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聖少女暴君  作者: うお座の運命に忠実な男
余命一年のヒロイン編 エピローグ
149/153

エピローグ1 卒業式

 あっというまに三月になり、今日は先輩たちの卒業式当日。


「行ってきます」

 わたしこと鳴海千尋は弟の遺影に挨拶して玄関をでた。


 春光がわたしを穏やかに照らした。気持ちの良い一日になりそうだ。


 八時。体育館入り口にて保護者・来賓の受付が開始。わたしたちは教室で待機した。


 九時。在校生が体育館に入場。指示にしたがい席についた。つづいて職員・保護者も入場した。護国寺先生やスクールカウンセラー小山ひかりちゃんも正装している。


 保護者席には姫川さんのマーマや折笠さんのパパさんの姿もあった。


 卒業生が拍手によって迎えられた。姫川さん、折笠さんの制服姿を見るのも今日が見納めだ。


 卒業証書授与式が開始された。吹奏楽部の演奏がはじまる。


 一同礼。新校長による開式の辞。国歌斉唱。そして卒業証書の手渡し。リハーサル通りだ。


 姫川さんが名前を呼ばれ立ちあがった。彼女の立ち振る舞いは聖少女そのもの。校長に最敬礼して証書を受け取った。


 折笠さんも同様。姫川さんの聖少女が乗り移ったかのよう。感動するほどの立派な立ち振る舞いだった。


 卒業生代表の言葉。部活で目覚ましい実績をあげた姫川さんが選ばれた。


 彼女は壇上にあがり、マイクを手に取った。

挿絵(By みてみん)


「在校生の皆さん、ご家族の方々、そして教員の皆さま、おはようございます。

 本日を迎えることができたことを嬉しく思います。中学のとき、ある人に振られてついカッとなって入った女子校、不純な動機でした」


(ここで会場客の笑いが入る)


「あたしはこの学校で親友と出会えました。あたしを見捨てない指導者に巡り合えました。

 可愛い後輩たち、先輩風吹かせて申し訳なく思っています。あたしなんかについてきてくれてありがとう。特殊相対性理論における現象が自らの身に起こっていると錯覚するほど三年間あっという間でした。

 語りつくせぬ想いはございますが、タイムスケジュールも押しているのでここまでにしたいと思います。重ねるようですがあたしたちの物語に付き合ってくださった方々に深い感謝を捧げます」


 彼女は最敬礼した。聖少女暴君の卒業式、圧巻だった。わたしは滂沱(ぼうだ)の涙。


 もう彼女と折笠さんの夫婦漫才を部室で見ることはできないのだ。


 道に迷ったとき、姫川さんはいつも答えをくれた。たった一歳しか歳が違わない彼女はどんな困難にも大胆不敵に切り込んでわたしたちに道をつくってくれた。


 本当の彼女は過去に傷ついた繊細な少女。自らの傷を燃やすかのように光り輝いていた。そんな彼女にわたしたちは惹かれていた。


 在校生の言葉はわたしこと鳴海千尋が担当する。姫川さんと組んでゲームの世界大会に出場したからだ。わたしは涙を拭いて立ちあがった。


「卒業生の皆さま、卒業おめでとうございます。あなた方がわたしたちと肩を並べて二人三脚してくれたことを誇りに思います。

 先輩方と過ごした日常がどれほど尊かったか、いまごろになって気づいたわたしは戦慄を隠せません。

 卒業後はそれぞれの進路に進まれ道が分かれてしまいますが、志が同じなら、ふたたび道が交わることもあるでしょう。その日を楽しみにしています」


 開場の拍手が卒業生、そして在校生を祝福する。


 拍手の音っててんぷらを揚げる音に似ているよね。先輩たちの卒業式にこんなことを考えているわたしっていったい……。

挿絵(By みてみん)



琴流女学院 校歌斉唱


(一番)

 時代の流れに身を任せ逆らわず

 ことながれ ことながれ

 文武両道できたらいいな

 あちらを立てればこちらが立たず

 乙女の青春 体が資本

 終わりよければすべて良し

 弱音・泣き言を謹んで

 良い言霊を心掛け

 乙女の明日はどちらでしょう

 あなたが知らなきゃ誰も知らない

 人の流れに身を任せ逆らわず

 波風立てず

 ああ ことながれ ことながれ


(二番)

 涙を流したらそらを見あげてごらん

 虹がでているかもしれないよ

 あなたが泣いた夜

 守護天使も泣いていた

 孤独もみんなで分けあえば

 幸せに化学変化

 人生は一度きりのステージ

 とびきりの笑顔で舞台にあがろう

 笑う門には福来る

 愚痴・悪口を謹んで

 良い言霊を心掛け

 乙女の明日はどちらでしょう

 あなたが知らなきゃ誰も知らない

 世間の時流に身を任せ逆らわず

 波風立てず

 ああ ことながれ ことながれ




 みんな泣いていた。姫川さんも折笠さんも、村雨さん、黒咲ノアちゃん、護国寺先生も、ひかりちゃんも。そしてわたしこと鳴海千尋も。走馬灯のように想い出が駆け巡る。


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イラストレーターはイナ葉さま(Xアカウント@inaba_0717)

無断転載・AI学習禁止です。


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