表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

1話 買い物騒動/登校初日/転校生メイド服騒動/騎士メイド誕生

1

チェリッシュが空から落ちて来て3日が経とうしていた。

そのチェリッシュは、大地の家に住ませる事になった。

ゲームとかで見るような西洋風の武装をして、大剣を持つ女騎士だった。

(コスプレではなかった。断じて……)

性格は騎士にそぐわないような気の弱く、比較的に泣き虫な女の子のようだ。しかし、意外にも根はしっかりしてる方で真面目なときは、泣き虫ではなくなるようだ。

そして、家事はプロ級だ。 騎士と言うよりかは、メイドさんのようだ。

と言う訳で、女の子が家に来てしまった訳だ。


「チェリッシュ‼ 買い物行くぞ〜」

チェリッシュが、普段の騎士姿ではマズイと母が、服を貸したはいいがサイズが合わないらしいので、今日は買い物に行くことになった。

「あぅ! 待ってください! 今、準備します!」

二階にある俺の部屋からガシャガシャと音がする。

『もしかして… もしかするのか? 騎士の格好で来るんじゃないかねぇ… 』

大地の予想は的中していた。 階段からチェリッシュが、会った時に武装していた騎士姿でガシャガシャと金属音をさせながら降りて来た。

「お任せしましたぁ〜‼」

「なんで、騎士姿なんだ? 」

「お出かけだとおっしゃていたので、大地さんの警護も含めて… それに騎士である私の、正装なので…」

「なるほどな。 だが、ココは日本だ。 騎士のやることじゃないから母さんの服を来てていいんだよ。 ただ、お前の服を買うだけだから」

俺がそう告げると、チェリッシュは、謙遜して断る。

「いえいえ! そんな! 私みたいなのが、貴族の服なんて… 」

『いやいや… 貴族でもなんでもないんですが… むしろ、騎士の格好で居てもらう方が俺としては恥ずかしいのです! これは、家族一致での考えでもあるわけです!

そして何より、背中にマウントされている両手剣‼ 銃刀法に引っかかりますから‼

ってわけで、お願いですから、着替えてください!』

と叫ぶのを我慢して俺は、チェリッシュに、着替えるように言いきかせた。

「しかし… 私は… 」

「あ〜はいはい。 騎士の格好もかわいいけど! もっとかわいくなりたいだろ⁉ 」

「…… 」

ん? 黙り出した?

