魔法戦士アルの誕生 #1-11
魔術科の授業は、最初の二、三日の間、ずっと魔法理論について延々とイグリアが講義し続け、ほとんど生徒が頭を混乱させてしまった。アルも分からないところが幾つかあり、授業が終わってレヴァンがイグリアに質問している間に、ガントに訊いてみると、
「先生の説明が悪いわけではないよ。これはもともと難しい概念なのさ。私も以前、書物で読んだことがあったが、その時はわからなかった。まあ、今日やっとわかったのだが」
と、イグリアを弁護してから、長々と説明し始めた。
「長い説明なのだが、わかりやすくすると、こういうことだ。魔法と呼ばれるものは、三種類あって、それぞれ『魔術』・『神術』・『幻術』と言う。一般的に魔法と呼ばれるのは、魔術だけだ。何故なら、神術や幻術は、ほとんどの人が生まれて一回、目にするかしないかと言うほど使われないからだ。神術や幻術は、魔術と違い呪文を詠唱しない代わりに、魔法使用者を選ぶ。その条件にはいくつかあるが、その中でも代表的なのは、金銀妖瞳。そう、お前のことさ」
アルは、「何故、オレがそうだと知っている?」と目を丸くしたが、周りに人がいないのを確認しながら、ガントはアルには構わず小声で続けた。
「お前が右目を隠し、お前があの時神速の動きを見せてくれれば、それが神術だったと考えるのが妥当だ。かつて読んだ書物に、ほんの少しだけ書かれていたから、私にはわかったのさ。が、さっきのイグリア先生の説明を真面目に聞いていたレヴァン以外の他人には、絶対にわかりやしないと思うぞ。だから、お前が金銀妖瞳なのは、絶対にばれなやしいから安心しろ」
「どうして、そんな大切なことを今まで言ってくれなかったんだ?」
「このことはあまり他人に知られない方が良い。神術師は非常に珍しいから、何者かに狙われる可能性がゼロとは言えないだろう? だから、二人きりの時に言いたかったのさ。隠してて、悪かった。すまない」
「大体のことはわかった。しかし、ガントも良く知ってるな」
アルが感心していると、レヴァンがこちらに来るのが目に入った。
「あと一つだけ、言わなくてはいけないことがある」
ガントはそう言うと、レヴァンが来る前に早口で「神術を使うお前に、魔術はほとんど使えないだろう」と告げ、その場から立ち去っていった。
「あれ? アルさん、お顔の色が悪そうですが、大丈夫ですか?」
レヴァンがやってきて、アルの顔を見た途端、そう言った。
「いや、別に。特に何も感じられないが」
レヴァンには嘘をついたが、彼は気づいていないようで、
「そうですか。安心しました。ところで、ガントさんは?」
「アイツは、用事があるらしくて、どこかに行くみたいだが、何も言ってくれなかったから、オレにはわからん」
またしても、アルは嘘をついた。
「そうですか。では僕たちは食堂に先に行って、昼食にしましょうか」
二人は食堂へ、他愛も無い話をしながら向かった。
案の定、ガントの言った通り、アルは魔術の実技テストでは、何も出来なかった。
イグリアに「補習の必要があるかしら?」と言われても、ただ「したところで、オレに魔術は出来ないさ」と言って、その場から立ち去り、イグリアの機嫌を悪くするだけだった。
ガントは、魔術でもその才能を発揮した。イグリアも驚くほど、大きな火球を作りだしてみせたのだ。これにて、ガントはテストで全科目成績トップを達成し、同時に学院創始以来初の快挙を成し遂げたのだった。
レヴァンは相変わらず、魔術でも上位層にいるものの、注目されるほど良いわけではなく、クラスメートからは全科目無難にこなすなかなか出来る美少年という位置づけをされていた。
適性検査と呼ばれる入学後一カ月も終わりに近づき、いよいよ明日は、これから五年間生徒が所属する科が発表される日。多くの生徒が心を躍らせて、楽しみにいていた。アルとしては、武術科としてのこれからを、待ち遠しく思っていた。




