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聖少女暴君  作者: うお座の運命に忠実な男
余命一年のヒロイン編 第三章 恋ちゃん、芸能界やめる!?
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3-2 MOD大型アップデート

 ここはeスポーツ部の部室。メンバーは姫川さん、折笠さん、村雨さん、新入部員の黒咲ノアちゃん、そしてわたしこと鳴海千尋。全員がそろっていた。


「パイセン。スルメをかじっていたら天啓が降りてきました」

 ノアちゃんは購買で買った裂きスルメをわしづかみで食べている。


「部室でスルメをかじるな」

 折笠さんが目を細める。


「この世界から戦争を完全になくす方法を思いつきました!」


「本当に? 素晴らしいわ。ぜひ参議院に立候補しなさい!」


「めんどいからやめておきます」


「志が低い!」


「政治家になるのってお金かかるんですよね。親が政治家か、芸能人じゃなきゃ無理ですよ。一般人とは感覚が違う人たちが政治家をしているのです」


「意外に鋭いこと言っているわね。スルメ効果かしら」


 ノアちゃんと折笠さんはボケとツッコミの役割分担ができている。そのことを伝えたら折笠さんは嫌がるだろうな。


 いまは期末テストも終わった学期末。五月に誕生日がある折笠さんは一八歳になって、ますます美しさに磨きがかかってきた。ついでに護国寺先生もひとつ歳を重ねている。


 先生が部室に飛び込んできた。


「みんな、良いニュースと悪いニュースがある。どちらから聞きたい?」


 先生の発言に顔を見合わすわたしたち。姫川さんが選んだのは良いニュースから。


「メディウム・オブ・ダークネス(MOD)大型アップデートだ。新キャラクターの追加。バランス調整などいままでにないアップデートだ」


 おお……!


 歓声があがる。


「そして悪いニュースは今年のGEBO(ゲボ)の種目にMODは選ばれなかった」


 MODはわたしたちがやりこんでいる格闘ゲームだ。このゲームで国内最大のゲーム大会GEBOに参加して天文部は二位と三位の実績をつくり、eスポーツ部発足の流れとなった。


「なんだってー⁉」


 わたしたちは騒然となった。今年の目標は前回のGEBO決勝で姫川さんが敗北した韓国人プロゲーマーに雪辱を果たすことだと思い込んでいたからだ。


 なんでも今年は3D格闘ゲームのビッグタイトルが複数発売されてGEBOの種目を埋め尽くしたため、MODは選ばれなかった。


「じゃあ、わたしたちはなにを目標にすればいいんですかぁ」


 わたしは情けない声をあげてしまった。


「気を落とすな。格闘ゲームの大会がなくなったわけじゃない。おれもアンテナを張っておく。おまえたちはなにも心配せずに自己研鑽に努めてくれ」



 なんでもドバイの王族がMODの販売を受け持っている会社の株を大量に株式公開買付【TOB】により占有。このニュースはゲーム業界だけでなく一般のマスコミにも報じられる大事件となった。


 その真意はまったく悪意などではなく、彼は個人で格闘ゲームのアーケード筐体を空輸してコレクションするほどのゲーム好きらしく、とくにお気に入りがMODだった。


 続編が絶望的といわれているMODの続編を開発させるために株主になったという。スケールが違う。


 MODを開発した会社は解体されているが、旧メンバーに招集がかかる。


 それによって大型アップデートとダウンロードコンテンツの実装が計画されているというのだ。わたしたちはネットニュースを見て騒然となった。


 ただ、大型アップデートは今年の秋口をめどに開発されているそうで、GEBOに間に合うかギリギリ。


 間に合っても一般ユーザーがやりこむ時間がなく、公式種目に選ばれたのは3D格闘ゲームの有名タイトルだけだった。


 わたしたちは目標を失って暗澹とした雰囲気になった。不穏な空気とともに新章開幕です。





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