急に黙り込み、縮みこむようにチェリッシュの顔を俺が覗きこむ。

チェリッシュの顔が真っ赤になり暴れるように廊下を走り出した。

「私がかわいい? ほぇ? ほぇぇ」

どうやら、こういう類の物は苦手らしい。

『でも、 ちょっと面白いな』

と面白がり、クスクスと笑っているとキッチンの方から、母さんの叫び声と空気が裂けるような音がする。

「きゃああああっ! チェリッシュちゃん! ストップストォォォップ‼‼」

駆けつければ、キッチンは、背中にマウントされていた両手剣でズタズタに切り込まれている。

すくなくとも冷蔵庫が、使いものにならない。

その後… 母さんにメッチリ叱られ、チェリッシュは大泣きしてしまったが、全てが収まってから、夕飯の買い物を兼ねて、服の買い物へ行く事になった。


近くのデパート…

「すみません… あんなに驚いてしまって… 」

チェリッシュは、かなり反省しているようだ。泣きすぎて、声が少しおかしい。

「いや、こっちも悪い所はあったから、もう気にするな」

と優しく応えたが、落ち込むのも無理はない。

家の母の怒りは、この辺では有名だ。 別名に「鬼」と言われていて、不良グループを母の怒りの気迫だけで解散へ追い込んだとか… 様々な噂がある程なのだ…

しかし、普段は柔和で面倒見のいい最高の母だったりする。

デパートに着くなりチェリッシュは、服屋に夢中だった。

「なんでも良いんですよね? 何買っても良いんですよね!」

まるで、おもちゃ売り場に来て、 誕生日だからと、何買ってもいいと言われて興奮する子供のようだ。

『ふむ… さっきまでの暗い感じが吹っ飛んでくれて助かった。』

「好きに買っても良いが、上下、下着とかも含めて2着ずつ買っとけ‼ 足りない時は、追加で買いに行くからな。 それと俺は、店の前にあるベンチで待ってるから」

「わかりました。 じゃあ見てきます」

と俺は、チェリッシュに言った通りに店の前にあるベンチに座っていた。

「あれ? 大ちゃんじゃん! どうしたの?」

「ああ… 美香子か…」

峰 美香子… 簡単に言えば俺の幼馴染だ。 勝気で、勝負事が好きな銀髪のショートヘアーが似合うと言った具合の高校生だ。

一応、もう一度言っとこう。

『高校生なのだ』

なぜ二度言ったのか… それは、想像に任せるとしょう。

ちなみに、大ちゃんと言うのは俺のあだ名で、皆からはそう呼ばれている。

「どうしたんだ? 今日は? お使いか? 女ものの服の…」

ある意味違わないけど、ココは否定だ‼

「違いますよ! その…」

すると、チェリッシュが沢山の衣類を持って駆け寄ってくる。

「大地さ〜ん! 決めました。 これにします〜 」

「え?」

美香子が、驚き俺とチェリッシュを見る。

「あら? こちらのお子さんは?」

「ヤバッ‼」 と俺はチェリッシュの口を塞ごうとする。

「ヘェ〜 大ちゃん… 彼女出来てたんだぁ〜 綺麗だねぇ… ふ〜ん ……」

『ヤベぇよ コレ… 言っちゃならん事を‼ 』

いつもであれば美香子は、子供扱いと言った事をすれば叱る… と言うか怒って攻撃、主にブンブンと両手を振り回したパンチをして来るため、俺は一応チェリッシュを守るような感じでガード態勢にいる。

しかし、美香子の攻撃は、全く来なかった。 別に来るのを期待していたわけじゃないが、ある意味寂しい気もする。

それで、ガード態勢を解いて見れば、 ごく稀に見る美香子の子供モードで、チェリッシュに甘えていた。

「にゃお〜ん♡ ゴロゴロ」

「あらあら、 よしよ〜し」

『なんと⁉ チェリッシュに懐いてる⁉ しかも、美香子が、子供モード ネコバージョンだってぇぇぇ⁉』

説明しょう!

峰 美香子は、普段は子供扱いされるのを嫌がるのだが、ある条件を満たす者にだけは、子供モードと呼ばれる甘えん坊状態になる。 さらにバージョンによって甘え方が異なる。 今のネコの他に、犬などと様々な動物を主としたバージョンがある。

条件とは、胸のサイズだ! そのため、大きい程バージョンが変わるのだと言う。 ネコバージョンは、上位クラスの胸でなけば発動しないレアなバージョンでもある!

「きゃっ! くすぐったぁぁい」

「二人がじゃれあっているのを見てるのは微笑ましいが、状況がマズイな。 ちょっと見せ物になってきてるから!」

気づけば、客に見られている。

美香子ネコをチェリッシュから退けると、元の美香子に戻った。

「はっ‼ 私は何をしていたのだ⁉」

子供モードの記憶は覚えていないと言うのは、ほぼ、美香子が作った設定みたいな茶番だ。少なくとも大地はほとんど相手にしていない。

「美香子。そいや、今日は、見たいアニメの日じゃないか?」

「え? あっ‼ 超電磁ロボット Vの時間だ‼ じゃ!」

携帯の時刻を確認したら、美香子は走って行ってしまった。

「さっきの人は、何だったんでしょうか?」とチェリッシュは呆然としている。

「まぁ…俺の幼馴染だ。 気にしないでくれ。 さっ! チェリッシュ‼ 買い物済ますぞ!」

「はい‼」

買い物を全て済ませた帰り…

大地の両手には袋が三つ。 そのうちの2つは、チェリッシュの衣類で、後は食材などだ。

「あの…私がお持ちしますよ?」

さっきから俺を見ては、そればっかり言ってくるので、別に重かった訳ではないが、一つを持つよう頼んだ。

「あの… ありがとうございます。

貴族のような服をたくさん… 」

「別に、ドレスってわけじゃないんだしさ、気にすんなよ。 この家にいる間は、家族なんだからさ!」

何気なく、テレビドラマなんかで聞きそうなセリフを言うのは恥ずかしかったが、それを聞いた彼女は、どこか嬉しそうで、すごく可愛らしかった。


「ただいま〜 」

「ただいまですぅ〜 」

帰ってきたチェリッシュは、嬉しそうにして、俺の所にやって来た。

すると、チェリッシュは買ってきたばかりの服を着ていた。 見た感じには、メイド服だな。 メイド服と言うか、そういうイメージの私服だ。

「話をしなければと思っていたのですが、 よろしいでしょうか? 大地さん」

チェリッシュは騎士の防具を取り出し、一枚の紙を俺に手渡す。

「ん? これは?」

それを手に取り見ると、「転校手続き書」とある。

「で?学校は…っと」

確認すると、「私立櫻町高校」とある。

私立櫻町高校は、大地や美香子が通う学校だ。

「ええ‼‼⁉ 俺の学校かよ‼」


2

学校へ行く事になっていたセレナ。

「騎士のための士官学校へ行けるのですか?」

オイオイ… 士官学校って…

「普通の学校だぞ? 士官のため授業とか、騎士のための授業はないんだぞ? いいのか?」

すると、チェリッシュは騎士の授業がない事を再度確認してきた。大地が それを肯定した途端、彼女は大喜びした。

「え? 騎士講習がない‼ やったぁ!」

まるで、泳げない子がプール中止を期待していて、それが現実になったと言った感じのノリだ。 それほど、騎士としては半人前だったのだろうか?

