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よもぎ

作者: 春野 雪子

喉を鳴らしてくれた、そのときは。



仕事も私生活もなんだかぱっとしない日が続いている。

友人は皆それぞれ家庭を持ったり、すてきな恋人と仲むつまじく過ごしたりと華やいでいるのに、私にはそんな話は全くないしおまけに仕事でミスを連発している。

そんなとき私は野良猫になってぼーっと、日がな一日ひなたぼっこをしていたいと心底思う。

そんでたまに気が向いたら愛想振りまして見るのだ。

幼稚園から帰る途中のあの女の子や、いつも3時頃に手をつないで散歩しているおじいさんとおばあさん。そして、ギター持ったお兄さんに。





会社の近くにある月極駐車場には、そんな私の理想そのものな生活をしている猫がいる。

彼女の名前は『よもぎ』。みんなそう呼んでいる。

こいつがまたとびきりふてこい顔付きなのにみんなのアイドルよろしくのどを鳴らしてみたりお腹を見せてこびを振りまくのだ。私には懐かないくせに。

かと思えば、かまってくる人につれない態度をとって見たり「そんなえさじゃ私はなびかなくってよ」といった風にふんっ、とそっぽ向いたりする。私にはいつもそんな態度だけれど。

なんで私には懐かないの。早く懐いてよ。そう思いながら、今日もふんっ、とよもぎは私に鼻を鳴らすのだ。


そんなよもぎをいつも決まって夜の八時にもみくちゃにしている人。ギターのお兄さん。

私の、好きな人だ。

日がな一日ぼーっとしてたいからなんて建前。ホントは、お兄さんにかまってもらえてるよもぎがうらやましい。

私もよもぎみたいにお兄さんになでてほしい。くしゃくしゃの笑顔で、話しかけてほしい。

夜の八時に会社を出て、よもぎとお兄さんの戯れを見る。それがいまの私の唯一の癒やし。

そんな私をみて、よもぎは今日もふんっ、と鼻を鳴らす。

なんだこの野郎。私だって猫だったらきっと今頃もみくちゃよ。

でも私は猫にはなれない。

だから私は決意した。

よもぎが私に鼻じゃなくて喉を鳴らしてくれたら、そのときは、勇気を出すと。

よもぎ、覚悟してろよ。あんたのこと、これでもかって位かまってやるから。

歩き出した私の後ろで、またふんっ、と鼻を鳴らす音が聞こえた。





読んでいただき、ありがとうございました。

初めて書きました。とっても稚拙でお恥ずかしいですが、これから少しずつ投稿していけたらなと思います。


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