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ガルシア大陸戦記  作者: シグレイン
魔法戦士アルの誕生
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魔法戦士アルの誕生 #1-13

 アルの機嫌を取るのは、並大抵のことじゃなかったと、ガントとレヴァンは今になって思う。何をしても怒りだす彼は、無意識のうちに神術を使ってしまうのだった。ガントとレヴァンが防護壁(シールド)を作らねば、今頃学院はアルの魔法による損傷で、威厳ある校舎もボロボロになっていたに違いない。



 やがて、魔術科配属の発表から二週間が経ち、十月の中旬頃になった。そして、ガントは、アルのあることに気付いた。


 アルは神術を使う時、強く右手を握りしめている。ガントは何度もその様子を見てそう確信した。ただ、それだけが条件ではない。おそらく、強い感情を持っていることも必要なのだろう。剣術のトーナメントの時も、その条件にぴったりだ。後はそれを試すのみ。


 そこまで考えて、アルの機嫌を良くしなくてはそれを試すことも出来ない、とガントは落胆する。ガントは、授業には真面目に出てしかも先生に質問されればしっかりと答えているし授業も聞いているのだが、魔術の実習の時間になると毎回『腹が痛い』と言って見学してしまうアルに、実習の時間を使って自分の仮説の証明に協力してもらうことを考えた。


 アルが実習を毎回見学するのをイグリアは黙認し、魔術科の他の生徒も魔術が使えない彼を気の毒に思って何も言わないで、関わろうとしない。絶好のチャンスじゃないか。念のために、もし先生や生徒が自分を探しに来た時の為に、レヴァンにうまくやってくれるように頼んでから、ガントはその計画を実行した。


 実習の時間。計画してから実行するのに約一週間がたち、十月二十日になってしまった。依然、アルのご機嫌は斜めである。それには、ガントもレヴァンも「やれやれ」といったところだが、アルの気持ちもわかる。とにかく、今日でそれも終わりのはずだ。神術についてわかれば、アルも機嫌を取り戻してくれるだろうと、ガントは期待していた。


 実習している生徒を、膝を抱え込んで座りながら見つめるアルに、ガントは怒られるのも恐れずに、勇気を出して話しかけた。


「アル。ちょっと隣良いか?」


 アルは意外にも、「別に座りたきゃ、勝手にどーぞ」と対応した為、ガントは「じゃあ、座るよ」といって腰かけた。ガントは、早速本題に入る。


「アル、お前の神術についての、私の仮説を検証するのに手伝ってくれないか?」

「イヤだ。面倒くさい。断らせてもらう」


 ガントはそこは計算済みのようで、


「じゃあ、聞いてくれないか?」

「暇つぶしになるから、イイ」


 その「イイ」は一体どっちの意味なんだ、とは言わず、ガントは喋り出す。


「では。私の推測だと、お前が強い感情を持っていると、神術を起こせると思うんだ」

「証拠は?」

「私とお前が竹刀を交えた、あの時の、あの不可解な動き。あれはお前の強い感情というか意思がそうさせたとしか考えられない」

「確かに。でも、それだけか。証拠不十分だな

「後、たまに怒って神術を使う時も、そうだった」

「本当にそうか? 神術を使う時、オレはそんなことを……」

「なぁ、試してみないか? 」

「ふん、そこまで言うならいいよ。やってやる」


 ガントは、アルは自分の策略の成功を確信した。


「ありがとう。では、私の言う通りにしてくれるかい?」

「ああ。で、どうすればいいんだ?」

「まず、右手を思いっきり握りしめて、それから、心に溜まった(わだかま)りをぶつけるんだ」

「どこに?」

「私に向かってやってくれて構わない。防護壁(シールド)をつくるから、心配無い。無論、呪文はいらないよ」


 アルは全神経を集中して、ガントの言う通りにした。


 その結果、アルの目の前に火球が現れ、バーンと防護壁(シールド)に衝突した。



 とはならずに、何も起きなかった。


 アルは「なにも起きないじゃねーか。この嘘つき野郎め」とガントへの怒りを右手に籠めた。


 すると、今度はアルの右手から炎が出現しガントへと向かっていった。


 目を見開いて驚くアルに対し、ガントは火球を防ぎながら「なあ、私の言う通りだろ? これを応用すれば、魔術科でもきっとやっていけるはずだ。練習には私が付き合うから、実習に参加してくれないか?」と説得した。


 自分の為にここまでしてくれたガントに、アルは心底感謝した。思わず目から涙が出そうになるが何とかこらえて、


「ありがとう」


 とだけ言った。


「どういたしまして」


 こうして、ガントによってアルは覚醒した。神術の使い方がわかってきたアルは、火球すら出せなかった過去を忘れるようなほどに、今は成長していた。


 そして、それが試される機会が訪れる。


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