ちなみに後で聞いた事だが、騎士講習というのは騎士学校のみで行われる特別授業の一つなのだそうだ。 特に騎士として必要な振る舞い、剣術などを学ぶのだそうだ。

「あっ! でも、わたひ(私)は騎士としては強かったんですよ! 」

ほぅ、嘘だな。 何となくで、チェリッシュの嘘が分かりやすいと分かってきた。気づけば、チェリッシュの顔は真っ赤なトマトのように赤くなっている。

最近になり、大地はチェリッシュが嘘を吐いている事が分かるようになったのだ。 嘘を吐いている時は、チェリッシュの口調がさっきのように少しおかしくなる。「私」が、「わたひ」になったりする程度だったが、顔に出るタイプのようで、苦手だと言うのが顔からして分かりやすかったりする。 偶に、緊張しすぎると、同じ状態になる。

「ほらっ‼」

と大地はチェリッシュの前の学校の成績表らしきものを見せられた。 成績表には、通常科目の国数理社英の五教科に、剣術、騎士道と言った騎士科目とがある。 騎士科目は、要は実技科目みたいなものらしいが、筆記試験もあるのだそうだ。

チェリッシュは、全てにおいて10位以内の成績だ。

「結構いい成績だな。 感心、感心。 ん?」

少しだけ折られてる部分があり、そこを見るため開いてみる。コメントが書かれていた。

『最近、騎士道の実技実習が休みがちです。筆記は成績優秀ですので、騎士科目の実技の方も頑張りましょう。 』

筆記は優秀。 しかし、騎士としては向いていないと…とまぁそう言うことのようだ。

「見せちゃったモノは仕方ないのです! 私は本当は騎士にはなりたくないんです」

「いや、自分で見せたじゃん。で、 何がしたいんだ?」

「私は… そう! 医療騎士(ヒーラー)になりたいのです!」

医療騎士(ヒーラー)とは、騎士とはあるが、名の通り医者に近い力を使う騎士の事を言うらしい。

「その医療騎士ってのになりたいんだったら、それなりの努力しろよ‼ って言うか騎士みたいな事は、全くやらないから医療騎士にはなれないんじゃないか?」

そう言うと、結構真面目な顔で答えた。

「医療騎士は先ほども言いましたが、騎士であり騎士ではない者です。 普通の医者と基本は変わりません。私自身、騎士の実力は条件を満たしていますし…」

「ヘェ〜 じゃあ後は、医学を学ぶためと言う事か?」

「はい」

騎士の条件については、だいたい予想つくのでツッコまない方向にするとして、チェリッシュは俺の学校に編入する事が確定した。

「制服とかは?」

大地の学校の制服は、男女共にブレザーだ。 用意されて無ければ当然、登校どころではない。

「大丈夫ですよ? 私には、この騎士の制服が…」

「いや… だめだろ…」


次の日…

「良かったわ〜。 私の姉ちゃんのお古が丁度あって〜」

「急にすまないな。 チェリッシュのために制服貰っちゃって」

「気にするなぁ。 処理に困っていたから都合良かったよ」

美香子に連絡取り、お姉さんのお古を借りる事にしたのだ。

美香子のお姉さんは、俺達の学校のOBで、今は大学のため東京にいる。 そのため、借りる所か貰ってしまったのだ。

「どうだ? ウチの制服のブレザーも中々似合うモノだな。」

「着れなくは無いんですけど、胸の辺りが、ちょっと苦しいですね」

まぁ…美香子の姉ちゃんは、胸はある方だが、アイツ程ではないからな!

