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聖少女暴君  作者: うお座の運命に忠実な男
余命一年のヒロイン編 第九章 クライマックス! 世界大会GERO
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9-21 祭りのあと

 レンコンさんチーム、ペチュニアさんチーム全員で集合写真を撮った。ちゃっかりひかりちゃんも列に加わっている。


 帰宅の途についたわたしたち。会場の外にでるともう夜。街明かりで星空はかすんでいる。街のネオンが天空の星々より自分たちのほうがきらびやかだと自己主張している。


 ひかりちゃんは大はしゃぎだった。


「ゲロってゲームの大会だったのね。最初に言ってくれればいいのに」


「なんども説明してます。ゲロじゃなくてGEROだから」


「ピコピコもこんなに進化していたのね!」


「ピコピコって、ひかりちゃんいつの人だよ」


「そういえばさあ、ひかりちゃんが言ってた護国寺先生を救う魔法ってなんだったの?」


「ああ、あれはね、もう必要ないから破棄しちゃうけど、ネタ晴らししてもいいか。新しいメアドを取得して校長にメールするつもりだったの。

 文面は『あの日職員室にいた心ある人間です。護国寺先生の謹慎の原因となった校長先生の発言を偶然にも録音していました。護国寺先生の処分を取りけさない場合、マスコミにリークします。三日以内に決断しない場合も同様です。わたしと同じ志の人間はひとりではありません』」


「それって完全に脅迫……!」


「いいのよ。わたしを敵に回すってことはすべてを失うことだから」


「怖いよ、ひかりちゃん!」

 傑物の姫川さんですらおびえている。


「小山ひかりのモットーは、恩は二倍に、恨みは三倍に」

 ひかりちゃんが指を立てる。


「あたしと同じだ」

 姫川さんの発言に全員が笑壺に入り笑い転げた。


「あんまり笑ったからメール送信しちゃった」

 ひかりちゃんは手持ちの携帯電話を誤操作してびっくり。


「校長先生可哀そう」


「いいのよ。校長のことなかれ主義にはうんざりしてたし。琴流(ことながれ)女学院だけに」


「それな」折笠さんもひかりちゃんに賛同。


「そうだ。賞金渡して」

 ひかりちゃんは手を差しだす。


「なんで?」

「没収します」

「ええー!」


「女子高生が手にしていいお金じゃないわ。学校で預かります。護国寺先生から聞いてないの」


「あったね。そんな話」


「この賞金でブランド品いくつ買えるかしら。奨学金だって一括返財できるわね。ひひひ」


「ひかりちゃん、あたしたち約束通り優勝したよ。護国寺先生への暴言を彼に謝罪して。さもないといまの発言を拡散する、まじだよ」


「姫川さん、わたしを脅すつもり⁉」ひかりちゃんが目を見開く。


「うっしー、ひかりちゃんの言葉でめちゃくちゃ傷ついてた。婚活アプリに手をだして詐欺被害に遭いそうになったんだから」


「わかったわよ。姫川さん、わたしを脅すなんて恐ろしい子」


 そのとき一同は花園神社の前まで来ていた。


「御礼参りをしましょう」

 村雨さんの提案にわたしたちは従った。


 花園神社さまの本堂と芸能浅間神社さまに御礼参りをして西武新宿駅へ向かう。

 そのとき、駅のホームで学生服を着たカップルが熱烈に抱擁してキスをしていた。


 学生カップルコンプレックス!


「ヒメ、見ちゃダメ‼」

「もう遅い。見ちゃった……」


「心臓は⁉ 心臓は大丈夫?」

「あれ……、なんともない。あたし、生きてる」


「どうして?」


「わたくし、思い当たることがあるのですけれど」村雨さんが挙手した。「お姉さまは護国寺先生に抱き着いたり、キスしたりしてましたよね? 彼はハンサムで誠実な男性です。彼と親しく接することで体内に学生カップルコンプレックスに対する抗体が生まれていたのではないでしょうか」


「うっしーが、あたしを救ってくれた……」


「天音さん、奇跡ですわ!」九条さんが拍手した。


「お姫さま、良かったね」

 恋ちゃんはぴょんぴょん飛び跳ねている。


「きっと神さまが奇跡を起こしてくださったのです。わたくしは実家の譲羽神社にお百度参りをしていました」


「そうだったのね。ありがとう。初音」


「あっ、そうそう。つぎの部長は鳴海さんにやってもらうから」

 折笠さんが思いだしたように話した。


「わたしですか⁉」わたしこと鳴海千尋は逡巡した。……「はい、わかりました」


「おっ、潔いね」


「村雨さんには小説があるし、わたしがやります」


 わたしを見るみんなの目が違うことに気づいた。


「どうかしましたか?」

「成長したね。千尋」


「わたしはいつもと変わりませんけど?」

「じゃあ、帰ろうか」


 鳳女学院組は本川越行きの電車を乗り継いで学生寮まで戻る。帰宅は深夜になるだろう。コトジョメンバーの姫川さんと黒咲ノアちゃんも途中まで彼女たちに同行した。


 路線が違うメンバーは解散した。


 護国寺先生の謹慎処分は解け、ひかりちゃんのメールによって疑心暗鬼になった校長はメンタルを病んで依願退職した。


 やりすきだよ、ひかりちゃん……。新しく赴任した校長先生はフレキシブルな視点を持ったエレガンスな女性だった。すべてが丸く収まった。


 読者さま方、ここまでお読みいただきありがとうございました。

 こうして『聖少女暴君』のクライマックスは終了してエピローグに入ります。

 最後までおつき合いいただけますと幸いです。



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