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聖少女暴君  作者: うお座の運命に忠実な男
余命一年のヒロイン編 第二章 護国寺先生マッチングアプリの沼にハマる
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2-3 マッチングアプリってこんなにひどいんですか?

【護国寺牛次郎 視点】

 昨年のクリスマスに小山ひかり先生との一件(※第一巻エピソード『クリスマス・オブ・ナイトメア』参照)があったあと、おれはマッチングアプリをインストールした。わらにもすがる想いで。


 最初はCMのような出会いや恋を大いに期待した。自分のプロフィールに個人情報を項目ごとに打ち込んでいく。年齢、身長、体重、血液型、趣味、飲酒・喫煙の有無、デート費用をどちらが持つか。職種や年収、将来子どもを望んでいるかまで。


 男女とも年齢は若いほうが良いのは言うまでもない。女性は完全無料。男性は高額課金システムだ。通常課金のほかにプレミアム課金をしないとすべての機能が使えないようになっている。


 男性人気会員は年収が一○○○万円以上もあるらしい。おれはハイスペックではないがそれなりの出会いがあると思っていた。


 最初にマッチングした女性は日本人を名乗っていた。年下で、セクシー女優並みの体型をしていた。彼女はある会社のCEOをしているという。RINNE交換したあと意気投合して、将来の夢を語り合った。


 ところが、彼女が非代替性トークン【NFT】を利用した投資を勧めてきたんだ。


 おれはいやだと言ったのだが、投資をしないなら対面デートはしないという。婚活をしているのに投資?  さすがにおかしいと思った。


 おれは彼女がRINNEで送ってきた画像を検索にかけた。すると外国に居住しているアイドルのネコスタグラム(※この世界のSNSアプリ)が特定された。


 彼女はアイドルの画像を使って婚活アプリに登録していたなりすましだったんだ。


 おそらく最初は少額の投資で利益を上げ信頼させて、高額を動かしたら戻ってこない。そういう手口の詐欺だろう。おれは彼女をブロックした。


 つぎにマッチングした女性は台湾人だった。

 彼女は夫と死に別れた悲しい過去を持っている女性だった。本土に残している娘をお迎えして日本に住みたいと言っていた。


 おれは血の繋がっていない子どもの親になれるか、激しく悩んだ。彼女はおれとの子どもを望んでいるという。そういう未来も悪くないのかもしれないと思いはじめたころ、彼女が外国為替取引を勧めてきた。


 お金を動かすようにRINNEで指示してくる。おまえもか、と思ったよ。


 おれは彼女が悪人には思えなかったが、投資をしなければ関係性はつづけられない。おれは彼女をブロックした。外国人の間で日本人に投資をさせるのが流行っているのかもしれないな。


 そのあとマッチングした女性は中国人を名乗っていた。最初は悪くないムードだったが彼女が『大手通販サイトを利用してお金稼げるよ』と言ってきた。RINNEの指示でお金を動かすことはしないと断ると罵ってきたのでブロックした。


 最後にマッチングした女性は綺麗な顔をしている女性だった。彼女は日本人を名乗っているが、RINNEで送ってきたヴォイス・メッセージは明らかに外国人のものだった。


 そして『PickPokke(※この世界のSNSアプリ)でお金儲かるよ』と言ってきた。


 断ると向上心のない男とは一緒にいられないと言われたのでどちらからともなくブロックした。


 他人のネコスタグラムを利用している相手とは複数回マッチングした。

 投資を勧めてはこないが、以前ひどい男にだまされたことがあるのでネットで関係を深めたいという。全部国際ロマンス詐欺だ。


 信頼させてから大金が必要になったので送金してくれと言ってくる手口だ。


 そのほか、出会い系サイトに誘導されて連絡先の交換には三○○○円。ただしメッセージが送られてきた段階で課金していなければ連絡先は破棄されているという悪質なパターンもあった。もちろん課金はしなかった。


 三ヶ月有料契約して対面デートまでいけた回数ゼロ。事件性のあるマッチングしかしなかった。


 おれはこんなに価値がないのか。婚活をつづければつづけるほど自分の価値が下がっていく。もう望んでいたような結婚はできないのか……。


 せめて年収があと二倍あれば違ったのか……。


 課金契約した三ヶ月が過ぎたらもうやめようと思っていたところにマッチングした女性が姫川の母親だったというわけだ。姫川に面影が似ていることは気づいていたが……生徒の母親とマッチングしてしまうなんて夢にも思わなかった。



つづく

※うお座の運命に忠実な男はマッチングアプリに関して取材を行い、このエピソードを執筆しました。

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