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聖少女暴君  作者: うお座の運命に忠実な男
第六章 姫川さん落命
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6-1 死因学生カップルコンプレックス

【週末 金・土・日 定期更新です!】

【読者さまへの情報の開示】


 わたしこと鳴海千尋は天文部に入部して、部長である姫川天音さん、副部長の折笠詩乃(しの)さん、そしてわたしと同じ一年生の村雨初音さんとともにeスポーツ部発足のための部員集めと実績をつくる活動をしていた。


 わたしの誕生日である一〇月一九日も過ぎ、一一月を迎えようとしていた。

 一一月には二年生の修学旅行がある。


 姫川さん、折笠さんの二年生組は三泊四日で京都へ!

 修学旅行から帰宅した翌日が国内最大のゲーム大会GEBO当日というハードスケジュール。


 わたしたち一年生組はそわそわしていたが、とうの姫川さんたちは楽しみにしているそうだ。


 まさか、まさか、この修学旅行から姫川さんが帰らぬ人になるなんて思ってもみなかった。姫川さんのような特別な人は神さまが手元に置きたがるのかもしれません。

 この物語にここまでおつき合いしていただいた読者さま方、覚悟してください。


 それでは姫川さんが駅のホームに転落して帰らぬ人となった最後のエピソードを公開したいと思います。第六章『姫川さん落命』です。



 修学旅行当日。

 姫川さんたち二年生はバスで新幹線の駅まで出発した。

 早朝だが姫川さんと折笠さんを見守るために早めに登校したわたしは天文部の部室から手を振った。


「おみやげ期待しててね!」

 わたしに気づいた姫川さんは可憐な声を張りあげて手を振った。



 わたしと村雨さんはいつも通りに授業を受けた。

 その日の午後。そろそろ新幹線が京都に到着する時間帯だ。


 わたしはスマートフォンが振動していることに気づいた。

 マナーモードにしているが、着信通知だ。


 お昼休みはあと五分で終わろうとしてる。

 妙な胸騒ぎを感じながらスマートフォンを耳にあてた。


『やっとでてくれた』

「その声は折笠さんですか?」


『落ちついて聞いて。ヒメが駅のホームに転落して新幹線に轢かれた……【ブツッ】』


「なんですとー‼ 折笠さん、どういうことですか⁉ 折笠さん⁉」

 通話は切れている。



 わたしは全身の血液が沸騰して泡立つような不快感に包まれた。

 姫川さんが……。姫川さんが新幹線に轢かれたということは、彼女はもう……




 折笠さんから姫川さんが駅のホームに転落したという一報を受けたわたしは授業どころではなかった。

 護国寺先生も修学旅行の引率で校内にいない。担任教師に問い合わせてもらおうとしてもそんなばかなことがあるわけないと取り合ってもらえない。


 授業も頭に入らず部活で村雨さんに会うと溢れでる涙をどうすることもできない。姫川さんがいなくなったら天文部は空中崩壊するだろう。eスポーツ部を立ち上げる話も酷暑の蜃気楼のごとく消滅だ。


 情報を共有した村雨さんは泣かなかった。毅然とした態度でわたしを睨んだ。


「わたくしは信じません。お姉さまの死体を目の前にしても。心臓を暴いて、停止を確認するまではお姉さまの生存を信じます」


 その声は震えていた。内臓を搾りだしてひりだした、か細い強がりだ。


「もしお姉さまがわたくしを置いて天に旅立たれるならそのときは殉死します」


 村雨さんはくちびるが出血していた。下くちびるを噛み千切りそう。


 わたしたちから折りかえしても折笠さんも姫川さんも通話にでることはなかった……

 事態が収集しないまま修学旅行期間が終わった。


 わたしと村雨さんは授業を無断欠席してバスから引率の護国寺先生が降りてくるのを待った。


 長身の彼の姿を見るなり爪がくいこむほどに腕をつかむ。


「姫川さんは?  姫川さんはどうなったんですか‼」


「おまえたちか。あとがつかえているから部室へ行こう」バスの階段を下りた先生も顔色が悪い。



 いつもの天文部部室もモノクロに色褪せたよう。

 わたしたちはつばを呑んで彼の紡ぎだす言葉を待った。


「姫川は京都駅で駅のホームに転落した」


「やだーっ! うそだといってよ。先生!」


「原因は? 原因はなんなのですか」


「駅のホームで学生カップルのキスシーンを目撃したらしい。意識を失った姫川は倒れ込んでそのまま……」


 血の気がひいていく。

 姫川さんは進行性の難病『学生カップルコンプレックス』に冒されている。


 村雨さんが気を失い倒れた。

 護国寺先生がかろうじて彼女の後頭部が机に激突するのを防いだ。


 わたしももうだめ。

 ストーリーテリングやめます!


「ふたりとも、話を最後まで……」護国寺先生は会話をつづけようとしたが、鳴き声と心を吹き荒れる暴風にさえぎられてしまった。


「やだーっ! こんなのってわたしはやだよう。姫川さん!」

 声をあげて涙も鼻水も拭うことなくわめきちらした。


つづく






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