「その文句は、私への挑戦を意味するのかい?」

「え?」

美香子は、チェリッシュの胸を鷲掴みし、堪能し始める。

俺は、面倒なので学校行く準備をする事にした。

「チェリッシュ、さっさと準備しろよ〜」

「はぁ〜い」

「助けてぇ〜‼ きゃあ! いやっ‼」

美香子のご機嫌な返事と、チェリッシュの救いを求める声を無視して、大地は飯を食べに行く。


朝食を、食べていると2人が部屋からダイニングへやって来た。

「大地様、似合いますか?」

そう言ってチェリッシュは、舞台で見るお姫様のような動作で、自身を回転してみせる。

「ん? ああ、似合うよ。」

チェリッシュは、嬉しそうにしてお礼を言い、食事を取る。 そんなに褒められたのが嬉しかったのかいつもよりご飯を多く食べていた。

「沢山食べるのは、良い事だが… 時間を気にしてくれないか?」


結果的に、チェリッシュの初登校が遅刻になるのであった。


チェリッシュの初登校は、走っての登校になった。 もちろん、大地や美香子の登校も同じく走っている。

道中、所々にウチの制服の奴らが歩いているのだが、男子共の注目の的になっていた。

「何やら、チェリッシュの事を見ているのは男子共だな 」

「じゃないですかね? 私は、転校生を自慢しますがね‼ 」

と美香子は言って、チェリッシュに抱きつく。

「わきゃあ‼ やめてくださいよぉ」

「おお! 胸よ! ワヒヒ…」

チェリッシュの胸を、体全体で弄ぼうと、喜ぶ美香子。チェリッシュは、今にも泣きそうだが

「ちょっ…やめてください!」

美香子は、チェリッシュの制服の中に手を入れようとするが、俺がゲンコツして止める。

「流石に辞めなさい‼」

羨ましいとか思わなかった訳じゃないがマズイとは思った。

そのため、俺は美香子をチェリッシュから離す。

「相変わらず、如何わしいわねぇ」

「あっ‼ 月極さん! おっはー‼」

「ええ。おっはー…」

慎○ママ⁈ 意外に古ネタだな。

真面目な月極さんは、俺らのクラスメイトでクラス委員なのだが…

どうも、最近は美香子に振り回されているのだそうだ。

「全く‼ 貴方は全く‼」

全くが口癖なのだろう。美香子に関しては、付き合い上、注意しても意味ないと判断しているらしい。 そのため、いつも「全く」と言って済ませてしまうらしい。

「あら?貴女… どなた?」

「ああ。 彼女は…」

「私は、大地様の騎士。チェリッシュと申します。 以後、お見知り置きを」

チェリッシュが西洋の貴族のような挨拶を

「有名人ですかぁ? 芸能人みたいな?」

「有名人=芸能人は、正しい様で間違っているぞ」

と言うと、美香子が俺におんぶを要求してきた。

カバン類を、柊さんに預けて勝手俺の背中に乗っかってきた。

「降りろよ‼」と美香子に言うが、嫌がられる。

「…….すみません。 あの子の事お願いできますか?」

と月極さんが言い終える前に、俺は、「ああ」と反射的に返事をしてしまった。

「へへ〜。 おんぶぅ〜」

お子様体型である事から、年下をおんぶしてる気分になる。一応、言っとくと同い年だ。

月極さんは、気づけば先に行ってしまった。

仕方ないので、学校までおんぶして行く。

その様を、何気なくチェリッシュが羨ましそうに見ていたが、二人分おんぶなんて出来ないので、無視する。

俺らが学校に着く頃には、ヘナヘナだった。

「チェリッシュ、お前は職員室に行け」

「はい… でしたら、場所を教えて下さい」

「ああ。 大丈夫だ。 着いて行ってやるから」

「あっ! ありがとうございます」

俺とチェリッシュを見届けた美香子は、自分のクラスに行く。

