、意識は心の奥深くに沈んで行った。




続く

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