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聖少女暴君  作者: うお座の運命に忠実な男
余命一年のヒロイン編 第九章 クライマックス! 世界大会GERO
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9-11 同門対決! 涙を超えて

 レンコンさんチーム(姫川天音、九条沙織、鳴海千尋)は順調に勝ち進んだ。


 内わけは第二戦アイルランドチーム。第三戦ブラジルチーム。第四戦フランスチーム。第五戦チリチーム。快進撃だ。


 レンコンさんチームはシード枠なので、八回勝利すれば優勝。あと三勝で世界大会優勝である。


 ついに準々決勝でペチュニアさんチーム(二ノ宮(れん)、村雨初音、黒咲ノア)があたるときがきた。


 わたしこと鳴海千尋をふくめた三人はペチュニアさんチームと向き合った。


「恋ちゃん、初音、ノア。さすがだね。ここまで勝ち抜くなんて」

 姫川さんはリップサービスした。


「ボクを誰だと思っているの。勝つためにやっているからね。お姫さまに勝って優勝するつもりだから。相手が九条さんでも手加減はしないよ」


 天才肌の恋ちゃんはまったく緊張していない。芸能人でもある彼女の取材スタッフがその様子をカメラで撮影する。


「恋ちゃん、貴方を格闘ゲームの道に引き摺りこんだのはあたくし。貴方とは闘いたくなかった。あたくしは因果律に想いを馳せる。せめて決勝で逢いたかった」

 九条さんが恋ちゃんの透き通った瞳を見つめる。


「九条さん、哀しいこと言わないで。ボクは嬉しいんだ。本気で九条さんたちと対決できることが」


 恋ちゃんは微笑んだ。その哀しみの色が混じった笑顔をわたしは一生忘れられないだろう。


「お姉さま」村雨さんが歩みでた。「わたくしが言いたいことは恋ちゃんが言ってくれました。もう言葉は要りません。小説家としては失格かもしれませんけれど」


 姫川さんに文字通り言葉はなかった。不敵に微笑む。彼女は対戦相手を前にして血がたぎっているのだ。それが同門対決でも!


「マスター姫川! 荀子いわく、青は藍より出でて藍より青しといいます。本日、マスターを超えさせていただきます。朱雀、青龍! ボクに力を!」

 黒咲ノアちゃんは眼帯と左腕の包帯を巻きとった。


 わたしこと鳴海千尋は胸が高鳴っていた。みんな素晴らしい仲間だ。出会いが星の数ほどあると表現する詩人もいる。だが、同じ星座を構成する星になれる人は限られている。


 わたしたちは「天文部」という星座だったのだ。


 限られた生のなかで、どれほど人の魂に触れられるだろうか。わたしはこんなにも愛する人たちに囲まれている。世界一の幸せ者だった。


 九条さんの背中越しに見える姫川さんは華奢な体格と反比例する生命力でわたしたちを導いてきた。照明に照らされた彼女の体躯は輝いていた。彼女の余命がいくばくもないなど信じられない。彼女のバイタリティを尊敬する。


 わたしはいまその女性と肩を並べているのだ。


「闘う順番だけど、鳴海さん、九条さん、あたしこと姫川の順でいこう」


「OKであります」

 わたしこと鳴海千尋は敬礼した。


「軍人じゃないんだから」姫川さんは苦笑した。「頼むよ。可能であれば三タテしちゃっていいから」(三タテ……三連勝)


 わたしは座席についた。ペチュニアさんチームは黒咲ノアちゃん、二ノ宮恋ちゃん、村雨初音さんの順番で闘うらしい。


 第一戦。

 わたしこと鳴海千尋の持ちキャラはキース・ストライダー。黒咲ノアちゃんはライナス・バストラル。キースは原作小説では悪役だが、相棒としていつもわたしの期待に応えてくれた。彼を信頼している。


 ライナス・バストラルは原作小説では死体回収屋として序盤に登場。作品全体に伏線をもたらした謎めいた魔法使い。


 ノアちゃんは眼帯と包帯を外した全力モード。侮れない相手だ。本気をだしたノアちゃんにはわたしでも勝てないかもしれない。


 試合開始。

『皆殺しだ』画面上のキースのヴォイスが響く。

『汚物のような男だ』ライナスも応える。対戦相手によって特殊掛け合いが用意されているのだ。


 開始早々、ライナスは飛び道具の『ショック・ウェーブ』をガンガン放ってくる。やっぱりそう来たか! 確実にガードして接近するしか勝機はない。


 ライナスは『ショック・ウェーブ』に混じって『エレメンタル・ケージ』を打ち込んできた。


 これは、ダメージはないが相手を一定時間行動不能にする捕縛魔法だ。飛び道具をふたつ持っているライナスは破格の扱いであった。ノアちゃんは飛び道具の強弱を撃ちわけスピードを変化させてくる。


「くっ」

 躱しきれず一発喰らってしまった。ライナスが超必殺魔法『サモン・グリムリーパー』を発動! 画面が暗転する。


 画面上に魔法陣が出現して死神が腕を伸ばす。全身を現した彼、あるいは彼女は白馬に乗った髑髏の騎士。タロットカードのナンバー13そのもの。ケージに囚われたキースは硬直して動けない!


 キースの生気が髑髏の騎士の持つ旗に吸い込まれていく。

 エフェクトが終わるとキースの体力が半分になっていた。


 わたしはつばを呑んだ。下級生のノアちゃんに負けたくない!


「千尋。平常心だよ」背中から姫川さんの声。


 わたしは息を吐いた。上級生の意地で力んでいたようだ。もう一度最初から。一歩ずつ近づいていく。ライナスの『ショック・ウェーブ』が飛んでくる。キースは垂直ジャンプで躱した。着地を狙って『エレメンタル・ケージ』が放たれる。わたしはそれを狙っていた。


 わずかな助走から大ジャンプ! 技の硬直中のライナスを強襲した。ジャンプ攻撃を警戒したライナスはレバーをガード方向へ。


 キースはそのまま着地。わたしは空中でコマンドを入力していた。地に足がついた瞬間、画面が暗転する。キースの超必殺技『裏切り者の断頭台』がさく裂!


 ライナスの体を軽々とリフトして、突き立てられた剣の真上に叩き落とす! 大型バージョンアップで追加された新必殺技である。


 ライナスのライフは大幅に減った。状況は五分五分。だが、お互いの距離は離れていない。


 キースは接近戦を得意とする。いまが攻めどきだ。もう一度つかみにいく。


 ライナスは投げ抜けで切りかえしてきた。相手にコマンド投げで捕まれたとき、【AB同時押し】で投げを無効にできるのだ。しまった! はじかれたキースに向かってライナスの『エレメンタル・ケージ』が放たれる。完璧なタイミングだった。


 わたしは超高速で全身無敵のバーストを入力。硬直が解ける!


 紙一重でエレメンタル・ケージを躱したキースは『皆殺しの乱舞』でライナスに斬りかかる。ライナスは魔法を諦め、魔導書を振り回し物理攻撃した。激突したふたりは同時に吹っ飛んだ。


 画面上に表示されるダブルKOの文字。引き分けだ。


「ボクは勝つつもりで闘ったんですけど。パイセンはやっぱりストロンゲスターだね」

【ノア言語で最強クラス】


 わたしは上気して呼吸も荒くなっていた。対戦台の向こうのノアちゃんを見やる。


「格闘ゲームって面白いね!」

 ノアちゃんは笑顔で返答した。眼帯と包帯を装着する。


「トゥルー!(その通りです)パイセンはやっぱり強いや」


つづく



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