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聖少女暴君  作者: うお座の運命に忠実な男
余命一年のヒロイン編 第九章 クライマックス! 世界大会GERO
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9-17 九条沙織

 じゃんけんで代表の姫川さんが勝ったのでわたしたちは1プレイヤー側。さすが姫川さん。

 1Pと2Pで同時にコマンド入力したとき、1P側がさきに処理される分、有利なのだ。


 先鋒の九条さんがグローブをはめなおす。その真剣な眼差し。照明に照らされた黒髪は名画のごとく。

挿絵(By みてみん)


 彼女はさきに対戦台に座った。

 九条さんは魔法剣士ラウニィを選択。対する韓国チームの(チェ)始友(シウ)さんは蒼の騎士ユークスで闘う。


 ユークスは原作小説では一説に聖エルファリア王国四天王最強ともいわれたが活躍シーンは乏しかった。


 ラウニィは原作でユークスに勝利した過去を持っている。ゲームではどちらが強いのか。


 試合開始と同時にラウニィは飛び道具の『エレガンス・ニードル』を連射。削り殺す勢いである。九条さん、容赦ない。


 ユークスは必殺技『チャージ』を発動。防御力がアップして、ダメージを受けてものけぞらなくなる。チャージの効果を使っていっきに距離をつめた。


 ラウニィは突進必殺技『ノーブル・ブラッド』で撃退しようとしたが、ユークスは直前でジャンプ。ユークスの強キックがラウニィにクリーンヒットする。そこからの小技連打の連係攻撃がはじまる。韓国勢が得意な戦術だ。


 ラウニィはバーストで全身無敵になり、『ノーブル・ブラッド』を発動! ユークスの必殺技『パトリオット・ペネトレーション』が同時にぶつかった。


 相殺が発生する。一定時間内にボタンの連打回数が多いほうが有利になる。


 プレイヤーふたりは壇上が振動していると錯覚するほどボタンを連打!

 打ち勝ったのはラウニィ。九条さんは男性の崔さんに連打で勝った。


「見てください。天音さん。九条さんのグローブが……!」


 九条さんの右手のグローブが破れている。白魚のような指に赤いものが見える。血だ。ボタン連打で皮が剥けたのだ。


「やばいね。沙織のグローブは力を制御するためにつけているの。沙織の本能がむきだしになる。いい? 千尋。沙織が暴走したらあたしたちで止めるよ」


 わたしこと鳴海千尋はつばを呑んだ。九条さんにそんな設定があったなんて。


 九条さんは自らの血を嘗めとりすべりをとめた。


 ラウニィが高く跳躍する。ユークスは身構えた。ラウニィは超至近距離で空中必殺技『ラグナロク・ウェーブ』を発動。ユークスのライフを削る。


 着地したラウニィは有利な状態。ラウニィの超必殺技『絶対零度フリージング・ワールド』が発動。画面が暗転する。


 氷結のハリケーンとともにラウニィの乱舞が極まる。ユークスのライフを大幅に減らした。


 ユークスは反撃として起き上がりに超必殺技『クレスト・オブ・ブルー』を発動!  


 蒼いオーラをまとって突進乱舞する。


 ラウニィはまともに喰らってしまう。かろうじて生き残ったラウニィは誰もが体勢を立て直すためにバックステップすると考えた。


 ところが彼女は前ダッシュで接近! 敵の直前で低空ジャンプキック。しゃがみガードできない中段技がヒット! さらに空中キャンセル『ラグナロク・ウェーブ』発動! ごりごりとユークスのライフを削り彼をKOした。


 お互いにライフがわずかな状態で競り勝った九条さんのKO勝ち!


 崔さんが韓国語で言った言葉を彼の仲間たちが通訳してくれた。


「対戦ありがとう。女性に連打で負けたのは生まれてはじめてだよ。世界は広いね」


 崔始友さんは青空のような笑顔で九条さんと握手した。すがすがしい人だ。


「あたくし、指から出血しました。女の血は安くないですわよ」

 九条さんも名花を思わせる優麗な笑みを浮かべた。


 まずは一勝。わたしは九条さんに駆け寄ろうとして、姫川さんに静止された。


「まだ終わってないよ。勝抜戦だから。一度試合がはじまってしまえばあたしたちは見守ることしかできない」


 九条さんは白薔薇の刺繡のハンカチで自らの指の血とアーケードコントローラーをふき取った。白薔薇が紅に染まり、赤い薔薇のようだ。


 審判がドクターストップをかけるか問うたが、九条さんは拒否した。


「あたくしはいついかなるときもベストコンディション。無用な心配です」


 九条さん男らしい! ……女だけど。


 呉敘雅(オソア)さんが対戦台に座る。彼女は流暢な日本語が話せる才女だ。


「無理しないでね。女の子が人前で血を流すものではないわ。闘うからには容赦しないけれど」


「お気遣い心より感謝いたします。あなたの言う通りご容赦無用。それが最大の礼儀と心得てください」


「あなたのこと好きになれそうよ」


 呉敘雅さんはムクゲの花を思わせる優艶な笑みを浮かべる。

「それはすべての試合が終わってからお願いします」

 第二試合がはじまる。


 九条さんのラウニィは残りライフがわずか。対する呉敘雅さんのシオンのライフは満タン。圧倒的不利な状況のなか、九条さんは粘り強く戦った。


 タイムぎりぎりまで対戦相手の体力を削り、ラウニィは敗北した。残りタイムに合わせてシオンのライフは回復したが、四分の一は減った状態。大幅に有利な状態で次鋒につないでくれた。



つづく



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イラストレーターはイナ葉さま(Xアカウント@inaba_0717)

無断転載・AI学習禁止です。


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