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聖少女暴君  作者: うお座の運命に忠実な男
第六章 姫川さん落命
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6-6 人生で主役になることなんてないと思っていたから

【週末 金・土・日 定期更新です!】

 コトジョの天文部メンバーの試合が終了した。みんな集合して結果を確認する。

 わたしこと鳴海千尋がガッツポーズすると姫川さんは会心の笑みでかえした。


「あたしもリーグ戦突破できたよ」

 残る村雨さんに視線が集まる。


「わたくしは負けました。会場の空気に呑まれて実力の半分もだせませんでした。お姉さまに会わす顔がありません」

 村雨さんはリーグ戦を突破できなかったみたい。


「同じリーグだった二ノ宮(れん)さんも決勝へは出場できませんでした。韓国人の(パク)銀優(ウヌ)さんは二ノ宮さんでも太刀打ちできませんでした」


 本来は整った彼女の顔が悲痛に歪み、涙を隠そうともしない。声が震えて最後の部分は聞き取れなかった。わたしももらい泣きした。


「それが大会の洗礼だよ。洗礼を受けた初音はもっと強くなる!」

 姫川さんは村雨さんに駆け寄りほっぺにチューした。


「わたくし、いまお姉さまにキ、キ、キスを……!」

 村雨さんは沸騰したやかんさながらに上気して卒倒してしまった。


「ほらあなたも!」

 姫川さんはわたしにもチューした。


「えへへ」

 わたしは照れながら後頭部をかいた。


「ラブラブですね。羨ましいですわ」

 九条さんが近づいてきた。


「九条さん。鳴海さんと素晴らしい試合をありがとう」


「敗北の屈辱で奥歯をかみ砕く寸前ですわ。まだ七瀬さんの試合が残っています。見てあげてください」


 予選敗退した九条さんと二ノ宮さんが声を張りあげて七瀬さんを応援している。

 胸が締めつけられる。どちらかが勝てば、どちらかが負ける。それが勝負の世界なのだ。


 わたしは歓声を呑みこんだ。コトジョ組はみんな同じ思い。自分たちが勝ちたいが、九条さん率いる鳳女学院茶道部組にも頑張ってほしい。


 最後の試合。七瀬さんはタイムアップ寸前まで果敢に敵のライフを削っていく。

 あと二秒! ライフで勝っている七瀬さんがバックステップをした瞬間、対戦相手に隙を突かれてKOされた。


 九条さんと二ノ宮さんは七瀬さんに駆け寄って泣いていた。

 格闘ゲームに青春を捧げた乙女三人。志は大会優勝だったろう。


 涙目で七瀬さんが近づいてきた。彼女は赤い目で姫川さんに視線を送った。

「姫川さんが決勝で戦う相手のくせを教えてあげますよ。小技連打からしつこく上下に揺さぶって長いコンボを極めてきます。へへ、絶妙なアシストしちゃったっす。感謝してほしいっすね」

 


「OK! 七瀬さんありがとう。打ちあげ一緒にやろうか。詩乃、会場抑えといて」


「あいよ。カラオケボックスでいい?」

 折笠さんはスマートフォンでポチっと予約した。


 そのとき場内アナウンスが鳴り響いた。

『これよりGEBO一日目。メディウム・オブ・ダークネス決勝を行います。選手は壇上へ』


「行くよ。千尋!」


「はい! 天音さん!」


 姫川さんに先導されて壇上へあがる。

 拍手、そしてスポットライト。

 わたしはときめいた。


 人生で主役になることなんてないと思っていたから。

 姫川さんが世界線を変えてくれたんだ!


 以前なら委縮してしまうような光景も、努力が報われた瞬間と思うと誇らしい。

 わたし、変われた気がする。


 決勝進出者はみんな壇上へ出揃った。

 第一リーグ突破者 ナルミン【キース】

 第二リーグ突破者 ドドルチェ【ベルナディス】

 第三リーグ突破者 ヴァージル【アルフレッド】

 第四リーグ突破者 (パク)銀優(ウヌ)【グルガン】

 第五リーグ突破者 ズヴィズダー【シャフト卿】

 第六リーグ突破者 呉敘雅(オソア)【シオン】

 第七リーグ突破者 有給の冒険者【クレリア】

 第八リーグ突破者 プリンセス・H【アストリア】


 ナルミンはわたしのリングネーム。プリンセス・Hは姫川さんのリングネーム。さすがに本名で大会に参加するのははばかられるのでリングネームを使用していた。


 プリンセス・Hはわたしがアドリブで登録した名前だ。

 ひとりずつリングネームを呼ばれ紹介される。


『見事に使用キャラクターがばらけましたね。こんなことはめずらしいです。格闘ゲームは研究が進むと強キャラと弱キャラの分類が進み使用キャラが限定されてくるものなのです。MODはメジャーじゃないが、バランスだけは奇跡といわれているだけあります』

 解説員も盛り上げる。


 決勝はNyanTuleでほぼリアルタイムで全世界配信される。それがeスポーツ部発足のための実績になるはずだ。


 わたしはドキドキがとまらない。それだけではなかった。高揚感が全身に力をみなぎらせる。


 決勝進出者はほとんど日本人だがヴァージルはワシントンからやって来た日本文化オタクの白人。


 朴銀優さんと呉敘雅さんは韓国人。黒い服を着た背の高い呉敘雅さんは女性でモデルのよう。折笠さんもセクシー女優並みの体型だけど、それとは違う洗練された美貌の持ち主である。


 呉敘雅さんがわたしと姫川さんに握手を求めてくる。わたしは韓国語ができないのであたふたした。


「大丈夫。わたし日本語話せます。わたしは韓国でモデル兼プロゲーマーをしています。嬉しいです、日本にも格闘ゲームをする女の子がいるのね。わたしのことは敘雅(ソア)と呼んでほしい」


 なんと気さくな女性だろう。だがこの女性と姫川さんは準決勝で戦うことになるのだ。


つづく


【韓国人の名前は一般的な韓国人氏名を参考にしました。実在の人物とは一切関係がなく、同姓同名の方がいらっしゃっても同様に無関係です】




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