さて…どんな肉を着せようか。
……ここに、何の変哲もないアスパラがある。
さて…どんな肉を、着せようか。
ベーコンで巻いて、スマートに仕上げるか?
豚肉で、味わい深く仕上げるか?
ひき肉で、こってり濃厚に仕上げるか?
ちくわの穴に入れてもおいしいよね。
ささみを叩いて薄くして包んで、衣をつけて揚げてもいいな。
……今日は、チーズと一緒にハムで巻いて焼くことにしよう。
あっさりとしたアスパラを、おいしい美味しいおかずにするために…肉を着せる。
この、アンバランスさがたまらない。
この、絶妙な融合具合がたまらない。
この、一手間加えた感がたまらない。
……うん、おいしい。
肉を着せることで、こんなにも美味しくなるなんて。
肉って、本当に……素晴らしい。
……ここに、何の変哲もない平凡な出来事がある。
さて…どんな肉を、着せようか。
大げさな表現で、トンデモ展開に仕上げるか?
丁寧に装飾して、印象深く仕上げるか?
ギャグをふんだんに取り入れて、こってり濃厚に仕上げるか?
既存の童話を混ぜ込んでみても、楽しそう。
難しい言葉に変換して、ぱっと見は意味不明の文字列にしてもいいな。
……今日は、しつこく同じフレーズを繰り返して、ウザく仕上げることにしよう。
なんの魅力もないただの出来事を、唯一の物語にするために…肉を着せる。
この、自分にしかできないという特別感がたまらない。
この、絶妙に独特な癖のある感じの文章がたまらない。
この、切れ味のあるオチの何じゃこれ感がたまらない。
……うん、おもしろい。
肉を着せることで、こんなにも美味しくなるなんて。
肉って、本当に……素晴らしい。
……ここに、何の変哲もない一般的な骨がある。
さて…どんな肉を、着せようか。
厚めにこしらえて、衝撃に耐えられる個体に仕上げるか?
丁寧に筋肉をつけて、印象深く仕上げるか?
とにかく見目麗しく整えて、注目を集めるように仕上げるか?
バレない程度に宇宙の要素を混ぜ込んでみても、面白そうだ。
自ら肉に変容して、シレッと肉の集まりに紛れ込んでみてもいいな。
……今日は、目立たない質素なタイプの一般人に仕上げることにしよう。
なんの特色もないただの骨を、貴重な星の住人にするために…肉を着せる。
この、延々と繰り返される作業がたまらない。
この、繰り返されていく流れががたまらない。
この、終わることのない途方もない感じがたまらない。
……うん、おかしくない。
肉を着せることで、こんなにもごく普通の人が作れるなんて。
肉って、本当に、素晴らしい。
肉って、本当に……、素晴らしい。