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聖少女暴君  作者: うお座の運命に忠実な男
余命一年のヒロイン編 第四章 スターライト・ラヴァーズ
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4-2 みんなの夢はなんですか?

「みんなの夢も聞かせてよ。夢を人前で語ると叶いはじめるというから」

 姫川さんが優しい目でわたしたちを振りかえる。


 流星群観測の夜。わたしたちは夢を語り合った。


「わたしはね、パパが会社を継いでほしいって言ってるの。でも天文台かプラネタリウムのスタッフになってみたいな。格闘ゲームは趣味としてつづけながらね」


 折笠詩乃さんのお父さんは大会社の代表取締役。彼女にとって天文部として活動したことは大切な思い出らしい。


「わたくしは、プロ作家になって、自分の作品のアニメを自宅で鑑賞するのが夢です」


 小説を書いている村雨初音さんらしい夢だ。


「ボクはカフラマーンの騎士としてこの惑星を魔王から守ることが夢です」

  中二病患者の黒咲ノアちゃんは冗談なのか、本気なのか。


「ノア。まじめに話して」姫川さんは怒っていなかった。


「トゥルーです」【大まじめです】


「鳴海さんは?」


「わたしは……。バス・トイレ別の物件に住んで、足を伸ばしてお風呂に入れればそれで良いです」


「結婚はしないの?」


「結婚は、背が高くなくてもいい。お金持ちでなくてもいい。健康で働く意思のある人と結婚したいです」


「ずいぶんハードルが低いわね」


「お父さんが寝たきりで弟は入院中なので……」


「そうだったんだ」


「歳はふたつ違います」


「こんどみんなで弟くんのお見舞いに行こうか」


「弟は会ってくれないと思います。喧嘩しちゃったから」


「喧嘩?」


「中学のとき、弟が急に悲観的なことを言いだして……」



【病室にて】

 わたしの弟、鳴海大地は三年前から大学病院に長期入院しています。わたしは学校を早退してお見舞いに行っていました。


 わたしは無言で下着の替えや花瓶の花を交換していました。弟は同い年の男の子より背が低く、痩せていました。大地は唐突に話しだしました。


『お姉ちゃん、この世界は誰のもの?』


『え? みんなのものなんじゃないの』


『ぼくのものなんて、この世界のどこにもないよ』


『…………』


『同い年の子たちが青春を謳歌してるのに、ぼくは病室の壁を眺めてる。キスも、セックスも知らないで影法師みたいに消えていく。ぼくは主人公にはなれないんだ』


『そんな……』


『お姉ちゃんはいいよね。やりたいことなんでもできて』


『わたしだって学校早退してお見舞いに来てるんだよ』


 弟はコップを力一杯わたしに投げつけました。狙いが外れたのは偶然ではなく弟の優しさでしょう。


『もうお姉ちゃんはお見舞いに来なくていい』


 大地はわたしと目線を合わせませんでした。あたりまえです。健康に生まれていたら日本に生まれた幸運を享受できたはずなのに、不当に奪われつづけているのだから。




 わたしは姫川さんたちに語りながら涕泣していた。とめどない涙がレンズの役目を果たして流星が鮮明に映る。人生でもっとも悲しい思い出である。


「弟くん、童貞をこじらせているわね。ヤりたい盛りだから」


「詩乃! 入院していたら恋愛とも遠ざけられているのだから、あたりまえでしょう」姫川さんが折笠さんを叱責する。


 仲間たちはわたしが泣いていることに気づきながら見守ってくれている。


「そんなことが……。弟くんの病名訊いていい?」


「へべれけ症候群です。弟は二〇歳まで生きられないって、お医者さまに……」

 嗚咽に遮られてそれ以上話せなかった。


【作者註 へべれけ症候群は実在しない病名です。大気中のアルコール分子に拒絶反応が起こる病気です。八〇〇〇万人にひとりの確率で発症する難病です】


「弟くんを紹介してよ。余命が短いもの同士、気が合うと思うんだ」


「天音さんがそういうなら……。わたし、なんでこんなこと話して……」


「流星のせいだよ。きっと」


つづく



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