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聖少女暴君  作者: うお座の運命に忠実な男
余命一年のヒロイン編 第九章 クライマックス! 世界大会GERO
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9-14 ロシアより愛を込めて

 レンコンさんチーム準決勝の相手はロシアチーム。


「ナルミンさん、プリンセス・Hさん、お久しぶりです。有給の冒険者です」


 突然声をかけられ見かえすと既知の顔があった。国内大会GEBOの決勝トーナメントで姫川さんと戦った有給の冒険者さんだ。


 ナルミンとプリンセス・Hは当時のリングネームである。ちなみに本名はいろいろと不便なのでこの大会でもリングネームを使用していた。


「おお! 有給の冒険者さん、元気?」


「決勝のあと、救急車で運ばれてましたけど大丈夫ですか?」


 姫川さんはGEBOの決勝で敗北して、カップルのキスシーンを目撃した瞬間に学生カップルコンプレックスが発動。救急車で運ばれたのだ。


「ああ、ちょっと心臓止まったけど大丈夫ですよ」


「ロシアチームのミーシャは強いですよ。ぼくも準々決勝で負けました。リーダーのニコラ、レフ、紅一点のミーシャ。ミーシャの当身技には注意してください。超必殺技を当身でかえされてKOしました。ものすごい精度です」


「ありがとう、有給の冒険者さん。その情報があれば勝てるかもしれない」

 姫川さんはわたしたちを振りかえった。


「当身に注意ですね。了解です」


「ナルミンさん、プリンセス・Hさん。優勝しちゃってくださいよ」

「そのつもり」



 有給の冒険者さんと別れたわたしたち。

「ミーシャ、まさかね……」

 姫川さんはなにかをつぶやいていた。


 わたしたちは対戦席に移動した。向かいにロシアチーム(ニコラ、レフ、ミーシャ)がいる。ロシアではMODの原作小説は発行されていないが、ゲームから興味を持ったという。作品がメディアミックスされると間口が広がり相乗効果を生みだすのだ。


「アマーニャ……。会いたかった」


  仔熊のめいぐるみを持ったミーシャが話しかけてきた。


「ミーシャ、やっぱりあなただったの。大きくなったね」


 ミーシャは姫川さんの幼なじみ。ロシア人クォーターの姫川さんが帰郷したとき二週間ほど心の交流をしたロシアでの親友だったそうだ。


 彼女も格闘ゲーム好きで、あっという間に意気投合したとか。舌足らずで天音さんのことを「アマーニャ」と呼び、いつも後ろをついて歩いていたとか。


「わたし、日本語うまくなったでしょう? アマーニャのために勉強した。お願い、ロシアに帰ってきて。あなたがいないと寂しい」


 捨てられた仔猫のように懇願する眼差しは、見るものを動揺させてやまない。


「ごめんなさい、ミーシャ。あたし、日本でやりたいことができたんだ。ロシアには帰れない」


「アマーニャはわたしと結婚した! あの愛の言葉はうそだったの?」


「あれは子どものごっこ遊びだわ。ごめんなさい、ミーシャ。勘違いさせたなら謝る」


 ふたりは幼き日、花の冠をつけて結婚式「ごっこ」をしてしまったのだ。


「いいわ。そう言うと思ったから。その子たちがアマーニャを惑わせているのね。やっつけてやる」


 ミーシャはぬいぐるみを強く握りしめて、わたしと九条さん、セコンドの折笠さんをシベリアの寒気を宿した瞳で睨んだ。



「九条さんが先鋒。ヒメが次鋒。鳴海さんは大将でお願い」

 セコンドの折笠さんがわたしたちの顔を交互に見る。


「わたしが大将ですか?」

 わたしこと鳴海千尋はびっくりして大きな声をだした。


「ミーシャの当身に対抗するためには『投げ』が決め手になる。当身技が無効なのは『投げ』、投げキャラが持ちキャラの鳴海さんは切り札になるわ」


「さすが詩乃。あたしが言おうと思っていたことを言ってくれた。この作戦でいきましょう」


 試合開始。九条さんのラウニィVSニコラのヴェスミラン。


 開始早々ヴェスミランが必殺技『アサシン・コンプレックス』で分身する。画面に表示された四つの影のうち、ひとつが本物だ。


 九条さんのラウニィは下手に動かず、本体の出現を見極める。背後に現れたヴェスミランは投げを仕掛け、ラウニィはまともに喰らってしまった。


 ダウンしたラウニィに起き攻めを仕掛けるヴェスミラン。ラウニィは起き上がりと同時に必殺技で反撃したが見切られていた。空振りしてしまう。


 そこにヴェスミランの必殺技『シャドウ・エッジ』がヒット! 達人の九条さんがここまで苦戦するなんて。


 格闘ゲームは相性も大切。相性が悪いみたいだ。


 ふたたび分身するヴェスミラン。九条さんは出現した本体に超必殺技『ノブレス・オブリージュ』を発動した。が、完璧なタイミングでガードされてしまう。


 Pディフェンスによって、大幅に有利になったヴェスミランの超必殺技『ナイトメア・ワールド』が発動!


 ラウニィが悪夢の檻に囚われ拷問がはじまる。


『わたしは悲鳴を聴くのが好きです。あなたはどんな悲鳴を聴かせてくれるのですか?』


 残忍なヴェスミランのヴォイスとともにラウニィはKOした。



「すみません。あのちまちま、ペチペチした攻撃が苦手で……」

 九条さんはわたしたちに謝罪した。


「気にしないで。沙織。あたしが取りかえす」


 姫川さんのアストリアは宣言通りにニコラのヴェスミランに勝利! 分身を見極め出現と同時にコンボを極めた。やっぱり相性は重要だ。



 つぎの試合は姫川天音VSレフ。

 姫川さんの持ちキャラは創竜刀アストリア。ロシアチームのレフのキャラクターは山賊の女頭領ベルナディス・ロウ。


 ベルナディスは大会ではあまり見られないキャラクターだが、大型アップデートでキャラクターランキングが大幅に上昇したため注目を浴びている。


 試合開始。

 アストリアは『オーラブレード発動』で攻撃力アップ。ベルナディスに斬りかかる。ガードの上からライフを削っていく。


 ベルナディスの反撃! 必殺技『プランターアタック』がヒット! 仲間の山賊を呼びだし攻撃させる。一進一退の攻防だった。


 ベルナディスの突進必殺技『クライム・クリミナル』とアストリアの『ラッシング・エッジ改』が同時にぶつかり合い相殺が起こる。プレイヤーのふたりはボタンを猛連打。


 打ち勝ったのはベルナディス。アストリアは吹っ飛んだが、そのあとベルナディスはなぜか攻撃せず。アストリアの反撃にあってKOされた。


 プレイヤーのレフが係員を呼ぶ。なんとボタンを連打したときにコントローラーが故障したらしい。新しいコントローラーを接続して、可能な限り同じ条件で再戦が行われた。


 姫川さんは辛勝した。準決勝の相手となると一筋縄ではいかないみたいだ。



つづく



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