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聖少女暴君  作者: うお座の運命に忠実な男
第六章 姫川さん落命
64/153

6-11 勝利者は誰?

【週末 金・土・日 定期更新です!】

 準決勝第一試合。

 わたしこと鳴海千尋VS(パク)銀優(ウヌ)


「よろしく」

 朴さんは眼鏡のフレームに触れて微笑む。


「よろしくお願いします」

 わたしは心臓がばくばくいっていた。彼は強すぎる。


 試合開始。彼の使用キャラはアサシンのグルガン。わたしはいつも通りキース・ストライダー。


 対戦台越しに彼を見るとモニタの反射で眼鏡レンズが光っている。なにを考えているのかわからない。


第一ラウンド。

 開始とともにグルガンは猛ダッシュからジャンプ! 空中戦を仕掛ける気だ。


 キースを飛び越したことでガード方向が瞬時に逆になる。このような現象は『めくり』といわれている。わたしはかろうじてガードした。


 着地してからのグルガンの猛攻! 隙の少ない通常技の連係に固められてしまった。


 さらにガード方向を上下に揺さぶってくる。一発喰らってしまった。


 それを起点にコンボがはじまる。弱パンチの連打から弱キックをキャンセルして必殺技『アサシン・ストライク』→追加入力技『セカンド・ストライク』→『サード・ストライク』、技を喰らって吹っ飛んだキースにグルガンはさらに追い打ちをかける。いつコンボが終わるの?


 わたしはバーストで切り抜けることも忘れてしまった。コンボが終わったときキースのライフは八割減っていた。グルガンはノーダメージ。


 必死にグルガンに近づこうとするが彼は距離をとった。タイムアップすればライフの差でわたしが負ける。グルガンが挑発技『アサシン・フェイス』をだす。


 グルガンの哄笑とともにキースの必殺技ゲージが減少した。ただでさえ少ない勝機が絶望的になる。


 わたしはグルガンに接近するためにダッシュしてしまった。これが悪手だった。

 

 グルガンは垂直ジャンプから強キック! キースはKOされた。パーフェクト負けである。


 わたしが手汗で指が滑りそう。もうだめだ。申し訳ない気持ちで姫川さんを見やった。


「千尋! 相手の土俵で戦っちゃだめだよ! マイペースマイペース! 一本取りかえしていこう」


 姫川さんは人差し指で天をさす。照明に照らされた彼女は輝いていた。


 わたしの心の闇に一条の光がさした。姫川さんがわたしのことを名前で呼んでくれた!


 わたしは自分の両頬を平手打ちして気合いを入れ直した。気持ちで負けるもんか。



 第二ラウンド。

 一戦目と同じようにグルガンは飛びこんできた。飛び蹴りを(パーフェクト)ディフェンスする。


 わたしはコマンドを入力した。キースの必殺技『かわいそうだが死んでもらう』がヒット! 倒れ込んだグルガンに起き攻めを仕掛ける。


 ダウンしたキャラクターは一時的に攻撃を与えられない無敵状態になり、起き上がるまで一時操作不能になる。ダメージ判定が復活する瞬間を狙った連係を起き攻めというのだ。


 グルガンにジャンプ攻撃すると見せかけてそのまま着地。すばやくコマンド入力。画面が暗転した。超必殺技『なにも知らないやつらに思い知らせてやる! おれの見た地獄を‼』がヒット! ライフを大幅に削り、試合を有利に運んだわたしが第二ラウンドを勝利した。一本取った。どうだ!



 第三ラウンド。お互いに負けられない。

 グルガンは攻めてきた……と思ったら中間距離で牽制をしている。わたしの操るキースは投げキャラクター。接近するしかない。グルガンはそれを待っていた。


 立ち弱パンチからコンボを極めようとする。わたしはバーストで阻止! なんども同じ手を喰らうものか。


 すかさずコマンドを入力、必殺技『ばりばりに引き裂いていやる』がヒット!……したと思った。グルガンの体が青白く光る!


 全身無敵のバーストで『ばりばりに引き裂いてやる』を躱したグルガンは獲物に襲いかかるヒョウのごとくキースに攻撃した。


 隙の少ない通常技を華麗につなぎ必殺技へ移行、『アサシン・ストライク』から追加入力技『セカンド・ストライク』そして、『サード・ストライク』をEXキャンセル超必殺技『絶命弾』!


 絶命弾によってキースは全身の血液が逆流してKOされた。負けた。姫川さんと戦うまえに負けた。


 天文部の部室であんなに練習したのに……。みんなに期待されていたのに……。涙袋に液体が溜まっていく。それでもわたしは目を閉じなかった。


「対戦ありがとうございました」


 声にならない声をだした。姫川さんを見ると伏し目がちにうなずいていた。彼女の瞳は潤っていた。わたしのために泣いてくれた……。


 決勝進出者に勝利者インタビューが行われた。


「彼女がキースを選んだ時点で敗北は決定していた。われわれはこのゲームを日本人よりやりこんでいる。技の一つひとつの有効性を研究しつくしている。このゲームは日本で開発されたが世界最強は韓国です」


 わたしは奥歯を噛んだ。敗北者はなにも語らず。せめて潔い態度を取ろう。


 (パク)銀優(ウヌ)決勝進出。



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