職員室へ連れて行くついでにウチの学校について説明しておこう。

うちの学校は、正式名称を、私立

櫻町高校(略称櫻高)。

実家からかなり近い高校だ。

それが俺が学校を選んだ理由だったりするのだが…

学力は県では下の方だが、それなりに国立大学進学者もいる。 その理由としての殆どは、部活にある。 部活には力を注ぎ、実力派多めの学校となっている。


「あっ。 見えましたよ」

チェリッシュが、職員室を見つけた。 その隣の部屋が校長室だ。

「失礼しゃあ〜す」

俺が砕けた感じで、職員室へ入る。

「しっ…失礼します…」

「あら?チェリッシュさんかしら? 」

迎えてくれたのはウチの担任。 小林先生だ。

小林先生は、生徒や先生のどちらからも人気のある先生だ。

とても、グラマーな美人でもあり、ロングな黒髪が綺麗な事で有名でもある。

「はい。 ところで…」

「あっ。 自己紹介がまだだったわね。 私は、小林 朋美です。 よろしくね、チェリッシュさん」

「はい」

二人のやり取りを見ていた俺に気づいたかのような動作をして、

「何してんの?」

「何してるのって言われてもなぁ… 」

ただ、チェリッシュを職員室へ連れて行くだけだから、わざわざ待ってなくても良いんだが…

「さて、大地君。 先生は、チェリッシュさんと行くから先に行っていいわよ」

「あ〜い」

べらぼうな返事をして、自分のクラスへ戻ろうと先生とチェリッシュに背を向けた。

「ま…待ってください。大地さん‼」

とチェリッシュが俺を呼び止める。

「ん?」

「私も行きます‼ 私は、貴方の騎士ですから‼」

「あんた……慕われてんなぁ〜」

先生が、ニヤニヤして俺を見る。

「いやいや… そんな事…」

とまぁ謙遜しておいたが、何故かチェリッシュは異様に俺を立ててくる。

「大地様は、素晴らしいのです! お友達のために、おんぶをしてあげたり、私の様な部下に服を買ってくれたりーー」

俺は、チェリッシュを見ているとどうも歯がゆい気分になるみたいだ。

どうしてかと聞かれたら、こうだからと言えるわけじゃないのだが、自分を慕ってくれるなんて状態は、無いに等しい。 それが故に、変に考えてしまっているのだと思う。

などと考えていると、チェリッシュの長話が終わり、朝のホームルームのチャイムが鳴る。

「遅刻じゃねぇか!」

「ほら‼ 急いで教室に行く‼」

と先生は、俺を追い出す。

「私も……」

チェリッシュも、俺に着いて行こうとしたが、先生に防げられた。

「貴方には、用が残ってますよ」

「はい?」

先生は、不気味な声をあげながらコソコソとチェリッシュに何かを言っていた。

何かヤバイ事にならなきゃ良いんだけどな……


3

大地が、教室に着いて、席を探すと美香子の隣だった。

「ふむ……先生の陰謀だろうか」

なぜ、俺がそんな事を言うのかと言うと、単に美香子とは高校入学時から、席が一緒なのだ。

「まただな‼」

などと言って美香子は、嬉しそうだ。この辺では、俺が美香子の保護者だと思われているらしい。

「そうだな。 まただな」

「おーっ‼」

と右腕を勢い良く挙げた。

「ほぉ〜ら‼ 席につく‼」

すると、小林先生が教室に来た。

先生は、普段はあんなだが、こういう場ではしっかりしている。

「今日から転校生がやってきました。皆さん仲良くしてあげてください」

先生の、「来て」という掛け声と共にドアが開いた。

ドアから、チェリッシュが入ってくる。俺以外の男子共が、喜び狂う。

やかましいため、大地は廊下を見て他人の振りをする。

(同類とは思われたくないからな)

