東京都内の路地裏から
初投稿、初作品です。お見苦しい点しかありませんがよろしくお願いします。
例えば、何度も脱獄する世紀の大泥棒。
例えば、剣と魔法で戦うファンタジー。
例えば、異世界へ飛ばされてそっちの世界で幸せに過ごす物語。
例えば、空飛ぶUMA。
例えば、例えば、人の血を吸い尽くす吸血鬼。
そんな現実とはかけ離れた何かに遭遇した現実的な大学生のワタクシ、山田恵一 の物語です。
なんて、間抜けでのんきなナレーションが頭に響くほど気が動転していた。
東京都内のとある路地裏にて、目の前にいる男性二人の内一人が、全身の血を抜かれて一瞬でミイラになった場面を目撃した。
「逃げなくちゃ」頭で必死に命令を出すが体がついて来ない。
目を見開き、冷や汗が滝のように流れる。
「逃げろ」頭でなく本能が警鐘を鳴らす。
もつれそうになる足を動かそうとした瞬間、あいつはゆっくり振り返った。
身長は俺より高そうだ、170㎝後半だろうか?年は30代ぐらいか?
無精ひげに少しこけた頬。髪型はオールバック。大きなリュックサックを背負っている。
ニヤついてるのは獲物を見つけたからか?
冷静になる頭とは反対に、体からは力が抜けて尻餅をついてしまった。
男はニヤニヤしながらゆっくりと近寄ってくる。
「もうだめだ」そんな思考が頭を支配し目を瞑る。
頭痛がひどくて講義を早退し、病院までの近道にと路地裏を通った自分の運を呪う。
幻聴も聴こえてきた。甲高くて鋭いうるさい音である。
「やめてくれ、死ぬ間際くらい静かな方がいい」と諦観した思考とともに目の前の男を見ると、どうやら幻聴ではないようだと悟った。
男も耳を塞ぎ呻きながらうずくまっている。
確かにうるさいが、そこまでではないだろう?と考えていると、男の体が透け始めた。
呆然とする俺をよそに男がだんだん透けていき、ついには目の前から消え、甲高い音もいつの間にか止んでいた。
色々ありすぎて唖然としていたが、取り敢えず、震える手で携帯を取り出し、警察を呼ぶことにした。