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ガルシア大陸戦記  作者: シグレイン
魔法戦士アルの誕生
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魔法戦士アルの誕生 #1-14

 アルの機嫌が戻り数日経って、アルとガントとレヴァンの三人は、日常生活を送っていた。十月もいよいよ終わる頃となって、木枯らしが吹き始め、そんな中、三人は寮のルームメートのエルとエム(二人は双子である)を交え、計五人で相談していた。


「十月末の模擬戦闘なんですけど、皆さんどうしますか?」


 レヴァンが、話を切り出した。


「いや、別にどうするも何も、普通にやれば良いんじゃねーか?」


 やっと落ち着きを取り戻したアルは、今度行われる模擬戦闘には無関心だった。しかし、ガントはやる気満々だった。


「いや、やるからにはきちんとやる。こんな作戦を立案してみたが、どうだろうか?」


 そう言ってガントが示した案は、魔術科の生徒を含め全員が―アルたち三人は魔術科・残りの双子は武術科だった―武術師として申請して出ることだった。こちらには、アルとガントとレヴァンという、武術の成績において学年トップを争う三人がいるのだから、例え魔術科の三人でも武術師同士の対決で負けることはない。そういう理屈らしい。


「相手が魔術師中心だったら、どうするんだ?」


 アルがすかさず突っ込む。


「その時は、速攻を仕掛けて、魔法を発動される前に倒すのみだ」

「ふーん。まあ、良いんじゃない。みんなもそれで良いよな?」


 誰も反対意見を出さなかった為に、ガントの案がそのまま採用された。


 模擬戦闘が行われる前日、対戦相手決めのくじ引きがあり、その際ルール等の再確認がされた。


《全部で十六チーム出場するこの模擬戦闘では、次の項目で競ってもらう。

①いかに早く敵を倒すか

②いかに味方の犠牲を減らすか

③理にかなった作戦であるか

④臨機応変に対応できたか

・これらの観点から、先生達が総合的に評価して決め、ポイントをつける。

・そのポイントで、勝敗を決める。強いチーム同士が当たって僅差で勝ったところで高ポイントは望めない。逆に、弱いチームでも頑張って高ポイントを取れば、総合順位で上位を狙うことが出来る。

・対戦は一回しか行われない。いかに一回の戦闘で、力を出し切るかも試される。

・武術師は武術のみ、魔術師は魔術のみ使用できる。また装備もそれぞれ適切なものを選ばなくてはいけない。》


 くじで、レヴァンは見事魔術科の上位層で結成されたチームを、対戦相手にしてくれた。レヴァンからそのことを聞いたガントは、「レヴァン、お前は良くやってくれた」と半泣き顔で言い、アルは「オマエ、ちゃんとこの責任はとれよ」と笑った。エルとエムは強く睨みつけていたが、レヴァンは気にする様子は見せない。


 武術師の装備で出場する為、魔術を使ってはいけない。武術師と魔術師では、ガントの言った通り相手が魔法を発動させる前に倒すしかないが、五人対五人でそれは厳しいだろう。苦戦は必至だった。



 当日。空は雲で太陽が見えず、強風吹き荒れる日だった。


 戦場は、学院のグラウンドだった。その為、風で砂が目に飛び込んでくる。風上のチームが有利で、風下のチームが不利なのは、火を見るより明らかだった。


 それなのに、レヴァンのくじによって、アル達のチームは風下に陣取らなくてはならなかった。ここまで悪いことが重なると、さすがに開き直ってしまい、誰も文句は言わなかったが。


 戦闘が始まった。相手のチームとの距離は、まだ大分ある。こちらから大きく動き出せば、魔法で相手が盛大に迎えてくれよう。もしそうなれば、こちらに勝ち目はない。よって、風の向きは変わらないかと待ちたくなる気分ではあったが、時間も得点化されるという非常な理由により、進まざるを得ない。


 ガントは、皆に言った。


「最初、出方を窺っているように装うんだ。そうすれば、相手もまだ魔法の準備をしてきやせんだろう。それで、私が合図したら、一気に突進して、相手が魔法を発動させる前に倒すんだ。良いか?」


 全員頷き、ゆっくりと行軍する。相手チームもゆっくりと前進している。アルはその最中に、魔術は駄目でも、神術は良いのではないかと、考えを巡らせていた。


 やがて、相手の足音が聞こえるようになってきてた。大分両チームの距離は近づいてきている。レヴァンは、そろそろ勝負をかけるのかと、ガントをちらりと見たが、彼はまだ勝負をかけないらしい。緊張して心臓がドクドクと跳ね上がるようになり、また、息をするのも苦しくなってきた。敵は緊張なんかしている素振りは全くなく、堂々としていた。レヴァンは、ゆっくり歩いているだけなのに、汗をかいてしまった。運が悪いことに、汗が目に入った。視界がぼんやりとしてくる。ついで、目が痛くなる。思わず、手を出したかったが、それは出来ない。頑張って我慢した。


 そこで、ようやくガントが口を大きく開けて、


「今だ!」


 アルたちはすぐに敵目がけて走りだした。同時に、敵チームは即座に呪文を詠唱しだし、アルたちが辿り着く前に、魔法を発動させてしまった。


「くらえっ」


 相手五人の手から、大きな火球が生まれ、アルたちに直撃せんと、飛んでいく。風に乗って、火球は猛スピードで進む。


 ガントは諦めた。レヴァンも諦めた。武術科の二人も諦めた。しかし、諦めの悪い奴がいた。


 そいつは、右手を思いっきり握りしめ、目を閉じて強く祈った。


(風向きよ、変わってくれ!)


 無言の祈りが届いたか、風が突然止み、あろうことか、逆方向へ吹き出した。


 火球がもとの軌道を反対に通って、相手チーム全員に命中した。

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