しかし、チェリッシュは、そんな事を気にもかけずに、

「チェリッシュ・柊です。この度、大地様の手下としてやってまいりました。皆様、よろしくお願いします」

ざわつく男子共。ヒソヒソ話を始める女子共。それらをスルーして、空を見る事に懸命になる。吹くのを我慢さえもする。

なぜ、そんな事に懸命になるのかは、今にわかる。

「大地様? お願いしますね?」

ここでスルーは出来ない。そう思い、声のした方へと顔を動かすとそこには、制服の姿をしたチェリッシュの姿が……。

しかし、制服の姿のチェリッシュではなかった。

どうやら、小林先生のせいのようだ。いや、先生しかいないな。

そこには、メイド服のチェリッシュがいた。

チェリッシュは、メイド服に着慣れているくらい似合っていた。

「なっ⁇」

「似合ってますか?大地様?」

「なんで? どーして…⁇」

俺は、驚愕のあまりテンパってしまった。

「あははっ! 遊びのつもりで、メイド服に着替えさせたのさ‼」

と言った先生の笑い声が高らかになり、そのままホームルームが始まる。そして、大地の返事が疎かになってしまった。

さらにいえば、チェリッシュは今日の授業を、全部メイド服で過ごしてしまったのだ。

先生のイタズラにしては、学校ではメイド服とまで、皆に奉仕しろなど、本物のメイドになるような指導をしていた。

我慢ならず、俺は小林先生の元へづかづかと向かう。

初めに、職員室へ向かったがいなかった。

自分の教室にいた友人に、先生の事を聞いてみた。

「小林先生なら、転校生とどっか行ったぞ?」

転校生という事は、チェリッシュか‼ そういえば、チェリッシュの姿は授業後から見ていない。

どこへ行ったのかと友人に聞いてみたが、場所は分からなかった。

こういったことは、以前にもあった。その時の被害者は、美香子だった。

美香子は、一種のトラウマになっていた。

そうなる前にと、俺はチェリッシュを助けなければならない。そう考える前には、教室を飛び出していた。

「おっ……おい⁉」

友人は、急に飛び出して行った俺に驚いた。俺を落ち着かせようと友人は、声を掛けたが全く聞こえなかった。 正確には、聞かなかったが正しい。

美香子の時は、近くの商店街内にあるコスプレ衣装の専門店にいた。

「今回もそこにいるのかぁ!」

そう叫びながら、大地はコスプレ衣装専門店を目指して走って行った。


「ここって服屋さん? あれ?」

「そう! ここはコスプレ専門店よぉ〜」

答えたのは、小林先生だった。

「あっ……」

俺が、二人が居るであろうと予想したコスプレ専門店に着いたのと同時に、店の入り口から先生が現れたのだ。

「センセぇ‼ チェリッシュを…」

「あの子なら、中で浮かれてるわよ」

先生は、以前かなり嬉しそうに話していた。 自己紹介の時に、コスプレが趣味だと言っていたが、美香子曰く「正確には、コスプレさせるのが趣味」だそうだ。

それにより、迷惑しているケースが多いためあまり、先生の趣味には触れたがらない生徒も多いという。

「センセぇ‼ チェリッシュは…」

「あの子なら、中で浮かれてるわよ」

そう言って、白けながら俺をあとにした。

店の中へ入ってみると、ブレザー姿の女性騎士がキャッキャッと叫びつつコスプレの衣装を見ていた。

「可愛いですぅ〜! あっ! こっちのも…… あっちのも〜」

なんとも言い難いが、コスプレが好きなのか? もしかしたら、騎士ってのは嘘でコスプレだったんじゃないか? とか考えたが、コスプレのために本物の刀を使うのもどうかと思った。まず、銃刀法に引っかかっちまう。

だから、そう言う奴の相手はしかねんな。黙って見届けるのが一番だ……

「何してるんだ?」と大地は、なぜか明らかにコスプレ衣装を見て楽しんでいるチェリッシュに聞いていた。

「衣装を見ていますよ? これが最近の流行りの軍事用服なのでしょ? 防御面に不安が見えますが……」

コスプレ衣装=騎士の服という訳のわからない考えをしていた。

こんな事をするのは、小林美奈子、あの先生しかいない。

仕方ないから、現実を教えようとする。 そうでなければ、世間的な厨二病になってしまう。それだけは、阻止したいと思ったからだ。

その場にあった刀をチェリッシュに向ける。

「何をするのですか? 私に刀を向けるなんて……」

と言いながらチェリッシュは、俺に注意する。

「見ればわかるさ」と俺は、刀をチェリッシュの頭上から振り下ろす。

「ヒャッ‼」

斬られると思ったのか、しゃがみ込み「やめて!」を連呼していた。

刀をコツンと軽く振り下ろしたのだが、チェリッシュは今にも泣きそうだった。

「すっ…すまん。 泣かすつもりはないから、でも偽もんだってわかっただろ?」

「酷いです」

「ごめん」

発言が危ないのもあり、こうせざるを得ないのだと言いたかったがどういう訳か言えなかった。

「ここは、全部実際のものじゃないんだよ。だから、痛くも無いし、死にもしないんだ。分かってくれないか?」

「え? 実際の本物では?」

まだ、困惑している。

「だから……」

再度、説明しようとしたのだが、俺の後ろから声がした。

「なぁにぃ? デートかなぁ?」

美香子だ。

「いや……、チェリッシュが厨二だと思われないよう注意をーー」

美香子は、俺が言い終えるのを無視してチェリッシュに話しかけて来た。

「何か買うのぉ?」

「はい、小林先生に優れた武器や武装がある店があると聞いてここに来たのですが、どうも先生がセレクトするものは防御力が薄いので……」

「なるほど….」

と言いながら大地を見てGOODサインをするが、意味が分からん。

「何がわかったんだ? 俺には、何がなるほどなのかが分からないんだけど……」

すると、美香子は目の前にあったメイド服を取り出した。

「こっちの方がいいじゃん!」

…………

なるほどな……

美香子とチェリッシュが気づけば二人で衣装選びをしている。

チェリッシュは、騎士関連のものを主に見ていたが美香子の衣装にも興味を持ったらしく、今じゃ二人でメイド服コーナーを見ていた。

「まぁ……いいや」

別に、女子高生がメイド服を買うなんて普通な事だと思うし……

嫌がってなきゃいいんじゃねぇかなぁ……

と言うか、美香子の過去が原因でコスプレが苦手だったんじゃ…

と聞いてみたら、

「コスプレ? 好きだよ? メイド服だけなら‼」

と返ってきた。

「メイド服限定か……」

と呟きながら俺は、二人の買い物のシーンを見つめていた。

「朝に着たメイド服、結構可愛かったですよねぇ」

「あれもいいけど、手頃で可愛いのは、あれもいいよ」

と美香子が指差したメイド服は、黒と白をベースとしていて見た目はエプロンドレスのようだが、そうとは言い難いもので、ひらひらしたスカートは短めで、ガーターベルト付きの代物だった。

