魔法戦士アルの誕生 #1-7
三週間目は、武術の授業だった。が、武術とは言っても剣術が主だった。
さすがに、毎日ずっと体を動かすのはつらく、アルもガントもレヴァンも、夕食後はすぐベッドで寝る日々が続いた。
今回は、覚えることなどほとんどないのだが、剣術というのは素質によるものが大きい。同じことを教えてもすぐに出来る人と、すぐには出来ない人とに、はっきり分かれてしまうものなのだ。これは魔術においてもそうなのだが、どちらにおいても、努力で素質の差を穴埋めするのは難しい。
幸い、アルには素質があるらしい。何日目だったか覚えていない。多分、二日目だったと思う。こんな出来事があった。
「お前、アルって名だったよな?」
剣の素振りという単純作業をいかにもつまらなさそうにするアルに、武術担当のパーシヴァルはまるでアルと同年代の生徒が話しかけるような声で尋ねた。それに対して、アルはぶっきらぼうに、
「いかにも、オレはアル・フォルティスだが。何か?」
と答えた。
パーシヴァルはやれやれといった感じで、少し呆れながらも忠告はした。
「お前な、もっと目上の人には丁寧な言葉で話せよ。まあ、オレも昔そうだったから、人のこと言えた身じゃないけどな。あー、お前の担任は……誰だったけ?」
「オレは知らん。そういうことにしてくれ」
アルは答えたくなかった。未だにこの間のイグリアによる説教を引きずっているのである。それに、たった今、イグリアが言ったのと同じように「目上に人には丁寧な言葉」と言われたのも、答えたくない理由の一つだったりした。
すると、アルの隣で汗をたらして一生懸命に素振りをしていたレヴァンが、
「イグリア・セアヴェルニータ先生です。魔術科担当です。ちなみに、僕はレヴァンと申します」
急に話に割り込んできたレヴァンに、「お前はちゃんとした言葉遣いだな」と感心したパーシヴァルは、
「そうそう、イグリアだ。あいつ、態度悪いとマジで怒って、めちゃめちゃ怖いから気をつけろよ、アル」
アルはその忠告をもっと早く聞きたかった。ところで、そもそもなぜ、わざわざ自分に話しかけてきたのか不思議に思ったアルは、そのことを聞こうと口を開きかけた。
しかし、その時レヴァンが余計なことをしてくれた。
「もうすでに、アル君は、一発雷を落とされましたよ」
「そうなのか!? ハッ、ハッ、ハッ。これは失敬失敬」
アルは非常に不愉快だった。が、アルは「全くレヴァンの奴め。後で思いっきり、ボコボコにしてやる」と心の中で誓ってからそのことを忘れて、先程の不思議を解決することにした。
「で、オレに何か用か? 急に話しかけたりしてさ」
パーシヴァルは、「あっ、そうだった」と手を叩いてから、
「いやいや、ゴメン。忘れてたよ。なんで話しかけてきたかって? それは、『お前の素振りには、無駄な力が一切入っていなくて非常によろしい! 剣を習っていたと思われるが、それでも、ここまで綺麗に剣を振れるやつは、そうそういないぞ』と褒めてやろうと思っていたからに決まっているだろう!」
そう言って、アルの背中を力いっぱい叩くパーシヴァル。背中を抑えるアルを見て、レヴァンは笑いながら、
「良かったですね。アルさんは、先生に気に入られたようですよ」
「レヴァン! オレはお前も気に入ったぞ。ハッ、ハッ、ハッ」
アルは、腹から馬鹿笑いするコイツは本当に先生なのかと疑問に思ったが、褒められて嬉しかった。残念なことか、良い気になっていたアルは、パーシヴァルが「ガント・ローエンハルトもなかなかいい筋をしてるな」と言ったのにも気づかず無意識に笑っていた。
それが、彼の入学後初の笑顔だったのは、だれも気付くまい。




