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聖少女暴君  作者: うお座の運命に忠実な男
余命一年のヒロイン編 第八章 嵐を呼ぶ文化祭
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8-2 九条さんのラブレター。中身は果たし状⁉

【果たし状】

 貴公ますます御隆昌にてお慶び申し上げます。毎度格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。


 九条沙織は姫川天音さまとなれ合いの関係でいたくありません。世界大会の前に、そして学生であるうちに白黒はっきりさせたく存じます。


 あたくしと格闘ゲームで決闘してください♡ 乱筆乱文ご容赦。



 姫川さんは手紙を読みあげた。九条さんの果たし状は可愛らしい字体が使われ、ネコちゃんのイラストシールでデコレーションされていた。


「カラオケではなれ合いをしましたが、今後いっさいなれ合いはしません。あたくしは貴方とはライバルでいたいのです」


「いいよ、九条さん。あたしも貴方と決着をつけなかったらしこりが残る。闘ろう」

挿絵(By みてみん)


 姫川さんは静かな闘志を燃やした。読者の皆さん、バックに燃える炎とシベリアトラを想像してください! え? シベリアトラを見たことがない? 図鑑を見て!


 九条さんは指ぬきグローブをはめ直した。彼女のバックには蒼い炎とドラゴンを想像してください! 中二病の黒咲ノアちゃんが封印しているやつです!

挿絵(By みてみん)


 文化祭で決闘が行われることになってしまった。窓の外の天候はますます悪化し強風と豪雨が招かれざる客人のように窓を叩いた。


 九条さんは自称姫川さんの永遠のライバル。


 良き友人でもあったが、姫川さんはGEBOで準優勝。九条さんはGEBOのリーグ戦でわたしこと鳴海千尋に敗北して決勝トーナメントにあがれなかった。


 対戦成績は芳しくない。だが、彼女は鳳女学院茶道部のリーダー。その実力は計り知れない部分がある。


 雨脚が激しくなり、烈風とともに窓を叩く。雷神が赫怒したのではないかという飛電がはしり舞台効果は極上である。


 ふたりが席についた。32インチモニタに対戦画面が映しだされる。いつの間にか観客が集まっていた。


 対戦するゲームはもちろん『メディウム・オブ・ダークネス』である。


 姫川さんは創竜刀アストリアを選択。九条さんは新キャラのラウニィを選択。


 ラウニィは神聖エルファリア王国四天王(フォーキングスナイツ)のひとり。

 

 深紅の鎧に身を包み魔剣アイス・ピアースを操る魔法剣士である。ポニーテールにした黄金獅子のたてがみを連想させる金髪がまぶしい美貌の持ち主。


「九条さんは弱キャラの研究が好きだったよね。ラウニィは強キャラだと思うけど」


「ええ。まあ。弱キャラで貴方に勝てる気がしないものですから」


 アストリアとラウニィは原作では因縁がありながら対戦が実現しなかった組み合わせだ。舞台をゲームに移し雌雄を決するときが来た。


「よろしいか。姫川さん。勝つのはあたくしです」

 九条さんは愚直なまでに己の心情に正直だ。


「その手には乗らないよ。九条さんは心理戦が上手いんだから。天・地・人揃っているのはあたしのほうだと思わない?」

 不敵に微笑む姫川さん。


 第一ラウンド。開始と同時に猛然とダッシュしたラウニィは、アストリアの直前でストップ。カウンターを打とうとしたアストリアは空振りする。そこに低空ジャンプからの強キックが炸裂! 吹っ飛んだアストリアを追いかけ突進技の『ノーブル・ブラッド』!


 たまらずアストリアはABCボタン同時押しのバーストで全身無敵になる。


 攻守が入れ替わった。アストリアは創竜刀を抜刀! オーラブレードを発動する。


 強パンチによる一閃をバックステップで躱したラウニィは魔剣アイス・ピアースで斬りかかる。それを直前でガードしたアストリアのPディフェンスが発動!


 アストリアの必殺技『オーラショット』でラウニィのライフを削る。


 さらに追い打ちとして『オーラショット』を連発! ラウニィは相殺することができずにガードした。必殺技はガードしてもライフを四分の一削られるのだ。


 二発ガードしたラウニィは三発目を飛び越えるためにジャンプ!


 直前で動きを切り替えたアストリアはコマンド入力を『創竜刀・逆Vの字斬り』に切り替える。ラウニィは苦痛の悲鳴SEをあげて吹っ飛ぶ。ダウンした彼女に起き攻めを仕掛ける姫川さん。


 相手の裏に回り立ち小パンチの空振りから鋭いしゃがみキックの連打! これが連続ヒット! 気絶値が限界になり、ラウニィは気絶した。チャンスだ。


 アストリアはとどめの一撃を喰らわせるためにジャンプした。


 そのとき九条さんはコントローラーのボタンを超連打! ボタンを連打すると気絶から回復する間が短くなるのだ。火がでるのではないかと錯覚するほどである。


 窓の外で稲光が走り、振動が窓を叩いた。雷が怖いわたしと恋ちゃんは抱き合って対戦を見守った。


「うおおおおお!」

 閃雷とともに九条さんが吠えた。彼女の横顔が鋭角的なシルエットだけになる。


 間一髪で気絶から回復したラウニィは上昇無敵必殺技『ヴァルキリースピア』を発動! カウンターヒットしたアストリアは無防備なまま吹っ飛ぶ。


 ラウニィはダッシュして追い打ちをかけた。『ノーブル・ブラッド』からEXキャンセルして超必殺技が発動! 魔剣アイス・ピアースが魔力を開放する! 『絶対零度フリージング・ワールド』がヒット!


 極低温のブリザードが直撃してアストリアをKO! 第一ラウンドを勝利したのは九条沙織さん。


「姫川さん、これがあたくしの本気です。貴方に対する全力の愛。受け取ってくださいまし」


 姫川さんを圧倒した九条さんに雷神が宿ってはいないか疑ってしまった。


「姫川さん! 鼻血が……!」


 わたしこと鳴海千尋が声をあげた。

 姫川さんのかたちの整った鼻孔から赤い筋が垂れている。


つづく



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イラストレーターはイナ葉さま(Xアカウント@inaba_0717)

無断転載・AI学習禁止です。


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