「へぇ」と見ていると、俺の目の前にはチェリッシュが立っていたので、声を掛けてみる。

「あれ、どうですかねぇ……。 私的には着てみたいのですが……」

「着てみたら?試着できるみたいだから」

と試着室を指差すと、チェリッシュは、恥ずかしそうにしてそのメイド服を取り出して着替えに行った。

「どうなるんだろね。 ウフフっ‼」

「さ……さぁな」

と大地達は、チェリッシュが着替えるのを待つのだった。


4

大地の携帯端末が音を鳴らしながら振動する。

チェリッシュがメイド服を試着しているので、見てみたいとは、思ったから無視して待つのも手だったかもしれないが、端末がうるさかったので見る。

と同時に店からも出た。

母さんからの電話だった。

「もしもし……」

母さんのテンションが高いのが分かった。何やらテンパっているようだった。

『あのさっ! メモをメールで送るから買い物してきてくれない?』

「金ない」

『チェリッシュちゃんに少し、多めに6千円持たせてるから』

「もしかすれば、メイド服に消えるかもしれないぞ、それでもいいか?」

実際、今試着しているメイド服がいくらか分からない。

だが、以外に高そうな感じだった。

『そう。 メイド服が欲しいのなら家にあるわよ、私のお古だけど』

「母さんのお古って……、昔メイド喫茶にでも働いてたのか?」

と聞いてみると、若い頃に少しの期間だがメイド喫茶のメイドさんをやっていたのだという。その際、譲り受けたのだそうだ。

『ってわけだからよろしく‼』

母さんとの電話を切り、二人の元へ戻るがチェリッシュと美香子はいなかった。

「ん? 黙って行ったから探してんのか?」

と美香子に電話を掛ける。

『もしもし…』

美香子の声に張りがない。

「何があった?」

『チェリッシュちゃんがね、メイド服を買ったんだけど、そのまま別の出入口から出ちゃったから……』

ようは、どっちかが迷子ということか?

などと考えていると、後ろからポンポンと肩を叩かれる。

振り向くと、ブレザーを着たチェリッシュの姿があった。

「チェリッシュは、俺のとこにいるぞ」

『え!?』

俺は、あいつが驚く仕草が想像できた。

「もしかしなくても、迷子になったのは、お前の方か……美香子」

俺は、溜息を漏らしてしまう。

『そ……そうだけど? ぐ…すん』

声の感じからして今にも泣きそうだ。

一度、電話を耳から話し、チェリッシュに「美香子を見なかったか?」と聞いたが、

「え? 美香子さんは、さっきまで私の後ろに……」

と本当にチェリッシュは、美香子がいなくなっていたことに気づいていなかった様だ。

「今どこだ? 」

と美香子に聞くと、『といざらす』と答えた。

その店は、某おもちゃ店にネーミングは似ているが女性服専門店だ。なんでも、着せ替え人形で遊んでいるような空間をモデルしているらしい。

コスプレ店の隣がその女性服専門店なのだ。

「なんで、あっちに行った?」

一応、言っておくとすれば俺は、チェリッシュと一緒にいるなら大丈夫だろうと思ったのだ。

だから、黙って外へ言って電話に出たのだ。

だが、それが裏目に出てしまった。

『だって〜、大地だって黙ってどっか行ったじゃんか!』

その様は、まさに言い訳を言う典型的な子供発言だった。

「とにかく、ここに来い。コスプレ店の前にいるから」

そう言って、俺は電話を切った。

急にいなくなった子供を心配する親の気持ちが分かった気がした大地だった。

電話が掛かって何も言わずにいなくなった俺も悪い訳だが……

そこは、仕方ないかもしれん。

まぁ怒らないでやろう。

そう思った。

五分もしないうちに、美香子はやってきた。

「いたぁ〜。 怖かったよぉん! お兄ちゃ〜ん」

何やらシチュエーションを実行しているかのように抱きついてきた。

「お兄ちゃんって……」

赤の他人から見れば、ブラコンの妹が抱きついていると言ったシーンな訳で、ロリコン属性の野郎共とかは嬉しがるかもしれない。

しかし、残念ながら俺にはそう言う属性はない。

「いいから、退け」

と両手で、軽い美香子を掴むと彼女から漂う甘い香りがして上に、「きゃん」などと可愛らしい声をあげられたが、無視して俺の身体から退けた。

「よし、買い物して帰るぞ。チェリッシュ、後いくら残ってる?」

チェリッシュは、財布の中を確認してみると、札の姿が見当たらなかった。

これは、マズイんじゃないかや?

