魔法戦士アルの誕生 #1-12
先生たちが、昨日ずっと話し合って決められた科が、入学式典の時と同じ大講堂で、学院長シータに発表されていた。入学式典の時には、少し暑かったぐらいだが、今では少し寒いくらいになっていた。季節が、一カ月で夏から秋に移行したのが、体で感じられた。
この「科発表」は、学院の「第二の入学式」と言われるほど、大切である。これからの五年間、自分が所属する科が発表されるのだからという理由は勿論のことだが、ようやく地獄のようにきつかった一カ月が終わることを意味したのも大きい。
アルとガントとレヴァンは、発表されるまでの間、とりとめもないことを語り合っていた。入学式のような正式な場では無いので、がやがやと騒いでいても怒られないのだ。
そうしていると、時間が過ぎるのは早く感じられ、アルが呼ばれる番となった。
しかし、ここでまさかの事態が発生した。
「アル・フォルティス。そなたを、魔術科へ配属するものとする」
そう言われたのだ。
アルは、シータが言い終える前に抗議した。非常に珍しいことに、慣れない敬語を使って。
「なぜ、ワタクシは武術科ではなく、魔術科なのでしょうか?」
「抗議は受け付けない。そなたの行為は、学院の規則に反する。慎みなさい」
そんな馬鹿な、と思ったのはアルだけではない。ガントもレヴァンも他の生徒も、この結果には異論を唱えずにはいられない。
この一ヶ月間、学院は、個々の能力を診断し、ここに最も適する科を決めるため、様々な試練を生徒に与えた。アルは学術で二位。武術でも二位を取ったから、本人の希望に反して学術科なら、まだ理解可能だ。しかし、悲惨たる結果に終わった魔術科に配属とは、書類でも間違えたのだろうとしか考えられない。ガントが念のために訊いた。
「僭越ながら、お尋ねいたします。アル・フォルティスは、確かに魔術科なのですか? 書類が混ざったり、ということは無いのでしょうか?」
「ガント・ローエンハルト! そなたが、そのような愚問をするとは、私は微塵にも思わなかったぞ!」
シータは激昂して、叫んだ。それに全く怯むことなく、ガントは堂々と、
「では、私も学院長殿に問う! 学院はこんなにも低能なものだったのか。何故、アル・フォルティスが魔術科なのか、理由をお聞かせ願うっ!」
大講堂にいる皆が、ガントを見る。学院創始以来の天才は、生徒からはもちろん、先生からも絶大な信頼を得た、礼儀物腰が柔らかい好青年ではなかったのか。
「良かろう。イグリアが昨日の会議で、『アルには魔法の才能がある』と、冗談ではなく本気で、申したからだ。魔法に必要な精神力が、他の生徒よりも非常に多いらしい。そうだよな、イグリア?」
誘導尋問どころではない、脅迫じみた質疑に、イグリアは「はい」と俯きながら応答した。それを確認してから胸を反らしたシータは、
「そういうことだ。これでも納得しないなら、退学処分とする」
アルは目を真っ赤に染めて、無言のままその場から立ち去った。それを人々の目が追いかける。彼らには、大きな足音を残して大講堂から出て行ってしまった彼の姿が焼きついて離れない。
ガントとレヴァンは追いかけたい気持ちを抑えて、アルを見送った。自分たちの番が終わったら、直ぐに追いかけようと思いながら。




