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聖少女暴君  作者: うお座の運命に忠実な男
余命一年のヒロイン編 第九章 クライマックス! 世界大会GERO
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9-16 世界大会GERO決勝

 世界大会GERO決勝戦の対戦相手は韓国チーム。(パク)銀優(ウヌ)さん、呉敘雅(オソア)さん、崔始友(チェシウ)さんの三人。


 朴さんと呉さんは以前GEBOで闘った相手だ。とくに姫川さんは朴さんとGEBOの決勝で闘い敗北した因縁の相手だ。崔始友さんとは初顔合わせ。


 いままで集中しすぎて聞こえなかったナレーションが響いた。


「GEROの決勝は韓国チームVS日本人女性三人のレンコンさんチーム! 韓国チームはGEBOの優勝者をふくむ三名! 日本チームは女性初の格闘ゲーム世界大会優勝に王手! 歴史的快挙だ!」


 格闘ゲームの世界大会で女性優勝者がでたことはない。わたしたちレンコンさんチームは史上初の快挙に王手をかけたのだ。


 姫川さん、九条さん、そしてわたしこと鳴海千尋の三人はステージに招待された。ここからはセコンドもつかない。セコンドの折笠さんと別れをつげた。


「ヒメ、勝って! あなたが勝ったらわたしが持ってるものなんでもあげるわ」


 折笠さんが艶のある可憐な声で姫川さんを応援した。姫川さんは陽光に似た笑みをかえす。言葉はなかった。


 まばゆいライトに照らされ、会場全体の視線を浴び、決勝の舞台に立った。韓国チームと相対する。


 既知の顔を見て朴銀優さん、呉敘雅さんは微笑んだ。それぞれにマイクが渡されて試合前のやり取りが行われる。


「これはこれは。誰かと思えば以前の大会でぼくに負けたお嬢さんたち。救急車で運ばれていたが、大丈夫だったんだね。安心したよ」


 姫川さんは憮然とした。敗北したことも、学生カップルコンプレックスが発動して救急搬送されたことも面白くない。


「女子、一年会わざれば刮目(かつもく)して見よって言うでしょ? 負けないよ」


「三国志演義の故事だね。士、三日会わざれば刮目して見よ。ふっ、日本人は三国志が好きだね。日本人はほかの国の文化より自分の国の文化を大切にすべきだ」


 朴さんは眼鏡に触れてわたしたちを一瞥した。


「忠言耳に逆らうとはこのことですわ。ですが、ほかの国の文化を取り入れる日本人の柔軟性がゲーム文化を発展させた。そして、あなたもその日本のゲームに興味を持ったのではないですか?」


 九条さんが一歩前に進みでた。ギャラリーから拍手が沸き起こる。


「これは一本取られたわね。銀優。勇ましいお嬢さんだこと。今回はプロゲーマー仲間の崔始友と組んで大会に参加したの。彼は強いわよ」


 紅一点である呉敘雅さんが間をつくろう。


 崔始友さんは三十代・筋肉質の男性で黒いズボンと白いシャツを着たハンサムな人だった。寡黙だが威圧感がすごい。護国寺先生と同年代ということはゲーム歴も長かろう。強敵になりそうだ。


「ほら、千尋もなんか言って!」


「わたしですか⁉ 朴銀優さんも呉敘雅さんもお元気そうでなりよりです。日本という国を楽しんでくださいね」

 会場全体が失笑に包まれた。


 わたしの発言に韓国チームも苦笑している。


「敵に塩を送ってどうすんの?」姫川さんに怒られた。


「すみましぇーん」


「いやいや、嬉しいよ。紳士的にいこう。正々堂々とフェアな試合をしようじゃないか」


 朴さんは握手を求め、姫川さんも笑顔で応じる。ほかのメンバーもわたしたち全員と握手した。この会場にいる人は選手も観客も格闘ゲームでつながった仲間たちだ。フラッシュが一斉にたかれる。


 二一世紀。世界中で差別と分断が広がりつつある。思考レベルを疑う政治家たちが国の代表になり、マスコミが悪意だけを拡大してそれに影響を受ける人々がいる。


 この会場にいる人たちはそんな人たちじゃないと信じたい。未来の子どもたちに、地球は素晴らしい星だと胸を張って言えるようになりたい。世界大会の壇上で、わたしこと鳴海千尋は哲学していた。


 姫川さんがマイクを奪い取った。


「あたしたちはあなたが執着している伝説のゲーマー・フリーペーターに指導を受けた。負けないよ」


「なんだと? 本当かい? 嬉しいよ。彼はまだゲームをつづけていたんだね。本人と闘いたかったところだが、きみたちを打ち負かして彼を引きずりだしてやる」


 朴さんは数年前来日したとき、フリーペーターを名乗るゲーマーに敗北した。そのフリーペーターはわたしたちの指導者、護国寺先生だったのだ。


 会場のボルテージはクライマックス。試合開始まで秒読みである。


「闘う順番だけど……」姫川さんが作戦会議を開こうとした。


 九条さんが挙手した。


「あたくしが一番槍を務めます。最低でもひとり倒すことを確約します。一兵卒になりさがっても天音と千尋さんを表彰台に立たせます」


「沙織。ありがとう」


「わたしが次鋒をやります。天音さんは本番に強いですし、天文部からはじまったわたしたちの物語。最後の試合をするのは天音さん以外に考えられません」


Да(ダー)」姫川さんはロシア語で了解した。


「向こうも闘う順番が決まったみたいですわよ」

 九条さんの指先の電光掲示板に視線を送る。



先鋒 サヲリン(九条沙織)【魔法剣士ラウニィ】VS崔始友【蒼の騎士ユークス】


次鋒 ナルミン(鳴海千尋)【キース・ストライダー】VS呉敘雅【ソードマスター・シオン】


大将 プリンセス・H(姫川天音)【創竜刀アストリア】VS朴銀優【暗殺者グルガン】


 これまでわたしたちの物語に付き合ってくださいました読者さま方には感謝の念が堪えません。わたしたちの最後の戦いを見守っていただけますと幸いです。



つづく



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