魔法戦士アルの誕生 #1-0
魔法戦士アル。
後世そう呼ばれることになるアルバス=フォルティスは、世界でもたった数人しかいない魔法戦士でかつその創始者だった。
魔法戦士。それは、魔法を扱う技術である魔術と、武芸を扱う技術である武術を、同時に使いこなす存在のことである。
このように説明すると、多少は似ている「魔剣士」と混同する人が大勢出てくるかもしれないので、その違いにも触れておこう。
魔剣士とは、魔法剣(単に魔剣と呼ぶ時もある)を扱う剣士のことで、武術と魔術を同時に使いこなすわけではない。例を挙げると、剣で相手を斬りながら魔法で火を起こすのようなことはできない、といった感じである。
そもそも、いくら武術と魔術が出来るようになっても、両方を同時に扱うことは不可能なのである。何故なら、まず手で決められた印を結び、それから呪文を一言一句間違えずに発音し、さらに魔法発動に意識を集中させて、やっと魔法の効果が発動するからだ。そう、武器を持っている時点で印を結ぶことはできないから、魔法は使えないのだ。
また、魔法の効果は、魔法に対する意識の集中が途切れた瞬間に無くなってしまう。その為、自分自身あるいは味方を強化する魔法(強化魔法という)をかけて、その効果を持続させながら武術で攻撃することもできない。
古来、多くの戦術書に、「魔術師が武術師に強化魔法をかけ、その効果で能力が上昇した武術師が戦え」、「魔法で相手に隙をつくらせ、そこを武術師が攻めろ」などと書いてあるのは、こういう理由による。今日では、多くの人がこの戦法をとる為に、魔術師と武術師が組になる。
話を戻すと、アルにはそれが可能だった。しかし、さすがに最初から出来たわけではなく、寧ろ世間一般の魔法が出来ないせいで、いろいろと苦労する羽目になったものである。
物語は、そんなアルの学院生活初期の話から始まる。