そう感じた俺は、再度財布の中を見る。

俺の財布には、415円しかなかった。

ちなみに、チェリッシュは500円玉しかない。

合わせて915円しかないわけで……

買い物の品物は、次の通りだった。


件名 買い物メモ。

人参

玉ねぎ

肉(400円以下)

ジャガイモ

全部、なるべく大きいのを2袋ずつね。


俺の家は、チェリッシュを含め5人家族であるから、母さんは何かと2袋以上買うようにしていた。

「900円じゃさすがに、難しいかもしれないな。 いくらしたりんだ? それ」

とチェリッシュが買った服のレシートを見せて貰った。

レシートには5500円とあり、品物的には安かった。

昼食費などを含めてのお小遣いだったのだが、服に使ってしまったらしい。

まずい。 とにかくマズイ。

どうにかしなければ、ならない!

と大地は、言い聞かせて考える。

もし買えなかったなんて事になれば、母さんは機嫌が悪くなるのは当然な訳で、以前話したようにあの人は起こるとかなり恐ろしい。

だから、何がなんでも買わなければならない!

そう感じた大地は、携帯端末で何やらいじっている美香子に不本意ではあるが借金する事にした。

「美香子さん! 頼んます‼」

「え〜、金貸すのぉ〜」

「人に金を貸すのはあんまり好感的ではないのは分かりますが、どうにかしてこの危機的状況を救うと思って1000円恵んでください‼」

「じゃあ、何でもしてくれるかい?」

「します! 限界はありますが、できる限りで‼」

すると、美香子はニヤリと笑った。その時、背中に悪寒がした。

しかし、母さんに叱られるよりはマシだ!

「ふふふ……。いい話聞いちゃったぞぉ‼ じゃあ、貸したげる」

危機的状況を脱出できたが、別の意味でマズイ方向へ来てしまったのではないか?

と思う大地だった。

その様子を見ていたチェリッシュは、俺を心配そうに見て俺に「大丈夫ですか?」と聞いて来る。

「貴女のせいで、こんな事になったんだ!」

と言いたかったが、さすがに可哀想だったので、「大丈夫‼」とからげんきを出す。

「よかった」

チェリッシュは、魅力ありの満面の笑みを俺にプレゼントしてくれた。

「で? 何をするんだ?」

美香子から1000円札を受け取り、何をするのかを聞いてみる。

「ん〜ど〜しょうかなぁ」

美香子は、楽しそうだ。

「じゃあ、今度の日曜日! 3人で遊ぶの‼ 全部、大地の驕りで‼」

「何ぃぃぃ‼‼‼」

「いいのですかぁ! 嬉しい!」

したがって、今度の日曜日に全て俺の驕りで3人で遊びに行く事が決定してしまった。


とまぁ、二人の勢いで賑わいながら(?)買い物を済ませた事で、母さんに叱られると言う地獄から救われた。

家に帰って来たら、チェリッシュが慌ただしい感じで自分の部屋へ戻って行った。

コスプレ衣装を買ったわけだが、俺は、何を買ったか正直分かっていない。

なぜなら、俺が電話している間に全てを済ませてしまっていたからだ。

買ったものを見せて貰うべきだったのだろうが、見るのはよしておこうと思ったまでだ。

いつ着るのかとか期待はしないが、ちょっと見てみたいと思った。

そんな事を考えながら、ベッドに寝ころんでいた。

そんな時だった。

コンコン….…

誰かがドアを叩いてきた。

「はい」

「失礼します」

チェリッシュの声だ。

「どうした? かしこまって」

起き上がってドアを見ると、そこには、普段とは異なる可愛らしい服を着た騎士の姿があった。

「おまっ……、メイド服?」

「はい。 今日から私は、大地様専属の騎士兼メイドをさせてもらう事になりました。改めてよろしくお願いします」

とコスプレのメイド衣装を上手く着込ませ、深々と一礼するチェリッシュ。

衣装自体は、コスプレ店で見たあのメイド服だった。

さらに言うなら、彼女の背中に大きな剣がマウントされていた。

俺自身、びっくりのあまり言葉が出ないでいる中発したのは、「騎士兼メイドか……」と言う呟きだった。

「はい‼ 騎士メイドです!」

と満面の笑みをまたも見せてくれた。

こうして、大地の家にメイド服を着込む騎士……、騎士メイドが誕生した。

とりあえず、貯めてたのをまとめてみました。


とりあえず、大地君が騎士の主になっちゃた理由とかより、キャラクターがどんなのかを分かってもらえたら嬉しいかな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