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聖少女暴君  作者: うお座の運命に忠実な男
余命一年のヒロイン編 第九章 クライマックス! 世界大会GERO
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9-5 ついに登場! 護国寺先生のお姉さん。馬子!

「マコ姉さん、久しぶり」


 わたしたちは合宿場として自宅を貸してくださる護国寺先生のお姉さんにごあいさつした。


「おれが牛次郎の姉、西園寺馬子(まこ)。よろしく。使っていない離れがあるから使っていいよ」


 すごいな。都内に3LDKの一軒家。折笠さんは9LDKに住んでいるけど彼女は規格外だ。相当努力しなければ都内に一軒家は建てられないだろう。


「旦那は単身赴任しているから。子どもがいるけど気にしないで」


 室内に入り荷物を下した。小さな男の子たちがわたしたちを見て瞳を輝かせている。


「星ノ宮(れん)⁉」

 芸能人として活動している恋ちゃんを見て驚きサインをねだってきた。星ノ宮恋は彼女の芸名だ。もうひとりの男の子は折笠さんの豊満な胸元をガン見している。


「こらあ! 子太郎(ねたろう)! 虎次郎(こじろう)! おやめ。このエロガキが! 誰に似たのかしら」

 母親に叱責されたふたりは拗ねてしまった。気の毒だけどいま注力すべきは対抗戦。


 早速ミーティングに入った。


「合宿参加メンバーは本気のおれから一本とれるようになってくれ。同じメンバーで対戦すると癖がついてしまうからオンライン対戦も活用するように。

 GEROは三対三の勝抜戦。残りタイムに応じてライフが回復する。戦略が重要だ。チーム編成は合宿最後に発表する」

 護国寺先生の指導力は抜群だった。


 メンバーのうち、折笠さんと七瀬さんは予選突破できなかった。だが、フリー対戦メンバーとして合宿に参加してもらう。


「みんないい? あたしたちの人生はあたしたちがルール! シナリオを描くのはあたしたち! みんな準備はいい? これからは奇跡のジェットコースターだよ!」

 姫川さんが高らかに宣言した。


 わたしたちは研ぎ澄ますように対戦した。一ミリグラムでも連続技の精度をあげて、一ミクロンでも勝負強くなるために。



 そして合宿最終日にメンバーを誰と組ませるか、ミーティングが行われた。


「わたしは千尋ともうひとりは初音と組もうかな。九条さんにノアをトレードする」 

 姫川さんが思案を口にだす。


「黒咲ノアちゃんですか。彼女の格闘センスも良い線いってますわね」

 九条さんがあごに手をあてる。


「待て! それでいいのか?」

 護国寺先生が水をさした。


「どういうこと? うっしー」


「おまえたちは思い出づくりをしたいのか? 優勝したいのか?」


 彼の言葉は暗にいまのメンバーでは優勝には繋がらないことを示していた。緊張が走る。


「野球を知っているな。上位打線に打率の高いメンバーを組むのはなんのためだと思う? 戦力を集中させるためだ。合宿中、もっとも勝率が高かった姫川、九条、鳴海さんの三人でチームを組むべきだ」


 姫川さんはくちびるをとがらせた。図星だった。その会話が聴こえていた村雨さんは床に視線を落とした。彼女が『弱い』と言っているようなものだ。


「村雨さん、おれを恨んでくれていい。すまない」


「わたくしは夫の言うことを信じます」

 村雨さんは潤った瞳で彼を見かえした。


「いや、それはちょっと困るんだが……」


「チームAとして姫川、九条、鳴海さんの三人。チームBとして二ノ宮さん、黒咲さん、村雨さんの三人でチームを組んでもらう。

 姫川、九条はもっとも勝率が高い。鳴海さんのポテンシャルは計り知れない。この三人で世界大会優勝を目指す。

 二ノ宮さんの柔軟性のある戦術眼は天賦のものだ。黒咲さんも一年生ながら爆発力がある。村雨さんは経験を積んでくれ」


「お姉さまと離れ離れになるのですね」


「すまない。チームBには三年生がいない。おれは部活の顧問として失格かもしれない。結果をだすことを重視した」


「あたしも護国寺先生に言われてはっとした。仲良しチームで出場して思い出づくりするために参加するわけじゃない」

 姫川さんが真剣な面持ちで語った。


「お姉さま、九条さんのライバル同士が手を組む展開は激アツです。わたくしは感動しています」

 村雨さんは小説家として創作意欲を刺激されたよう。


「チームAのキャプテンは姫川。チームBのキャプテンは二ノ宮さんにやってもらう。姫川の好きな花は?」

 護国寺先生が眼鏡に触れた。


「ハス。というかレンコン。あたしの大好物」


「二ノ宮さんの好きな花は?」


「ペチュニア」


「ではこれよりチームAをレンコン。チームBをペチュニアと名づける。大会当日はおれも同行する。可能な限りサポートするつもりだ。

 それからもうひとつ。気がはやい話になるが、世界大会では上位者に賞金がでる。おまえたちが賞金を獲得した場合、学校で預からせてもらう」


「えー? なんでさ! モチベーション下がりまくりだよ」


「学園としておまえたちがゲーム大会に参加することを容認するための落としどころだと思ってくれ。鳳女学院と協議して使い道を決める。eスポーツ部の部費などにあてられる予定だ。悪いようにはしない」


 護国寺先生の低トーンの声はわたしたちを安心させてくれる。彼がいるなら世界大会優勝も不可能ではない、そんな気がする。世界大会GEROは間近に迫っていた。

挿絵(By みてみん)

鳴海千尋のイラスト



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イラストレーターはイナ葉さま(Xアカウント@inaba_0717)

無断転載・AI学習禁止です。


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