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聖少女暴君  作者: うお座の運命に忠実な男
余命一年のヒロイン編 第一〇章 エピローグ前に大波乱!?
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10-4 護国寺先生が異動!? そのとき村雨は!?

「おれからも発表がある。この学校を去ることになるだろう。来年度は違う学校に赴任する」


 護国寺先生の発言は音のない衝撃とともにわたしたちの大脳と霊魂を駆け抜けた。


「いつ決まったの?」


「そろそろだと思っていた。正式な告知は三月だが」


「やっぱり去年の謹慎処分が……」


「それは関係ない。新しい職場では正規雇用される」


 一同護国寺先生を拍手した。苦労人の彼が報われるときがきたのだ。


 村雨さんが持っていたスマホを落とした。スマホカバーにひびが入る。彼女の心のように。


「村雨さん、大丈夫?」


「わたくしはどうすれば……結婚してないのに未亡人になってしまいます」


「村雨さん、先生は死ぬわけじゃないよ」

 わたしは汗をかきながら指摘した。彼女は錯乱している。


「村雨さん、きみがこの学校を卒業しても想いが変わらなければ交際しても良いと考えている。それまでは文通しよう」


 村雨さんは眼鏡を放り投げ彼に抱きついた。


「信じていました! わたくしの愛は通じると。ムチュー」


 くちびるをすぼめて接吻しようとする彼女を彼は引きはなした。


「ヒューヒュー」


 姫川さんと折笠さんが茶化す。護国寺先生は怒らなかった。この学校に入学してからの想いが報われた瞬間だった。


「では婚姻届をだしましょう。わたくしは護国寺先生との婚姻届を肌身離さず持ち歩いています」


 村雨さんは懐からほかほかに暖まった婚姻届を取りだした。


「書いた覚えがないぞ! 公文書偽造は法律違反だ。それにいますぐはだめだ」


「良かったね。村雨さん。いまはだめってことは近い未来ではOKってことじゃない」


「そうですね。ありがとうございます。鳴海さん」


「でも先生がいなくなっちゃたらeスポーツ部はどうなるのでしょう。わたし部長として心配です」

 わたしこと鳴海千尋は新年度の部長を任されたのだ。


「新しい顧問が担当するだろう。引き継ぎはするつもりだ。心配するな」

 彼はわたしたちを見回した。


「おまえたちのことは忘れられそうにない。おれが同窓会を開いたら来てくれるか?」

挿絵(By みてみん)


『はい、喜んで!』女子全員異口同音。


 護国寺先生は眼鏡を外して裸眼になった。わたしたちは息を呑んだ。わたしたちははじめて彼の素顔を見たが、端正で彫りが深い美青年だった。年齢より若いタイプで、アイドルと比較して遜色ない。


「先生、わたしの彼氏になって!」

 折笠さんが飛びつくように発言した。


「なにを言ってるんだ。さんざんおれのことをばかにしていただろうが」


「イケメンじゃん。なんでコンタクトにしないの」

 折笠さんは心底もったいない顔をした。


「コンタクトの年間費用がいくらだと思っている。おれは将来のために貯蓄しているんだ」


「不倫です! 結婚する前から不倫です!」

 村雨さんが激怒した。


「眼鏡を外した先生ってあたしの初恋の人に似てるかも……」

 姫川さんまで物欲しそうな顔をする。


「みんなやめてください! わたしだって権利ありますよね。ストーリーテラーとして作品に貢献したんだから!」

 わたしだって彼氏ほしいよ。一生処女はいやだ。


「みんなひどい! 全員と刺し違えてやるー‼」

 村雨さんの絶叫。


「みんなガキっすね。盛りのついたメスネコみたいですよ」

 黒咲ノアちゃんだけは右目の眼帯をもてあそんで余裕しゃくしゃく。


「ノア! あんたどういうつもりよ⁉」

 折笠さんがいらだちをぶつける。


「ボク、彼氏いるんで」


「なにィ⁉ あんた、師匠よりさきに彼氏つくるってどういうことよ?」

 姫川さんは顔を真っ赤にしている。


「彼氏いるから、女子校に入っても困らないんです。彼氏いない人が女子校に入ったら三年間処女です」


『うるせーよ!』

 姫川さんと折笠さんが涙目で怒鳴った。


「あ、ボクこのあとデートあるんで失礼します。アビュー」

【アディオスとラブをかけたノア言語】

 ノアちゃんは教室を去り白銀世界に消えていった。


 彼女が去ったeスポーツ部の部室は静まりかえった。

 姫川さんがあらたまってわたしたちを振りかえった。


「帰ろっか」


「ヒメ。なんか食べていこうよ」

 折笠さんが提案する。


「わたくしもご一緒してよろしいですか。さきほどの暴言はなかったことにしてください。動物の世界では一夫多妻は珍しくありません。本能にしたがいます」


 村雨さんも同行する。さきほどまで沸騰していた彼女はすでに冷静さを取り戻していた。発言の真意は正気を疑わざるをえない。


 部室にはわたしと護国寺先生が残った。


「きみは帰らないのか?」


「この教室をよく見ておきたいんです」

 天文部の部室で泣いたり笑ったり。それももうすぐ終わる。わたしは微笑んでいた。


「帰ります。ありがとうございました」

 わたしは最敬礼した。先生とこの教室に。

挿絵(By みてみん)


「皆さーん、待ってくださいよう!」


 護国寺先生がわたしたちの背中を見て『聖少女暴君』とつぶやいた気がする。



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イラストレーターはイナ葉さま(Xアカウント@inaba_0717)

無断転載・AI学習禁止です。


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