魔法戦士アルの誕生 #1-3
アルだけは職員室でイグリアに雷を落とされた為、寮の自分の部屋に着いた時には、だいぶ遅くなっていた。
ルームメートはすでに全員寝ているものかと、アルは思っていたのだが、四人いるルームメートのうち、ガントとレヴァンの二人は、月明かりだけを頼りにチェスをしていた。今はレヴァンの番だが、正直ガントが勝勢の局面なので、レヴァンはなす術も無くため息をついて言った。
「ガントさん、少しは手加減してくださいよ」
「お前はそう甘えようとするから、いつになっても上達しないんだ」
そこに、アルが来てチェス盤を覗き込みながら、
「これは終局だな。だが、そんなことは、どうでも良い。オレには今日ずっと、気になっていたことがある」
二人は顔を見合わせながら、「何が?」と同時に言った。
「なんでオマエらは、そんなに仲が良いんだ? 今日入学したばっかりなのに」
それを聞いて、二人とも笑う。顔を見合わせてから、レヴァンが譲り、ガントが口を開いた。
「自己紹介がまだだったな。私はガント・ローエンハルト。彼は幼馴染みの、レヴァン・セルウスだ。私たちは、ファドゥーツからの留学生。これで納得したか?」
「ああ。そういうことなら納得だ」
手を顎に添えて頷くアルに、レヴァンがニヤリとしてから、
「イグリア先生のお説教はいかがでしたか?」
「最悪だ。今回は見逃して、無かったことにするから、これからはもっと真面目になれ、だってさ」
声のトーンがものすごく低くなったアルに、ガントが突然、今までとは全く関係ない話をし始めた。
「アル、あの時の発言によると、お前には学院長先生のお話の意味がわかっていたと思うのだが……」
アルは、ガントが言い終えないうちに、
「あんなの常識というか、当たり前だろ? 偏見や固定観念、嫉妬・侮蔑することなどは、全て、人の判断を狂わし、正しい道からはずさせる。つまり、学院長が言いたかったのは、『せっかく優れたモノを持っているんだから、謙虚に向上心を持って、その才能を限界まで伸ばせ』ということさ」
「レヴァン、そういうことだ。ほら見ろ、私以外にもわかっていた者がいただろう? お前もまだまだだな」
レヴァンは歯ぎしりした。
「そう言うガントは何なんだ? 自分だって、とても傲慢なくせに」
そう言いつつ、レヴァンはチェスを片づける。
「私は、他の人の前では、こんな態度は取らない。お前とアルの前だけさ。アル、これからよろしくな」
いつの間にか寝る支度を済ませたアルが、布団の中で「勝手にオレも入れてんじゃねーよ。まあ良いか。ああ、こちらこそよろしく」と返事をした。




