双剣士ガントの誕生 #2-3
しばらくは更新を早くできそうです。
アルは夢を見ていた。
それは、過去の出来事だった。四、五歳頃のことだと思う。まだ両親ともに健在で、幸せな毎日を送っていた頃だった。
懐かしい日々が蘇る。
母が呪文を唱えずにパチンと指を鳴らすだけで、ろうそくに火が灯った。夜の暗い道でも、母がパチンと指を鳴らすと周囲が明るくなった。他にも……。
ん? これってガントの言う神術と同じじゃ……。
場面が変わった。
今度は近所の友達ルカと遊んでいた。赤い短髪に赤い目をした小柄な女の子だった。よく彼女の家に遊びに入っては、ご馳走になったものだった。
そういえば、ルカの親父にこんなことを言われたこともあったような気がする。
――もし、俺の身に何かあったら、町の時計台から下に続く階段の先にある、部屋に行ってくれ。そこには大切なものがある。俺が今までやってきたすべてがある。だが、このことは誰にも言ってはいけない。男同士の秘密さ。もちろんルカにも、だ。まあ、安心しろ。条件をすべて満たさないと、俺以外に入れる人はいない。お前がうっかり言わない限り、誰にもバレないさ。
よくよく考えてみると、ルカの親父は、チビ助に向かってよくそんなことを言ってみたもんだ。実際言われた場所に行ったが時計台の下に続く階段なんて無かったし、ふざけて言ったんだろう。
他にもたくさん夢見たが、アルが今思い出せるのはこれくらいしか無い。
夢は、過去の思い出を映して終わった。




