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水浸し

作者: 泉田清
掲載日:2026/11/03

 雨の日。コインランドリーへ行った。乾燥機は全て塞がっていた。

 何てことだ。このランドリーバックいっぱいの洗い物を乾かすことが出来ない。空くのを待つべきだろうか。いや、そうだ、持ち帰って部屋干しにすればいいではないか。我ながら妙案だ。濡れたままの洗い物を持ち帰るのは何とも悲しかったが。

 雨の日で、日曜だと、乾燥機は全て塞がってしまう。思えば休みはウイークデーがほとんどで、コインランドリーはいつもガラガラに空いていた。たまの日曜に来るとこういうことになってしまう。

  

 コーラの中身を捨てる前に、消費期限を確かめる。まだ数か月も余裕がある。それでもシンクに流してしまうのは、コーラが好きではないからである。

 ジャバジャバジャバ。勢いよく泡立つ液体が排水口に吸い込まれていく。少し心が痛んだ。そのペットボトルのコーラは、仕事中、お客さんがくれたものだ。「暑いから、これ飲んで頑張ってね!」、「ありがとうございます!」笑顔で受け取る。この仕事をやっていて良かったと思える数少ない瞬間である。

 私はコーラを飲む習慣がない。体に悪いとさえ思っている。お客さんはだいぶ太っていた、生活習慣病を患っているに違いない。私も薬の世話になっていたが、毎日1ℓの水を飲み、食生活を見直し、薬は要らなくなった。今更コーラなど飲めるものか。

 グシャ!ペットボトルを潰して捨てる。いつの間にか撥ねていた液体がシャツの袖を濡らしていた。シャツを脱いでそのまま洗濯機へ放り込む。排水口から如何にも人工的な、恐ろしいほど甘い匂いがした。


 電気ポッドを持ち上げると、小さな水たまりが出来ている。どこからか漏れたらしい。ずいぶん長いこと使っている。寿命なのだ。

 ポッドの中に水を入れる、電源を入れお湯を沸かす、コーヒーを飲む、そのまま一晩置く、朝ポッドを持ち上げるとその場に水たまりが出来ている。どういう原理で、どのタイミングで水が漏れだすかは未だ謎である。対策で新聞を敷くことにした。新聞を敷き忘れると、フローリングの床に小さな水たまりが出来てしまうわけだ。白いタオルでふき取る。少し茶に染まった。長時間水に浸かりニスが剥げてしまったのだ。洗濯洗剤で漂白できるだろうか。


 酒を零す。それも深夜に。

 パソコンの前で飲んでいて、そのまま寝てしまって、目が覚めた最初の動作で酒の入ったコップを倒してしまう。子供が食卓で飲み物の入ったコップを倒してしまうのよりも酷いものだ。すべて独りでやらなければならない。叱ってくれる親もいなければ、からかってくる兄弟もいない。ただ黙々と片付ける。

 タオルは中々液体をふき取ってはくれない。新しいタオルほど。よそよそしくて、ふき取るのを拒むかのようだ。それでも執拗に、ヘビのようにくねらせ液体を取り込ませようとする。一通りふき取った。その黒いタオルは手の中で、液体と分離するかのように黒光りしていた。何て強情なタオルなんだ。何度か洗濯機の中に入れてしまえば少しは素直になるだろう。


 目が覚め、トイレに行き、洗濯機を回す。15分か20分ほど本を読む。素晴らしい休日の素晴らしい朝。

 ピーッ!洗濯が終わった。洗い物をバックに移す。さっきまで汚れものだったものたちが、洗濯洗剤の爽やかな香りを放ち、生まれ変わったかのようだ。

 ドアを開ける。快晴だ。ランドリーバックを担いで意気揚々と階段を降りた。コインランドリーはきっと、空いているに違いない。

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